19、ウィルフレッドと王
その日、ウィルフレッドは王宮にて国王の私室にお茶に誘われていた。これは離宮でのオーレリアの様子を知りたい国王が定期的にウィルフレッドを招く定例の報告会だ。
「リアが孤児院を?」
常ならばウィルフレッドが離宮でのオーレリアの行動や健康状態について報告するのだが、今回情報を齎したのは国王だった。
「そうだ。……いつの間にか、あの子は世界を広げていたらしい」
くつりと楽しそうに笑って、国王はウィルフレッドを見つめた。どこか観察するような、試すような眼差しだった。
「……さて。これでもうあの子は孤独ではない。あの子なりに王族として考えて、慈善活動を始めるに至った。……あの子の成長が嬉しくはあるが、少々寂しくもあるな。まぁそれはともかく……。其方はどうする?」
言外にもう自分は用済みだと告げられたことを悟ったウィルフレッドは息を飲んで面白そうに自分を見つめる国王を凝視した。
(意地の悪い方だ……)
エリスのように離宮に拠点を移してずっとオーレリアの側に居たいと言えば、それは叶えられるだろう。だがそうしてしまったらウィルフレッドの未来はない。自分は天才のエリスとは違う。もっと学ばなければならないし、能力があることを証明しなければならない。出来なければ国王はウィルフレッドをオーレリアの配偶者とは認めないだろう。
そのためには週の半分を離宮で過ごす今の生活では限界があった。公爵家の継嗣として学ぶべきことも沢山あり、それは王都でなければ出来ないことでもあった。
(……このまま側に居たら良くてリアの愛人にしかなれない。そんなのは嫌だ)
離れがたくとも、将来を考えれば今は勉学に励み、自身の為すべきことをするのが正しいのだろう。
ただしその間にオーレリアの心が自分から離れていくリスクは避けられない。
ウィルフレッドは拳をきつく握りしめた。
何も持たないただの子供でしかない自分が腹立たしい。
***
オーレリアが壊滅させた人身売買組織の捕物は売買を主導していた組織の頭目の捕縛と、大半の客の捕縛、組織の崩壊で幕を閉じた。
組織の人間は貴族崩れ――家が継ぐべき瞳の色を持たず、魔力も少ない元貴族たちが殆どだった。
また、その日の競売に参加した客は全て捕縛したが、不参加の顧客については取り逃がしてしまった。顧客リストは火事で消失しており、頭目以外の組織員は詳しい顧客情報を把握していなかった。
守備隊のバーナードは早々に手柄を王国騎士団に投げ渡した。王都守備隊だけでは手に負えない。
顧客の中に高位貴族はいなかったが、大商人や他国の人間がいたからだ。そして、頭目から聞き出した情報によると、他国の人間の主人は高位貴族である、と発覚した。




