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自由な蛇神  作者: ホニャ二ティ
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27話_魔力研究所(魔研)前編

収穫を終えたサナは、(本殿)に帰宅した。


「おかぁさまぁー!」

「おっとと、今は抱きつかないでね。」

「...おかぁさまから美味しそうな匂いがするー」


いつもの様にサナに抱きつこうと、陸上の短距離選手も、真っ青な速度で突っ込んでくるキクレを、魔力クッションでやんわりキャッチする。


「それはきっと、お母様達が採ってきたコレの匂いね。後で料理して食べさせてあげるからね。」

「私も料理するー!」


両腕で抱えた野菜のうち、ジャイアントマトを魔力のマジックハンドで指差す。


厨房へと移動したサナとキクレは、腕に抱えていた巨大食物達を順次捌いて行く。

材料はジャイアントマトを始め、熟すと爆弾の様に炸裂し、周囲に汁を撒き散らかすという《バクタマネギ》。

それから、焼いていないのに香ばしい臭気を放つ《サソイイモ》

最後に、熟れると鉄鉱石も顔負けの強度を誇る《ガンキョウマメ》を、緑色の鞘に収まっている内に採ると、中身がマシュマロの様な柔さになり、その実には猛毒を秘めた《プニマメ》

これらをキクレと共に厨房に持ち運び、ミネストローネ作りを始めた。



「ふぅ、なんとかなったな...」

「おいしそぉー!」


サナとキクレの前には、寸胴鍋の中でグツグツと煮え立つミネストローネ(?)があった。

材料は前述した通りであるが、それに追加で、今日狩られた、ドッグボアードの肉も拳大で入っていた。


「ズズッ......うん、悪くない...筈だ」

「ああー! おかぁさまだけずるいー! キクレも食べるー!」

「はいはい、火傷しないようにフーフーしてから食べるんだよ」

「うん! おかぁさまがやっていた様にするんでしょー」


サナは、小皿に汁をよそいキクレへと渡す。

ニコニコとした表情で小皿を受け取ったキクレは、サナが先ほどやっていたように息を吹きかけてから、グイッと一気に飲み干した。


「おいしー!」

「ありがとう。ママ様を呼んで来て頂戴。3人でご飯にしましょう」

「うん! ママさま呼んでくるー」


サナにミコを呼んでくるよう言われたキクレは、シュルシュルと駆け足(足と言って差し支えない筈...)でミコの居る所へと向かって行った。

キクレが出て行くと、間を空けて1人の女子が入ってくる。


「失礼します。...お食事の前に少しよろしいでしょうか」

「ん...あぁ。いいぞ、報告が終わり次第、コレを街の食堂まで持って行ってくれるのならな」

「はっ! ありがとうございます。それでは手短に、蛇神様が仰っていた通りの物を選別、作製しました所、確かに回転しました」


入ってきた女子は、オーバルブリリアント(の様な)カットが施された、ピンボール大のエメラルドがはめ込まれたネックレスを揺らして、サナの側まで来る。


「おぉ、それは重畳。後は魔力が発生するかだが...発生せずとも使い道はあるか。ほれ、【蛇神流ミネストローネ〜感謝を込めて〜】の作りかたを記した石版だ。そうそう、研究所に戻ったら、私が後で向かう旨所長に伝えておくように」

「承知いたしました。それでは後ほど、よろしくお願いいたします」


石版を受け取ると、女子は優雅に素早く扉の前まで移動する。そして、深く頭を下げると引き戸を丁寧に空け、再度軽く頭を下げて出て行った。


「...」


未だに服の生産には至っていないが、それでも大事な箇所は、狩で手に入れた毛皮や、植物の繊維を摘出し無理矢理結合させた布擬きで隠させている。

筈だったのだが、何故かサナに会う時は、全裸に身分証であるネックレスだけ、というのが礼節となりつつある。

そして、そ《・》れ《・》は今回もであった。昨日までは、来るたび注意していたのだが、遂に「(もういいかなぁ)...」と諦めムードのサナであった。

ー閑話休題ー


サナは一連の流れが無かったかのように、食事の準備を進める。

食器棚から、綺麗な絵が描かれた土鍋を二つと大皿を一枚取り出す。土鍋はサナとキクレ用の皿代わりに、そして大皿はミコ用に用意した。


器にミネストローネを入れ、ワゴンに載せていく。寸胴鍋と器にそれぞれ蓋をし、入口とは別の戸を開く。

ここは本来であれば、本殿勤務の子達ように造られた、使用人食堂だったのだが、料理を作った後、熱々のうちに食べれるように、昨日からここを使う者達と、被らない時間に家族3人揃って食事をしていた。


「おかぁさま、ママさまを連れてきたよー!」

「キクレさま、あんまり強く引っ張らないで下さい...」


机の上に器を並べ終わると、勢いよく戸を開けて、キクレがミコを引っ張って来ていた。

引っ張られていたミコは、娘に引っ張られる事が嬉しいのか、ニマニマしながら入って来た。


「こらこらキクレ、あんまりママさまを困らせてはいけませんよ」

「はーい!」

「...本日の食事に、私も参加しなければならないでしょうか?」


ミコは、机の上にある真っ赤な液体を見て、それまでデレっとしていた顔を、徐々に青ざめさせながらサナに問いかける。

そんなミコの思考を覗き見て、サナは悪戯をしようとしてる子供の様な笑顔を向ける。


「あぁ、勿論だ。今日のは特に素晴らしいぞ!

