18、トールとリオン6
双子が落ち着くのを待って、当たり障りのない話をしてから彼らを帰らせた後、マージの処遇について守備隊長のバーナードを交えて話し合った。
「双子が母親に会いたいと思うまでは……会わせぬほうがよいのであろうな」
オーレリアが哀しそうにしょんぼりと肩を落とすと、バーナードはがしがしと後頭部を掻いた。
「あー…、あいつらのことは俺の家族が面倒見てますので、その、大丈夫ですよ」
保護した子供たちは彼らを残して全員無事に養子先が決まったという。バーナードの伝手で、人のいい商家や、守備隊を引退した老夫婦などに引き取られたという。里親についてはエリスやアーネストも一度面談し、問題ないと判断した者たちだ。
ただ、双子についてはやはり二人同時に引き取るということはハードルが高く、なかなか引き取り手が見つからないのが現状だった。かといって詰所の仮眠室にいつまでも置いておくわけにはいかず、暫くの間ならば、ということでバーナードが一時預かっているに過ぎないが、バーナードの家は妻と息子3人の賑やかな家族で、息子たちは双子と同じ年頃ということもあり、仲良くやっているようだ。
問題はマージの処遇についてだった。
「元の場所に戻すわけにはいかぬ」
どうしたらいいかは分からないがそれだけははっきりしていた。
きっぱりと言うオーレリアにバーナードは困ったように溜息を吐いた。
「……ですが、守備隊の詰所に置いとくわけには……」
流石にそれは出来ない。バーナードはどうしたものかと思案しながらそっとオーレリアを窺った。
オーレンと名乗ったその少年はアーネストの態度からどうやらこの場で一番身分が高いらしい、ということは窺えたが、詳しい身元はさっぱりわからない。
「暫くの間、修道院に身を寄せて貰うのが賢明でしょうね」
オーレンの向かい側に座っていた少年が口を挟んだ。オーレンと同じ年頃に見える普通の少年だが、青い瞳だけが場違いなくらい理知的だった。
「……あの女性に耐えられるんですかね……」
ちらりと見た限り、信心も清貧さも持ち合わせていないように見えたが。バーナードの頭痛を堪えるような表情に、青眼の少年はにこりと微笑んだ。
「そのくらい耐えて貰わなければ困ります」
「………………」
「マージなら大丈夫だ」
オーレンは何の根拠もないのに力強く頷いた。バーナードは益々酸っぱい顔をしたが、それ以上は何も言わなかった。オーレンの素性について気にならないと言えば嘘になるが、余計なことは知らない方が身のためだと知っている。
バーナードが信頼のおけるという修道院に暫くマージを預かってもらうことで話は纏まった。
修道院に入ることについて、マージは神妙に受け入れた。
オーレリアは満足そうに頷いて特に疑問にも思わなかったようだが、エリスはオーレリアが部屋を出た後、その場に残り目を眇めてマージを凝視した。
「……やけに従順だね。おまえに本当に修道院暮らしが我慢できるのかな」
「……っ」
一瞬ぴくりと肩を震わせたが、マージはぎゅっと拳を握りしめるとエリスを真っ直ぐ睨み付けた。
「……あたしは、生まれ変わるんだ。……今までとは違う」
「……その決意が、いつまでもつかな」
エリスはせせら笑うように口角を上げてマージを睥睨すると、笑みを消した。
「オーレンを失望させるなよ」
「………!」
オーレンの名に、マージの身体がすっと伸びた。その瞳に強い決意が浮かぶのを見届けて、エリスは部屋を後にした。




