19話_マッチポンプ5
リリアンに抱きつき、幼女成分を十分に補填すると、身嗜みを少し整えながらリリアンの隣に居る、村長とおもしき人物へと話しかけた。
村長は朗らかに笑いながらも、遠回しに今後とも交易を行いたいと言っているようだ。そして、外のラミア達は、人を慎重に選び交易する者が多いようである事が分かった。
「(...そういえば、貴女の名前って?)」
「(えっ!...えぇとぉ〜...)」
「(ん〜?なんておなまえなのぉ〜?わたしち、おともだちだよね〜?)」
唐突に自分にはまだ無い名前を聞いてくるので、少しドギマギしていると、リリアンは年相応の無邪気な...ともすれば残酷な...雰囲気を纏い問い詰めてくる。さっきまでは、自分からは決して近づこうとしなかったリリアンが、今は好奇心に駆られる子供の様に距離を詰めてくる。
「((考えろ!考えるんだ、女の子っぽい名前を!...)...さ、さな、と言います!)」
「きゃっ!(なに勝手に抱きついて来てるのよ!)」
とりあえず、それっぽい名前を言えたので、結構近くまで寄って来て居たリリアンを抱きしめておく。
リリアンを抱きしめながら、今後の事を考える。食料の苗以外にも、服などの着る物を定期的に購入し、それに乗じて外の事を少しづつ調べるようと。
将来的には、地下から皆を連れ出して勢力争いの無い土地でのんびり暮らす予定だ。
「かぁしゃま〜!」
「(菊麗!どうしてここにいるの?)」
「ママしゃまが、もうだいじょーぶ、っていうからはしってきたの!」
リリアンを解放して、ニコニコと抱っこを要求してくる娘を抱き上げる。抱っこされた娘は、満面の笑みで抱きしめて来た。
「((可愛いぃぃ!娘可愛いぃよぉ!最高か?最高だ!うおぉぉぉ!)...そういえば、巫女...ママ様はどこにいるの?)」
「(蛇神様、此方に)」
気がつけば隣には、菊麗へ微笑んでいる巫女が立っていた。その後ろには、視線だけで周囲を警戒しているトウトが、背筋を伸ばし、まるで執事の様に巫女に付き添っている。
「(菊麗、私はここの村長さんともう少しお話しがあるから、ママ様と一緒に待っててね?)」
「えぇ〜、かぁしゃまといっしょがいーい!」
「((はぇぇぇ〜、駄々を捏ねる娘も可愛いんじゃ〜!)はぁー...村長さん、娘も一緒にいて大丈夫ですか?)」
「(えっ、あぁ...ええ、大丈夫ですよ。(その若さで娘⁉︎))」
(村長あんた凄いわね、普通あの見た目で子持ちなら絶句するところよ!)
皆と合流した後、村長の家に移動しリリアンも含めて今後の交易についてを話し合った。此方からは、主に金属や金属でできた商品を売り、ザンヒタヒューデ村からは、食料や衣服などの生活必需品を買い取る予定である。交易は週に一度行うようにし、その時は自分が必ず同伴して、村人との意思疎通を図る。
「(すみません。彼らはまだ此方の言語を知りませんので。)」
「(あぁ、いえ。お気になさらず。我々もラミアには、特有の言語が存在する事は把握しておりますので。)」
「(...ねぇ、ひとつ聞いても良いかしら?)貴女たちの言語ってコレ?」
「っ!...まさか、リリーちゃんが古代言語を知っているなんテ!」
今まで黙って村長との会話(念話)を聞いていたリリアンは、言葉の話になるといきなり流暢に日本語を話し始めた。コレには動揺したが、もしかしたら本当に古代言語として、この世界に日本語が存在するのかも知れない。そうであれば、侯爵家の令嬢であるリリアンが、英才教育の一環として教えられていても不思議では無い...筈だ。自分が転生してココにいるのだから、遥か昔に日本人が転生していてもおかしくない。
「そう、ラミアの種族ではコレを古代言語と言うのね...(話を切ってしまってごめんなさい。)」
「(いえいえ、リリアン様がラミア語をお話し出来るとは思いませんでした。流石は侯爵様の令嬢ですな。)」
「(ええ!流石リリーちゃんです!)」
「かぁしゃま?どういうこと?」
膝の上に座って、此方を見ながら首を傾げる娘に、内心で悶絶しながら「あとで教えてあげるわ」と言い頭を撫でて煙に巻いた。
交易の会議が終わり外に出ると、村人達は普段通りに活動を開始していた。軽武装の人達が3〜4人1組で、計6組ぐらいが森の中に入って行ったり、荒れた畑を耕す者、新しい貯蔵庫に戸惑う者、そして...
(おっと、すっかり忘れてたな。)
空中で天日干しにされた肉を見て、はしゃぐ子供達など、普段...とは少し違っているのだろうが、活気が戻っている様に感じた。
「(村長、アノ肉と骨粉、今回襲って来た魔物の生皮を3分の2づつ渡すので、木材をそこそこ頂けますか?)」
「(え?えぇ。それは構いませんが、一体何に使うのですか?)」
「(交易品運搬用に、荷馬車を作ろうと思いまして。あそこに建てた、石造りの建物と同じ要領で荷馬車ぐらいなら作製できると思うので...)」
「(あぁ〜...なるほど、ふむ。メラニーさんは魔法士様なのですね。)」
村長は、(魔法士様なら仕方がない)とハイライトのない瞳で自分に言い聞かせながら、木材置き場まで案内してくれた。道中、魔獣の肉などの取り引き材料は、空樽や余っている木箱に詰め込み、各種専門店に納品して来ていた。移動の最中も、子供達はひとりでに移動する箱や樽に興味深々で、ペタペタと触ったり、動かないように止めようとしたり、上に乗ったりして遊んでいた。
「(ココが木材置き場です。どうぞ好きなのをお選びください。)」
「(ありがとうございます。では遠慮なく...)」
木材置き場に保管されていた木材は、汚れや欠損が殆ど無く、先の魔獣大量発生時の影響は受けていないようだった。そこから頑丈そうな木材を魔力波でスキャンした後に、手で叩いても確認し、選別する。
「(コレと、ソレね。後は金属がそこそこ必要ね。アルヴィドさん、この村に鍛治屋とか無いかしラ?)」
「(えぇ、ある事にはあるのですが、鉄の備蓄は然程無いので、できれば...)」
「(そういう事なら仕方が有りません。今ある素材でどうにかしましょう。)」
出来れば、シャーシには金属を使って補強したかったのだが、備蓄が心もとなければ、無理に出させる訳にはいかない。今手元にある木材と、食料を入れる為の樽に使われている金属でどうにかするしかなかった。そして、魔法が使えると言うのが、改めて便利過ぎる事を知った。
お読みいただきありがとうございました。
次回更新も土曜日です




