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自由な蛇神  作者: ホニャ二ティ
20/32

18話_マッチポンプ4

もうしばらく続きます。

あと2〜3話分でこの章が終わります。

賊を前にして取る行動はいくつかある。

降伏・捕縛・殺戮・拷問・加工である。...やけに選択肢が多いことは気にしてはいけない。この事をリリアンに伝えるが、降伏と拷問は今回の選択肢に、入れないでくれる様に言っておいた。彼女は「(そんなもの、入れるわけないでしょ!)」と言っていたが、この世界では時と場合によっては入れる事も多々ある筈だ。


「(フフフ...娘の前に立ち塞がる悪は、例え神と悪魔が許しても、一切の慈悲なく消し飛ばす。その気概だけは有りますから...)」

「(そ、そうなのね。でも、ごめんなさい。今回は捕縛する方向で考えてくれるかしら?)」

「(...そうね、娘の教育上よろしくないでしょうし...そうそう、いろいろ終わったら彼らの身柄はこちらに寄越してくれないかしら?彼らには(ダンジョンの)肥料になってもらうワ)」


よほど目が据わっていたのか、扉の前まで移動して振り返って見たリリアンは、表情を強張らせて少し震えていた。


「(...巫女、菊麗の両耳を塞いでおくのだ。)」

「(はい、蛇神様)」

「...ママしゃま?」


巫女が菊麗の両耳を塞いだ事を確認し、扉に向き直る。

扉に片手を付け、魔力波を掌から広げて、もう一度賊の数と位置を正確に読み取った。

扉前方20m圏内に賊は11人。前衛に図体のデカい短剣持ちの人間が3人、中間に短剣か槍を携えた人間が4人、後衛には、短弓を持った3人の人間と大剣を担いだ1人の人間を確認した。


(陣形としては悪くない。だが、相手が悪かったな)


扉に手を触れたまま、それぞれの人間が立つ地面の下に魔法で干渉できるエリアを形成していく。数秒もすれば、賊の足元を中心に、半径3mは即座に魔法を行使できるエリアへと早変わりである。


(目標、賊の足と太もも...)「てぇ!」


今世、初めて口から出した言葉が掛け声なのは、一斉に攻撃するなら掛け声を言った方がそれっぽい、というこだわりからくるものだった。しかしその時に出た声は、勿論、聞いただけでアドレナリンが分泌される様な野太い声ではなく、子供が大人の真似をしたかのような可愛らしい声なのだが、そんな掛け声とは裏腹に、外からはモンスターの断末魔と聞き違えるほどの絶叫が聞こえてきた。


「(ちょ、貴女賊に何をしたの?...ひっ!)」

「(足の裏と太ももに細い針を指しただけですワ?)」


肩を掴み、少し青ざめた表情で問いかけてきたリリアンは、自分の顔を見るなりさらに青ざめてしまう。

外の絶叫を聞いて、自然と口角が釣り上がるのを魔力で押さえていたのだが、それでも少し下卑た笑みを浮かべていたのかもしれない。


「(さ、外に出て捕縛しましょう...巫女達は色々終わるまでここで待機だ。残党が居るかも知れんからな。菊麗、静かに、イイ子で待って居るのですよ。)」

「(...そ、そうね。(あの人達には目配せだけで指示を出しているのかしら?...))」


巫女達には他の人がいる時には、極力喋らない様に言っており、リリアン等には口パクで、恰も喋っている様に見せている。‥‥読唇術が可能な者には、口の動きで喋っていないのが分かってしまうだろうが‥‥

菊麗には何の事か分からないだろうから、念話で静かにしている様に言い、頭を優しく撫でてやる。こくりと頷く娘に微笑み扉に手を掛けた。


「(...ふむ、いい感じですワ!想定通りもがき苦しんでいる様ネ)」

「(なっ!全然血が出ていないのにこんなに苦しんでいるのはーーー)」

「(『拷問』と同じか、それ以上に酷いですね)」


扉を開けた先には、出血量が擦り傷程度の賊が足を抱えて倒れていた。

脂汗が滲んでいる者や、苦痛の余り過呼吸になっている者、嗚咽しながら這い蹲ってこの場から逃れようとする者、そして...


「(ひゅー、危ねぇなぁ。あと少し気付くのが遅れてたら俺もああなっていたのか。)」

「(...)」


肩に担いでいた大剣を地面に刺し、棒高飛びの要領でエリアから脱出した者が1人。男は、エリアの後方に陣取ったきり、こちらに攻撃してこなかった。

少しの間、沈黙がその場を制していたが、こちらから動く事によって、時が動き出したかのように風が凪ぎ、樹々のざわめきが聞こる。


「(おいおい、ラミアの嬢ちゃんどうしたんだい?あんまり近づくと、体が二つに分かれちまうぞ?)」

「(そう...)」


賊の男は大剣を構え直し、いつでも迎撃出来るようにしていた。その様から、自分が部下を刺した張本人だと気付いているのかもしれない。

男にゆっくり近づきながら、手の平を地面に向ける。そして魔力を操り、地下の金属鉱脈から一定量の金属を拝借してくる。


「(くっ!まさか魔法使いだとはな。)」

「(...早々に負けを認めないで下さいね?)」


地面から出したソレは、一般人が見たら、刃がなく少しだけ反った、薄っすらと紫色に光る金属の棒に見えるだろう。しかし、目の前の賊は何かを感じ取ったのか、より一層警戒心を強めた様だった。そんな事よりも自分は、武器を持ち、相手と戦える状況に心が踊っていた。


