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48歳からの大人バレエ ~うちのママに天才バレリーナが憑依しちゃいました~  作者: 明けの明星


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再会

母と娘、そしてもう一人

「ママ、だよね?」

と舞香が恐る恐る言う。

そんな舞香に答えるよりも早く、真理は舞香を抱きしめていた。


真理と舞香、久しぶりの再会だ。


「じゃ、ママ、ちょっと色々と話が」

と舞香。

そこから、お茶とお菓子を用意すると食卓に向かい合って座った。

いつも、舞香は母とここでおしゃべりをしていたのだ。


「まずはね」

舞香が言う。


そして、舞香は進路の話を始めた。

内部進学はせず、アニメの専門学校に行きたいと言ったこと。

それを後悔していると。


「アニメは好きよ、これは本当。だから専門学校に行くのも選択肢としては真面目に考えた。でも、やっぱりそれよりもママの事を試していたのかもしれない」

と舞香。


「そうね、舞香はママにこのまま大学へ行くのが一番よ、って言ってもらいたかったのよね」

と真理が言う。

舞香は何かの決断をするとき、母の一言を欲する。

進路もそうだ。


バレエを辞めるとき、それだけは自分だけで決めた。

それは、自分がもう自立できているのだと実感する出来事でもあったのだが、

あれは例外だろう。


「じゃあ、内部進学、でいいの?」

と真理。

その言葉に舞香は大きく頷いた。


「なによ、舞香。自分の意思ってものがないわけ?」

とエリゼは苛立ちながら思っていた。

エリゼからしたら、自分の将来は自分で決める。それが当然だからだ。


「じゃあ、担任の先生にご連絡しないとね」

と真理。


「じゃあ、進路も決まったしあとは青春を謳歌するだけだわ」

と舞香が晴れ晴れとした顔で言った。


「舞香ちゃんの成績なら、たいていの学部なら選べそうって先生も言っていたわ」

と真理が言う。

すでに担任とは内部進学について諸々確認済みなのだ。


「じゃあ、パパにも連絡しておいてね」

と舞香が言った。


この前、久しぶりに家族が揃った時、まるで爆弾発言のように言った自分の進路。

それで、普段かなりの温厚な父が声を荒げたのだ。

それを今だに気にしている。


「そうね、これで安心してくれるわね」

と真理。


それで、進路に関するモヤモヤが払拭された舞香。

最近のこと、真理が不在だっと時のことをあれこれ話始めた。


真理と舞香、話が弾み止まらない。

とめどないお喋りを、エリゼが複雑な気持ちで聞いていた。


自分が、自分の決めた道を進むといい、そのアドバイスは無駄だったのだろうか。

真理の本能の力を借りながらも、舞香の事を懸命に考えた。

それはすべて無意味だったのだろうか。


目の前の母娘の会話。

とても自分の入り込む隙間はない。

真理の身体にやってきてから、エリゼは初めての孤独を感じていた。


「でもね、エリゼのお陰で」

という真理の声で我に返るエリゼ。


「エリゼがね毎日きちんとストレッチをしてくれているお陰よね、身体が軽いのよ。それに腰痛も治ってるし」

と真理。


エリゼは朝と晩、必ずストレッチをやっていた。

身体をほぐし、筋肉を緩め、関節を柔らかくするために。

まだまだ、バレリーナの柔軟性とはかけ離れた真理の身体だが、少しずつ成果が出てきているのだ。


「そうよね、エリゼの筋トレ、私もマネしてるもの」

と舞香も言う。


「それにさ、エリゼじゃなければママがあんなにバレエでアピールできるわけないじゃん」

と舞香。


「ママってさ、バレエ大好きなくせに自分が踊っているときはいつもモジモジしてるんだもん」

と舞香は続ける。


発表会でも、普段の稽古でも。

いつも人の後ろに隠れるようなところがある真理。

それでは、講師からすると「大きな役」など任せられない。

と舞香。


「だからね、エリゼの稽古に対する取り組み方っていうのかな、すごくさりげないアピールで、やるじゃんって思ってたのよ」

舞香にそう言われて、


「だってさ、ずっと競争の中で生きてきたんだもの」

とエリゼ。


確かに、バレエ学校時代から、常にライバルとの争いだった。

天才と言われたエリゼですら、自分をアピールする術を知らぬ間に身に着けていたようだ。


「そうよ、私が出来なかったことをやってくれてるのよ、エリゼあなたが」

と真理も言う。


「それでね、二人に報告があるの」

と舞香が改まって話し始めた。


「今度のあすか先生のところの発表会、白鳥の湖の全幕なんだって。

それに私たちも助っ人で参加するの。私は、1幕のパドドゥ、もう一人はママよ」

と舞香が嬉々として話した。


「ママ、私と大河さんとトロワを踊ってくれる?」

と舞香が言う。


エリゼと真理はこの配役を既に知ってはいたが、あえてそれは言わずにいた。

それよりも、どこか不安げにしている舞香の事が気になる。


実は内心舞香は心配でもあった。

パドトロワ、一人で踊るバリエーションもあるが、主役の踊りではない。

これを踊ることが母の夢を叶えることになるだろうか、そうでないとエリゼの「誰かの夢を叶える」これを達成させることにはならないのではないか、と。


「今まで、行ったことはないけど、舞香ちゃんと一緒に舞台の真ん中で踊るの、夢だったのよ。

こんなチャンスをもらえるなんて、本当にうれしくてたまれない」

と真理。


「私も全力で取り組むわ。真理さんも覚悟しておいてよね」

とエリゼ。


「よかった、ママにとってもエリゼにとっても最善のシナリオね。

忘れられない発表会にしようね」

と舞香がすっかり明るい表情で言った。


その夜、真理とエリゼと舞香は遅くまで語り合っていた。


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