閑話_知恵の皮
3話のネズミ視点です
あるダンジョンにネズミ達が[生成]されました。彼らは、生存本能のままに、食べられる物を探しにダンジョンの中を歩き回りました。ダンジョンには、他にも、蝙蝠やタコ、はたまた天敵の蛇までもが生息していました。彼らは、死亡する度に一定数になる様、定められた場所で新たな個体が生み出されていました。幸運なことに蛇に喰われた個体は居ませんでした。そのほかだと、大抵はタコの化け物に喰われていました。
そんな彼らの中から、ある日偶々3匹で行動していた雌ネズミ達がいました。彼女らがいつものように、蝙蝠たちの居る場所の奥に、池の水を飲みに行こうとしていると、鞭を打つような音が一度だけ、洞窟内に響きました。
音のする方に向かってみると、蛇の巣の下に、白色の謎物体が落ちていました。初めは特殊な生物かと思いびくびくしていた鼠達ですが、落ちていた白い物は、特に動くことなくその場で静かに佇んでいます。
彼女らの中で一番大きな個体が前にでて、それの匂いを嗅ぐと、欠片を少しだけ食べて飲み込みました。すると、脳内に電撃が走るような感覚の後に、思考がクリアになり、これまでの暮らしを振り返り、自分達の生存を確かなものにする為には、今後の生活を改善していくことを決めました。そして、その皮が蛇の物だと認識すると、コレを食べた直後に、思考がすっきりのだと確信し、他の2匹にも同じように食べさせました。
3匹はその場に落ちていた皮をすべて回収し、自分たちの誕生の場へと持ち帰るのでした。
そしてその日は、彼らにとって始まりの日であり、蛇神教誕生の日でもあるのでした。
蛇の皮を食べてから2日が過ぎました。彼らはまず、寝る場所の確保を行いました。
蝙蝠の住む洞窟の奥、池のそばには、雑草が生えているエリアがあります。そこから雑草を引き抜いて地面に敷き、それぞれ家族単位の寝床としました。それから、間違って糞を食べてしまう赤ん坊がいたので、糞を池のそばに捨てに行く担当を決めます。
次は、食事を探しに行く者たちを募りました。この洞窟は食料が非常に少ないです。池のあるエリアには、多少のキノコと水、それから食べられそうに無い草と苔しかありません。彼らは、食料事情解消のために、いろいろな場所に仲間を派遣して情報の収集を行おうとしました。
次の日に、夜の糞捨て担当のネズミの1匹が帰って来ないという事件が起きました。
彼は、蛇神様の生贄になったという者と、ふらふら遊んでいたら迷子に成ったのでは、という意見に分かれましたが、真意は誰も知ることはありませんでした。これを機に、夜寝ない悪い子は蛇神様に食べられてしまう、と言う様な、子供を寝かせる為の決まり文句が出来上がりました。
一応、迷子になっている可能性を考えて、最初に蛇の皮を食べた3匹が偵察に出ることになりました。蝙蝠のいる洞窟が近くになると、あの夜のような鞭打つ音と、「ブヒィィィ!」という声が断続的に聞こえてきました。その道の前を通るのは、なぜか憚られたので巣まで戻って遠回りをすることにしました。その間一番大きな個体は、迷子になっているであろうネズミの生還は見込めないだろうと悟っていました。
そうして移動していると、蛇の皮が落ちていた場所までやってきました。
(今日は落ちてないわね。)
そうして、蛇の巣穴を、もしかしたら落としてくれるかもしれない、という期待の眼差しで見ていると、地面に何かを擦るような音とともに、腹が少し膨れている巣穴の主が帰ってきました。
考える力を授けてくれた蛇神様は、巣穴の外に居たのでした。
閑話は本編扱いでは有りません。
閑話の次回更新は、気分次第です




