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48歳からの大人バレエ ~うちのママに天才バレリーナが憑依しちゃいました~  作者: 明けの明星


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真理の誕生日

いよいよ真理の誕生日

ついにその日がやって来た。

真理の誕生日。

「天国の門」との審査官の言うことが正しければ、この誕生日に「真理」が戻ってくるのだ。


昨夜、眠りにつく前にエリゼは色々と考えていた。

戻って来た真理と、上手く同居なんてできるのだろうか。


そして、ついに朝が来た。

いつも通りに起きた、娘の舞香が自分の部屋を出るが、居間にも台所にも母、真理の気配がない。

そっと母の部屋をのぞくと、まだベッドの中にいる。

まるで起きる気配がない。


「ママは、まだ戻ってきていないのね」

と舞香

母なら、自分より早く起きて朝の支度をしている。

寝坊などするはずがない。

まあ、エリゼが憑依してからも、寝過ごすことはなかったのだが。


「久しぶりにママに逢える」

そう思うと、昨夜はなかなか寝付けなかった。


見た目は、母そのもの。

声も、素振りも母ではある。


会話も弾んだし、一緒に出掛けることも楽しい。

それでも、本物の母ではない。


もう、母がいなくてもなんてことない、そんな年齢になっている、そう思ってはいたものの、

これほどに母が恋しいとは。


この真理の誕生日を心待ちにしていた舞香。

それだけに、落胆もする。


それでも、真理(エリゼ)を起こすことはせず、そっと扉を閉めて台所へと向かった。

自分でパンを焼き、インスタントスープに湯を注ぐ。

それから、冷蔵庫に常備されているヨーグルトとフルーツを取り出して一人食卓で食べた。


「起きないな」

思わず独り言が口から出る舞香。

台所で、バタバタと朝食の支度をしている音が聞こえているなら、母は飛び起きてくるはず。

それなのに、母は部屋から出てくる気配さえない。


食事を終えて、もう一度真理の部屋の前に立つ舞香。

そして、ドア越しに、


「ねえ、ママ。お誕生日、おめでとう。疲れているならそのまま寝ていてね、私はもう学校へ行くから」

と声をかけた。

しかし、返事はなかった。


真理(エリゼ)の身に何か起きたのでは、とさすがに心配で部屋を覗き込む舞香。

相変わらず真理(エリゼ)はまだベッドで寝ている。

そして、もそもそと寝返りを打っている。

いたって普通に「寝ているだけ」のようだ。


そして、ベッドのなかから

「行ってらっしゃい」

と寝ぼけた声を上げる真理(エリゼ)。

その声を聞いて安心した舞香。


もう母が戻っているの、まだなのか、確かめたい気はしたが母の身に何か悪いことが起きたわけではない、そう確信した舞香は、

「ま、ママは逃げないものね」

そう言うと、準備を済ませて家を出た。


その頃「天国の門」いつもエリゼが面談を受ける、天井も壁もない空間


「それでは、今日から挑戦者と契約者は同じ身体を共有することになります」

とエリゼの担当審査官のリーズルが言う。


リーズルの前には真理とエリゼがいる。

エリゼは、事故に遭った当時の21歳のエリゼ、そのままだ。


「二人で共存となると今までとは勝手も違ってきます。二人でよく話し合って取り決めをしておいた方がいいわね」

とリーズル。

その意見に同意したエリゼと真理、二人でしばらく話し合うことに。


「じゃあ、主導権は順番にする?」

とエリゼが提案するが、


「せっかくだから、二人で仲良く暮らしましょうよ。私21歳に戻ったみたいな気分になれそうだし。

あなただって、この先の人生の予行演習が出来ると思って」

と真理が言う。


「あら、それはいい考えね。

どちらかが占領しているのではなく、二人での共存って、あなたたちなら上手くいくわよ」

とリーズルが大きく頷きながら言った。


「でも、それじゃあ身体が持たないんでしょ?」

とエリゼ。

真理の身体をエリゼと真理で共有する。

それはもう若くはない真理の身体にかなりの負担になるのだ。


「じゃ何とかしてよ。賛成してるんだったら」

とエリゼがリーズルに言う。

リーズルはというと、しばらく考えるがすぐに何かを思いついたようだ。


「それは任せて。心配ないわ」

と自信をもって言う。

何か秘策があるようだ。


それから、エリゼと真理、そしてリーズルも一緒に、あれこれと話をした。

それはまるで女子会。

話に夢中でお邸の時間を大幅にオーバーしていることに気付きもしていなかった。


「お喋りのせいで寝坊しかったじゃない」

とベッドから起き上がった真理が言う。

大きく伸びをしながら、真理は周囲を見回した。


「よく寝た、って感じよね」

とつぶやく。

それは、紛れもなく本物の真理だった。


「で、エリ。私の代りもがんばってくれていたのね」

と心でつぶやく真理。

それだけで、エリゼには通じてしまうのだ。


家の中を一通り見て回ると、一応は掃除が行き届き整理整頓もされている。

それを見て一安心する真理。


「なかなかやるでしょ」

とエリゼ。


「今日はバレエのレッスンの日よね、だいだいの事は把握しているけれど実感するのが楽しみだわ」

と真理。


エリゼが真理の身体を占領していた時の事は、真理本人にも共有されている。

それでも実際にその場に居るとは少し違う。

真理は自分のいなかった時間を改めて確認したのだ。


「舞香には会えなかったわ」

と真理。

朝、なんとか声をかけたものの、まともに話はしていない。

懐かしさと愛おしさがこみ上げる真理。


「え、なんで?いつも会ってたじゃない」

とエリゼ。

真理の本心はいつもエリゼと一緒だったから、エリゼにとっては「離れていた」感覚はない。


「今日は仕事が休みでよかったわね。私たちでいることに少しでも慣れてから出勤した方がいいわ」

とエリゼが言う。


「そうよね、あなた大河くんにぞっこんだし」

と真理。


そして、その日の夕方。

いずみ先生の大人のバレエクラス。


舞香の帰宅より早く家を出るのは心残りではあったが、その日の稽古は休まない方がいい、そんな気がしていた。

スタジオに着くと、そこには一枚の紙が貼られていた。


「あすかバレエスタジオ、発表会」

と大きな文字で書かれている。


その下に、演目と配役が並んでいる。


そこに、

パドトロワ、舞香、真理、大西大河

と書かれているのが真理(エリゼ)の目に飛び込んできた。

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