20話_マッチポンプ6
マッチポンプ編は、これにて終了でございます。
次回からは、施設開発しつつ...という感じになります。
今までただの木材だった物があら不思議、10数秒後には立派な長方形の荷馬車が出来上がっていた。
釘で打ち付ける事も、ノコギリで切断する事も無く、まるで粘土細工でも作るかのような気軽さで完成していた。
(つなぎ目がぐちゃぐちゃだなぁ。どれどれ...)
完成した荷馬車に乗ると、木材の軋む音が聞こえたが、特に問題は無さそうであった。
製作者が乗ったのを見て、周りで見学していた子供達も荷台へと乗り込んでくる。軋む音が面白いのか跳ねまわっているが、嫌な音がいっさいしないので、一先ず成功だと言えよう。
子供達と娘を荷台に乗せたまま、ラジコンゴーレムに引かせる為に作った取っ手を自分で押し、走行テストを行う事に。すると、思ったよりすんなりと動き出した。車輪の幅を大きめに作っていたのが、功をそうしたと言えよう。子供達は、荷台でキャッキャとはしゃぎ、周りの大人達は口をあんぐりと開けていた。__リリアンは、同い年の女の子が荷馬車を引くだけではもう驚かなくなっていた...目は死んでいるが___
「((しっかり動くようだな)...それではアルヴィドさん、荷台に荷物をおねがいできますか?...そう言えば、リリーちゃんに聞きたい事が有るのですが...)」
「(ん?私に聞きたい事?)」
アルヴィドも口をあんぐりと空けていたが、誰よりも早く元に戻り、荷台に積む食糧やその苗を、他の大人に取りに行かせていた。
荷台に積荷を載せる前に、一つ確認しておかなければならない事があった。
「(リリーちゃん、今回の魔物の大発生ってどうして発生したのか分かる?)」
「(それは、ダンジョンで魔物が増え過ぎて出てきたからでしょ?)」
リリアンは、まるでそれが当たり前かの様に答えた。しかし、それはきっと...いや、一部を除き検討外れである事だろう。
「(ね、ねぇ?ダンジョンから以外で、魔物が大発生する事ってあるの?)」
「(え?う〜ん...あるとすれば群れで行動する魔物が多所帯になった時かしら。でも、ここら辺には群れで行動する魔物は居ないわ。)」
「(そう...なのね。いい勉強になったワ。)」
心の何処かでは、そうなんじゃないかという思いがあったが、できれば違って欲しいという願いは、リリアンによって打ち砕かれた。
(つまりは、ダンジョンからしか魔物は湧かないと。そして魔物の大量発生は、十中八九自分のせいで起きたのね。)
ダンジョン内を進んでいる時のトウトの言葉を思い出す
『きっと、蛇神様に恐れを為して逃げて行ったんですよ!』
コレが本当であると証明されてしまった。
「((はぁ〜...今後村に来る時用に、新しく通路を作るか。)...それにしてもよく被害を最小限に抑えられたよね?)」
「(え?そうねぇ、運が良かったのかしら。)」
「(ふーん...運が良いわりには、だいぶ用意周到に準備されていたみたいだけど?)」
「(うっ、ほ、ほら、村の人たちもたくさん鹿肉が欲しい時だってあるのよ?それに今回の嵐は強そうだったからみんな教会に集まっていたのよ。)」
「(嵐が迫ってきていたのに、この村まで来たのね?)」
「(いや、えと、それは...)」
しどろもどろになるリリアンを、1歩...1うねり?づつ問いただしながら、先程のお返しと言わんばかりに近づく。
「(実は...夢を見たの。ここの村が魔物の大量発生で大変な事になっちゃうっていう。それで、いてもたっても居られなくて、お父様に有るだけトラバサミをいただいて急いでこっちまで来たのよ。)」
「(...そういう事にしておくよ。今回は何事も無かったから良いけど、次にそういう夢を見たときは私にも話してね?)」
「(えぇ、そうするわ。)」
「(そうしてね。私達は友達なんだから!)」
お互いにクスリと笑いあったところで、アルヴィドが荷台に荷物を載せ終えた事を確認して声をかけてくる。
「(談笑中に失礼します。サナどの、今回の貿易品は積み終えましたぞ。倉庫の建造費にはまだ及びませんが、それはまた順次お支払いいたします。)」
「(ありがとうございますアルヴィドさん。返済はゆっくりで良いですよ。その方が交易品の交渉に有利ですし、そちらにとっては交易を続ける良い口実にもなりますよ。)」
「(ハハハ、確かに仰る通りですな。ですが、私が現役の間に全額返済させていただきます。)」
直ぐに支払うと、頑なに譲らないアルヴィドの瞳には、憂いのような物が見て取れた。いつ死ぬか分からぬこの世界では、借りは返せる内に返すのが良いとされているのかもしれない。
荷物を載せた荷馬車に、ミコとトウトを乗せて、サナは御者台に乗り込む。その膝...体の上にキクレを乗せて出発準備完了だ。
「(アルヴィドさん、盗賊の持っていた物品を貰いますね。)」
「(えぇ、構いませんが...!)」
手のひらを、賊の持っていた武器や防具が積まれている方向に向け、魔力波を放つ。そして金属の物部分だけ引っこ抜く。その光景を見ていた村長は、本日何度目かの驚愕の光景に、『魔法士様だから...』と濁った瞳で見ていた。
金属のパーツ達は、どれも鉄を多く含んでいたので、馬車の前まで移動させると全てを加熱してひと塊りに鋳造する。その後は馬の形に変形させるのだが、そもそもの金属量的に、中が空洞のロバ用フルプレートアーマー+中空球体関節という、展示品みたいな仕様になった。
「かぁしゃま、あれ何?」
「あれは、魔法で作った偽物のロバさんよ。」
「ろばさん!」
キクレは好奇心旺盛で、キラキラした瞳をロバゴーレムに向けていた。キクレが喜ぶ様に、頭を振ってみたり、足踏みをさせたりして、まるで生きているかのように操作する。すると、キクレはキャッキャとはしゃぎ、ロバを触ろうと手を伸ばす。それを「家に帰ってからね」と制してしっかりと娘を抱っこし直す。
「(蛇神様そろそろ...)」
「(うむ、そうだな。出発しようか...アルヴィドさん、リリーちゃん、私達はもう帰ろうと思います。何から何までありがとうございました。リリーちゃんは、今度会う機会があれば一緒にお茶でもしましょうね。)」
「(ええサナどの。それでは7日後に。)」
「(そうね、今度会ったらゆっくりとお話ししましょう。)」
アルヴィドとリリアンに別れを告げ、ロバゴーレムを前進させる。見た目に反して、力強く荷馬車を引くロバゴーレムに、村人達は苦笑いで送り出した。子供達は普通にニコニコ笑いながら手を振って居る。キクレは、それに答える様に「またねー」と後ろを向いて手を振っていた。
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次回更新も土曜日です。




