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【幕間】青年と竜
キュイイィィと、幼い竜の鳴き声が響いた。
青年は気怠げに寝そべっていた長椅子から半身を起こして窓の外に視線をやった。幼竜が彼の部屋のバルコニーに降り立ったところだった。
「……おまえ、どこへ行っていた?」
青年はゆったりとした足取りでバルコニーへ出ると片手を竜の顎に当てて撫でた。青年は薄手のローブを羽織って腰元で緩く帯を巻いただけの姿で、前が肌蹴ていたが無頓着に着崩している。時折強く吹く風に長い髪が舞って鬱陶しそうに目を細めるが、風が遊ぶに任せていた。
「界を越えたのか……」
青年は静かに目を閉じて呟いた。
幼竜は異界で遊んで来たらしい。幼竜は気持ちよさそうにキュルルと鳴いた。
幼竜からは仄かに甘い香りがした。
「……微かにだけれど……黒い魔力を感じる」
自分の同胞の香り。青年の胸に苦い感傷が広がる。遠い昔に失くした大切な者。……失くしたと、思っていた。けれど。
「………細い糸は、繋がっていた?」
以前にも一度だけ、波動を感じた。黒い魔力の波動。その時はあまりにも微かなその反応に、幸福は感じても儚い幻だと思った。
この手に取り戻すことは出来ないのだと。
青年は暫し思案するように虚空を見つめると、踵を返した。




