22、オーレリアの胸騒ぎ
オーレリアとて、王の命令は絶対だと心得ている。けれど今ウィルフレッドが自分の側から離れてしまうことに対して言い知れない心細さを感じていた。
アーネストに次いで一番自分の近くに居てくれた人だ。家族よりも家族のように想う、大切な人。オーレリアの心の一番の支えでもある。
(変だな……兄さまは二週間に一度の訪問となって、いないことにも慣れているはずなのに)
ただ、王に召喚されて突然帰ることは初めてだ。
その理由も分からないので不安に感じるのは別におかしなことではない。
オーレリアはジェロームに大至急ウィルフレッドが召喚された理由を調べるよう命じた。
少しでも不安を解消して漠然とした心細さと淋しさを和らげたかった。
半日後、ジェロームが掴んできたのは南東砦に竜が現れたとの報せだった。その対策会議にウィルフレッドも呼ばれたと言う。
さすがはウィルフレッドだ、と誇らしく思っているとジェロームがなんでもないことのようにさらっと続けた。
「アーネストさまが応戦中とのことにございます」
「なんだと!?」
「たまたま竜の出現した砦に居合わせたようですね」
ジェロームの報告にオーレリアは蒼白になった。
「アーネストは無事なのだろうな?」
「詳しい情報は何も……。ですが殿下。アーネストさまなら大丈夫です」
オーレリアとてアーネストが強いことは理解している。普段であれば彼がかすり傷でさえ負うなどとは想像すら出来ない。けれど離れているせいか今は大丈夫だなどと無条件に信じることは出来なかった。せめてその姿を一目なりとも見ることが出来ればもう少し違ったかもしれない。
「何か胸騒ぎがするのだ。妾は心配でたまらぬ」
ジェロームは小さな主がぎゅっと目を瞑って胸元を押さえるのを見て、不謹慎にも可愛らしいと思ってしまった。
(アーネストさまにお伝えしたら、泣いて喜ばれるであろうな……)
いや、こんな可愛らしいオーレリアをジェロームだけが見たと知ったら嫉妬で殺される方が先だろうか。
「ジェローム、妾は砦へ向かう」
「殿下!?お待ちください」
のほほんと妄想していたジェロームは瞬時に我に返った。オーレリアを砦へなど断じて行かせられない。
「行く」
ジェロームは頭を抱えた。オーレリアの瞳は絶対に屈さないと強く燃えていた。
今ここで彼女を止められる者はいない。ウィルフレッドに使いを出しても彼が到着する前に王女は飛び出してしまうだろう。
こうなれば王女に同行し、わざとゆっくり進ませウィルフレッドもしくは王に追いついて貰うより他ない。