「(さぁ...行きますよ!)」

「(なにぃ!)」


自分でも驚く程早く、賊に迫っていた。そのままの勢いで木刀(金属製)を横に薙ぎ払う。地下街での反省を踏まえ、4分の1程の力で振ったのだが、こちらの攻撃が賊の大剣に接触すると、賊はそのまま後ろに吹き飛ばされ、木にぶつかることで動きが止まった。


「ぐふっ(な、何て怪力だ!魔法使いは非力なんじゃ無いのか⁉︎)」

「(...どうしたのですか?まだ一撃しか振っていませんよ。(あれ?力強過ぎたか?))」


想定以上に力が出てしまったか、相手が軽過ぎたのか、想像ではいい感じに賊が受け止めて、お互いニヤリと笑みを浮かべる手はずだったのだが...

微妙に萎えながらも賊へと再接近する。

今度は吹き飛ぶことがない様、賊の後ろに土の壁を作り固めた。高さは5m程で、普通の人間ならばどう頑張ってもよじ登る事は出来ない。


退路を断たれたと思っている賊は、真っ青な顔で此方を睨みながら、どうにかして生き延びる術を必死で考えていた。


「(...ほら、2撃目ですよ!)」

「ぐっ...?((先程よりも威力が低い?これなら...))」


今度は、8分の1程の力で上段から振り降ろす。賊は、ただ落ちてきたも同然の金属刀を、眉間に皺を寄せて受け止めるも、顔色は先程よりもまだいい。


「((人間を剣術の練習台にするには、このぐらいの力加減が必要なのか)...まだまだ、行きますよ!)」

「くっ(一撃一撃が重たいが、剣術は素人か?(いや、そもそもこの華奢な体で、どうしてこんな馬鹿力が出せるってんだ!))」


素人丸出しの、剣技と呼ぶに値しない攻撃を、大剣でうまく捌きながら、攻撃の隙を伺っている賊は、内心余り穏やかではなかった。

次から次へと迫り来る剣は、何回も捌いているにも関わらず、その威力と速度は、全く衰える様子がなく、寧ろ少しづつ威力が上がる時も有れば、速度だけを上げてくる時もある。尚タチが悪いのは、剣を振っているラミアの少女は、最初に吹き飛ばされた時と同じく、涼しい顔に片手でその攻撃を放って来ている事だった。



「(...もう疲れたのですか?(うーん、剣術の相手に丁度いいかもと思ったけど、そんなに強くないのかなぁ?))」

「ハァ...((クソ!なんなんだコイツは!))ハァ...((全く衰えることのない威力と速度、コレがラミアなのか⁉︎))」


剣技の練習台代りに使っていた賊は、何十回と剣を捌いていたが、遂に疲れ果て地に剣を刺し膝をついた。

息も絶え絶えに此方を睨んでいるが、賊(賊が幼女であっても)に情けはかけない主義なので、そのまま顔から下を地面に沈めて捕獲する。


賊の体を地面に埋め、持っていた金属刀を鉄扇に作り変えて持ち直すと同時に、後ろから歓声が聞こえてきた。驚いてビクッとなりながら振り向くと、そこには縄で縛られ転がされている賊達と、何故か大喜びの村人達が勢ぞろいしていた。

先程まで何も聞こえなかったのに、突如として現れた多くの村人に唖然としていると、見た目60〜70ぐらいのお爺ちゃんと、リリアンが此方に歩いて来ていた。それを見て、佇まいを少し直し、歯を見せて笑いながらリリアンへと歩み寄る。


「(リリーちゃん!見てくれましたか?私の華麗なる剣さばきを!)」

「(ええ、まぁ、そうね。見たいたわよ。)」

「(ならば!お疲れ様のハグをして下さい。)」

「(なっ!なんでハグしなきゃいけないのよ!)」

「(賊退治は交換条件に含まれていませんので、金銭の代わりにリリーちゃんからのハグで手打ちにしようと思いまして...)」


そういうと、少し考えた素振りを見せた後に、両手を広げて「(...分かったわ)」とソッポを向きながら答えるリリアン。そんな照れてる所も可愛いぞぉー!...と言う言葉は心の奥にしまい、満面の笑みで抱きしめる。


「((ハァァァァァ⤴︎フォー!ヒィィヤッフゥー⤴︎))...(うん、コレで精算完了ね!...んっん、お見苦しい所を見せてしまいました。食料などの苗を少し分けて頂きたくここまで来た者です。ここの村長さんですね?)」

「(ええ私がここ、ザンヒタヒューデの村長をしております、アルヴィドと申します。いやはや、友との抱擁は信頼の証、リリアン様がそれだけ貴女に心を許しているという事ですな。...であれば、食料の件も少し色を付けさせていただく所存。何より、ラミアの種族と交易を行えると言うのは、私共は『不正を行わず、誠意のある対応をできる者たち』と言う事でも有りますからな。)」


お読みいただき、ありがとうございました。


次回更新も土曜日です。


そろそろ閑話2を上げる予定(未定)です。

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