生きの良かった肉と、野菜をふんだんに使ったミネストローネだ。キクレも調理を手伝ってくれたんだぞ」

「うん! 私も料理手伝ったよー」


あえて調理法は告げず、ミコの反応を伺うサナ。拳大にカットされ、真っ赤な液体に浸かった肉を前に、その顔色は悪くなるばかりだ。

そして、子供の残酷なまでにピュアな笑顔がミコを襲う。


「ママさまには、私が食べさせてあげるね!」

「ぐっ...はい」

「これこれミコよ、愛娘がせっかく食べさせてくれると言うのだ。もっと笑顔で喜ばんか」


思わず「クックック」と笑い声が漏れてしまうサナだったが、ミコはそれに気づかず、キクレに連行されて隣の席に座らせられていた。


「さて、キクレ。ご飯を食べる前には?」

「育ってくれた野菜とお肉さん、いただきます!」

「はい。いただきます」

「...イタダキマス」


食材に、己の血肉に変わってくれる事への、感謝をする文化を定着させる為、この国に住む者には食事をする前には「いただきます」と言うように、意味も含めてしっかりと伝えていた。


キクレは自分の土鍋から、野菜と肉のカケラが混じったスープをスプーンで掬い、「フーフー」と息を吹き掛けてたら、溢れないようにそっとミコに差し出した。


(くっ! キクレの唾液が付着したミネストローネだと! 俺もやって貰わねば!)

「はむ....! お、美味しい! 美味しいですよキクレ様!」

「えへへ〜」


褒められたキクレはフニャと笑い、もう1掬いミコに差し出していた。

それを見ていたサナの目は、ミコに向けられており「こっちに愛娘のあーんを寄越せ」と訴えていた。


「キ、キクレ様? お母様にも分けてあげては如何ですか?」

「おかぁさまは、私と同じぐらいたくさんあるから大丈夫だよ! ね、おかぁさま」

「え、あ...うん...」


ミコの援護虚しく、サナよりご飯の量が少ないからと言う理由で、ミコに自分のご飯を分けていたのだ。しかし、ミコに注いでいるご飯の量が少ないのには訳がある。


「キクレ、そのへんにしておきなさい。ミコが自分のお皿に載ったご飯を食べられなくなる」

「...はい、おかぁさま」

「すみません、蛇神様」

「良い...キクレ、人によって1度に食べられる量が違うのだよ。私たちはここに住む者よりも、沢山のご飯を食べないと元気が出ないんだ。逆に、私たちと同じ量のご飯をミコたちに食べさせようとすれば、食べきれずに吐いて元気じゃなくなってしまう。キクレはママ様に元気でいて欲しく無いのかい?」


サナがキクレに諭すと、キクレは勢いよく首を横に振り否定した。


「...ママさまにも、元気で居て欲しい」

「なら、もうママ様にご飯を分ける事はしない事。良いわね?」

「はい、おかぁさま」


ひと通り説教を終えると、サナはキクレに微笑み頭を優しく撫でて食事を再開する。そして、食事を終えるとキクレに向き直る。


「さてキクレ、さっきので分かったと思うけれども、今日から通う学校でも、周りの子達が自分と同じ考えを持っている、と思わないようにね」

「はい! 」

「うん、良いお返事ね。たくさんお友達を作ってお母様に知らせてね」


そう言い、最後にキクレの頭を撫でてから、身支度を整えさせるようミコに伝えた。


空いた食器をシンクへと運び、同じタイミングで入って来た調理担当に、食器の洗浄を頼んだサナは、魔力について研究している魔力研究所(通称:魔研)に急ぎ足で向かう。


魔研の敷地に近づくと、扇風機が回転しているような風切り音が格納庫から聞こえてきた。


魔研は本殿を出て、大通り左手の奥に設置されており、大通り右手にある住宅街からは出来る限り離してあった。

建物としては、研究棟2つに実験ができるよう格納庫が4つ。研究棟の地下にも、実験空間が用意されていた。


「やっているようだな! 様子を見に来たぞ!」


風切り音の響く格納庫に入ると、4枚羽のプロペラが高速で回転していた。


「...あぁ! おい! 止めろー!」


近くで記録を取っている研究員に、大声で話しかけたサナは、徐々に回転がゆっくりになっていくプロペラを眺める。


「摩擦...か」

「蛇神様! ようこそいらっしゃいました。この前指示された通りに作りましたら、これこの通り、()()()()回転運動を行う物が作成できました」


これは、魔力を電気の代わりに使用した魔動プロペラであった。

魔力をあまり通さない金属を、磁石の代わりとして用い、銅線の代わりに魔導線を巻いて魔力を流すと。


ちなみに、モーターは魔導線から漏れる魔力を、水車の様にして受ける事で、回転エネルギーへと変えているのだが、初期案ではモーター内部に魔力が流れ込むだけで、溜まった膨大な魔力が、逃げ場(電気で言うマイナス極)を用意し忘れたが為に、大爆破を起こしたのだ。


大変お待たせしており、誠に申し訳ありません。


さて、自領の強化は領主の務め。強大すぎる力は恐怖の対象。弱肉強食。サナは家族を守りきる事が出来るのか⁉︎

次回 復讐に正義は無い

(↑嘘です)

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