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自由な蛇神  作者: ホニャ二ティ
17/32

15話_マッチポンプ1

長くなっているのでいくつかに分けます。

しばらく美しい景色に見惚れていたが、視界の隅に映った黒煙に、自然と視線が流れていく。美しく神秘的な光景に、ある意味お似合いであった。

黒煙は、目の前に広がる緩やかな傾斜を降りた所にある、森の先から上がっているのが分かった。


「(...この雰囲気だと、ちょうど戦が終わり、疲労困憊の兵士が地べたに座っているものだな。)」

「何を見ておられるんですか?」

「ふむ、黒いモヤが空に登っていますな。」


自分が煙に気づいた事で、2人とも夢心地な様子から現実へと戻ってきていた。そこで、煙の出ている方向を指差し、彼処に行こうと提案する。煙の出ている位置的に、森に入ってからさほど遠くない場所に村があるのだと思い、戦車は置いて行くことにした。ただ2人は、御身を泥で汚すなどいけない。と、最後まで戦車で行こうとしていたが、泥に触れてみる事で新しい何かがあるかもしれないと、最早強引に泥のある場所に突撃し、泥を付ける事で諦めさせた。


(...巫女の強引な所は自分に似たのかもしれない。)


巫女から卵を受け取りながら、そんな事を考えていた。何故、卵を巫女から預かっているかと言うと、巫女が「徒歩での移動なら、お任せください!」と、卵を押し付けてながら息巻いていたからだ。戦闘する気満々の人間に、自分の娘を預ける訳にはいかないだろう。


卵を受け取り、歩く事10分。

もちろん、戦車は洞窟の側に窪みを作り、其処に格納して隠した。地面の音が、ほんの微かに違う事に気がつかれる事は無いだろう。

森に入るとトラバサミや、ソレに酷似した罠がこれでもかと設置されており、大きめのネズミや、ドックボアード、オオカミなどが引っかかって死んでいた。見える限り全ての罠が作動されており、何かしらが掛かり、失血死しているいる光景は、戦争後の様な悲惨さである。


「酷い殺し方ですね。」

「(あぁ...だがおかしいな。本来この罠は密集させて置くものでは無いのだが...)」


狩が目的ならば、もっとまばらに罠を置き、人の匂いを最小限に留め、枯れ葉や土で偽装させるはずなのだ。しかし、ここに置いてある物は全て、ほぼ等間隔に置かれた後が残っていた。この事から導き出される答えはただ一つ。


(予めここに来ることが分かっていたのか...)


何らかの影響で、ココを大量の動物が通る事が分かっていなければ、こんな狩に向かない配置に、狩に使う道具を置きはしないだろう。

罠に掛かって死んだ動物たちを通り過ぎると、目の前には農村が広がっていた。ここにも、罠に掛かった動物の死骸が転がっており、さらには家屋(多分納屋)が倒壊していたりした。動物以外の死体が無い事から、村人は罠を設置した後に何処かに避難しているのだろう事が伺える。


魔力波による探知を行うと、ここの村人達は一般家屋の3倍はある、教会のような所に閉じこもっている事と、畑に洞窟で舜殺されたネズミと同じ生き物が、今も尚食物を喰い荒さんとしている事が分かった。


「(他人の作った作物を勝手に食いおって...害獣駆除をしといてやろう。)」

「蛇神様?...何をなさるおつもりですか?」


巫女が不思議そうな表情で振り向く。手を地面と平行になるよう伸ばして目を瞑る。洞窟から1番近いこの村には、今後とも世話になる予定なので、少しでも恩を売っておく事にした。とはいえ駆除は一瞬で終わる。とある村人に襲い掛かろうとしている「ネズミ」も、普通のネズミも、土を鋭利な槍に変えて突き刺すだけだ。


「(...さて、害獣の駆除は終わったから、村人達に挨拶しようか。)」

「?...もう終わったのでありますか?」


目を開けると、トウトが刀を構えながら聞いて来た。何が起きても良いように、巫女は周囲を警戒していたが、特に何かが襲って来るような事は無かった。


卵を抱えたまま教会に近づき、正面の大扉を二回程ノックする。教会は、十字架の代わりに円の中心に女性が立ち、両手を合わせて祈りをささげている像が目印らしい。


『(...あのー、すみませーん。誰か居ませんかー?)』

「あの、蛇神様?中にいるのにが分かっているのに、どうして誰か居るのか尋ねるのでしょう?」

「(巫女よ、外がこの惨状なのに、いきなり中に突入したら敵だと思われてしまうだろう。故に、あくまで通り掛かっただけで敵意が無い事を示さねばならん。)」


すると、教会の大扉の向こうから、女の子の声が聞こえてきた。未だにこちらの言語を理解出来ないので、心を読んで何を言いたいのか確かめた。


「(誰かしら?、もしかして救助に来た組合の人?)」

「(んんっ...申し訳ありません。私たちは通りすがりの旅人なのですが、道中大量に現れた魔物を始末していましたら、服などが無くなってしまいまして...なので、この村で服を調達出来ればと思い寄らせていただきました。)」


言い訳にしては些か無理がある気がするが、あり得なくは無い話だろう。そう思い扉の奥に意識を向けると、女の子も同じように考えており、本当に服だけが目的なのかと疑っている様であった。そこで補足もする事に。


「(...実を言うと、服以外にも目的がありまして、作物の苗をそこそこの量と、帰るための食料を3人分分けて欲しいのですが...)」

「(食料の苗なんて何に使うのかしら、と言うか一体貴女達は何処から来たの?)」

「(...申し訳ありませんが素性は伏せさていただきます。ですが、私は魔法が使えるので、この村の惨状を、ある程度元に戻す事が出来ます。それと引き換えに服や食糧を分けて頂けませんか?)」


中々頭の良い子の様で、色々と今後の事を考えているようだった。しかし、何故女の子があれこれ考えながら、答えを出そうとしているのだろうか?大人の人はどうしたのだろう。


「(あの、大人の人はおられないのでしょうか?)」

「(...そう言えば旅人だったわね、私の口調でどう言う立場の人間か分からないのかしら?)」

「(...村長さんのお孫さん、とかでしょうか?)」


辺りの空気を鳥の囀りが支配した瞬間だった。

少しの沈黙の後、大扉が少しだけ開き、中の女の子がこちらを確認してきた。扉の隙間から覗くアイスブルーの瞳は細められ、金色の髪が揺れる。顔だけだと、何処からどう見ても何処ぞのお嬢様であるが、隙間から見える服はとても質素な物だ。そして身長と幼い顔だちから考えるに、多分見た目年齢は同じぐらいだろう。

服と顔のギャップに驚き瞬いていると、女の子が舌打ちした後に口を開いた。


「チッ(貴女、本当に裸なのね...(と言うか私より胸があるってどう言う事⁉︎というよりその卵は?っていうかラミア⁉︎))」

「(えぇ、そうなんですよ。他の2人も裸なので3人分お願い出来ますか?服を頂ければ直ぐにでも作業に取り掛からせて頂きますので、何卒よろしくお願いいたします。)」


手を体の前で揃え(この時に胸を強調し)約60度ほど頭を下げる。「ぐっ」という悔しさ滲む呻きを頭の上で聞きながら、返事を待つ。待つ事数秒、溜息と共に扉を開く音が聞こえてきた。


次回も土曜更新です。

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