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自由な蛇神  作者: ホニャ二ティ
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9話_ダンジョンのシステム

遅れました。

久しぶりに12時間ほど寝てしまった。

下の階層に入った直後から、体が重く感じて思考が鈍る感覚におそわれた。


(うぅ〜なんか怠い、頭もボーっとするし、風邪か?...いやいや、下の階層に入った途端にか?)


試しに坂道の内側に戻ると、思考はスッキリとし、体は徐々に元気を取り戻していく。そして、もう一度坂道から下の階層に出ると、思考が鈍り、怠さが戻ってくる。もう一度坂道に戻ったところで理解した。


(コレは仕様か!まぁ、普通そう言うシステム組んどくよね!他の階層のボスとかが自分の階層で暴れられたら、困っちゃうもんな〜)


ウンウンと頷きながらも、再度下の階層に突入していく。やはり、体が怠くなり思考がまとまらない。だが、前世でも同じような境遇になった事がある。


(あぁ、そう言えばこの感じは、酔っ払ってる時に似てるかもなぁ。体の怠さが無ければ本当にそれっぽいんだがな...)


それは、酔っ払っているような、ともすれば、インフルエンザにかかって意識が朦朧としているような感じ、というのが合う感覚だった。


(そういや、草も木も真っ黒だなぁ)


辺りを見回すと、この階層には草や木が生い茂っているが、どれもこれも、葉っぱだけ真っ黒になっていた。木の幹や枝などは茶色なのに、葉っぱだけが真っ黒になっている。


(...あぁ〜、風邪ひいてるような酔っ払っているような感じだと、腹が減って来るなぁ〜)


いつでもどこでも、お腹が空く事が出来るのは、1種の才能かもしれないなどと考えながら、食べられそうな物を探す。

低木には、目に悪いほど真っ赤な実が、まるでサクランボのように2つ1組で実っている。匂いは特にせず、プラスチック製の食品サンプルか何かかと思える程ツヤツヤしている。遠くから観ると、低木の葉っぱの影から、赤い目がいくつも有るように映る。しかし、熱源を感知できるこの目は誤魔化されない。地面に落ちた実は、齧られていない事から、食べるのは控えた方が良いだろうと手を伸ばす事は無かった。しかし、木のサクランボは、ネズミ達が持って帰って来ていた籠に入っていたし、町で食べている光景を何度か見ていたのだが、酔っ払っているような状況では、思い出す事が出来なかった。

ある木には、紫色の林檎がなっていた。此方は、虫喰いの後や何かに啄まれた跡などが有ったので、少し燻んだ色の実を取って食べてみる事に。


(コレは美味そうな匂いだ。...林檎よりも梨に匂いは近いかもな。それでは、実食です!)


紫色のリンゴを少しだけ齧ってみると、中からはリンゴより梨に近い味の汁が溢れ出て来る。勢い良すぎて、身体のあちこちに汁が飛ぶがお構い無しに噛み砕く。


(うっわ!めっちゃジューシーだな...甘過ぎぃ!)


あまりの甘さに、口の中に残ってた物を全て吐き出した。しかし、口の中には梨のジャムより甘ったるい味がこびり付いて中々取れない。身体に着いた液体を拭こうにも、ものすごくベタついて、やはり手で拭う事は叶わない。


(...とれなぃ〜、気持ち悪いよ〜...グスッ)


そうして身体にまとわりつく、糖度高めの果汁と格闘していると何故か涙が出て来ていた。ベタベタする感覚が嫌で、取りたくても中々取れず、最初はイライラしていただけだが、次第に目頭が熱くなっていき、遂に涙を瞳に浮かべていた。

思考が退行している事に気付かずに、水を求めて彷徨う事になった。


(お水ぅ〜、どこぉ〜?)


自分の口内に広がる甘い香りのせいで、水の匂いなどを感知出来なくなっていた。そのせいで、真横に近づいていた敵の察知もできず、茂みからいきなり飛び出してきた、魔物の攻撃を諸に食らってしまった。


ガルルルル!

(きゃっ!)


それは犬の頭を持った猪だった。その魔物、ドックスボアードの肩にあたる部分からは、ゾウのような曲がった角が伸びており、飛び出すと同時に、角を使って弾き飛ばされてしまった。幸いなことに、急所へのダメージは無かった。しかし、体全体に物凄い衝撃が伝わる。


(痛っ!くない?...というかココは?)


ただし、その衝撃によって思考が一瞬クリアになり、正気を取り戻すことに成功する。攻撃を受けた場所が、子供に平手打ちを受けた様に少し痛むが、幻覚を使い感覚を麻痺させるまでも無い。そして辺りを確認すると、牙を剥き出して威嚇しているドックボアードに気づく。


(...ほほぅ、お前美味そうだな...)


大きさは高さ50cm全長1mくらいでネズミの街の城壁より大きい。体重は俺と大して違わ無いだろうと思われる。何せ上半身は小学生ぐらいだが、下半身はそれなりに太くて長いのだから。

お互いに睨み合うが、先手は頂く。

地面に手を着いて、土の槍を伸ばす。蹴りが着いたなと思ったが、ドックボアードは横っ跳びをして、擦り傷程度のダメージしか負っていなかった。大きな体の割に素早く動けるのは予想外だった。


(ふむ、初撃を避けるとは中々。野生の勘というやつか?だが...)


次は、ドックボアードの周囲5mの地面を細かいマス目状に高さ2m分圧縮する。

すると、ドックボアードは体重に耐えきれなくなった土と共に、約2メートルほど地面にめり込んだ。


「ワウッ⁉︎」


地面が沈み込む現象に、どう対処すべきか困惑しているドックボアード。

このスキに、圧縮した地面を弾頭として、地面からドックボアードの頭に向けて打ち出す。

ドシャゴッという鈍い音と共に、ドックボアードは動きを止める。


(...やったか!...ふぅ、ツッコミ役が居ないと寂しいな。)


と一人で考えながら、土を圧縮してゴーレムを作り、同じくして包丁を持たせ、首を切り血抜きを行なっていた。


(...ゴーレムと言うより、ラジコンロボットだな。)


ゴーレムとは言っても、自分が何処かに触れて常に操っている。見た目は気にしていないので、ゴツゴツとした岩の塊が組み合わさった、ザ・ゴーレムという見た目になっていた。

血抜きを終えたら、50cmぐらいの木の枝をゴーレムに突き刺す。木の枝を介してゴーレムを操り、ドックボアードを背負わせる。


(ハァ、これそれなりに魔力持っていかれるなぁ)


ゴーレムを作った後は、維持ではなく、動かす方に魔力を使う。1歩歩かせるのに、100m全力疾走した時の様な疲れが襲ってくる。


(はぁ、はぁ...おのれぇ!二足歩行難し過ぎだろ!...はぁ...はぁ...そして疲れる!ものすっっっごく!)


わざわざ二足歩行にしなくても、ゴーレムは作れるのだが、先の戦闘とゴーレム製作から今まで、魔力を使い続けており、疲労でそこまで考えが及んでいなかった。ゴーレムといえば、ゴツゴツした二足歩行の岩でできた人形、という固定概念があるので、足を蛇の様にすればもっと動きやすかったのかも知れない。しかし、魔力消費は接合部の少ない二足歩行の方が少なくて済むので、今は気付かずにいた方が実は良かったりする。


「(あぁ〜、あぁ〜、疲れるのぉ〜誰か迎えに来てぇ〜...)」


広域念話で嘆いてみるが、何もこちらに向かってくる様子はない。




(...ムゥ〜、どうしようかなぁ。)


帰路に着いてから数十分が経過した所で、何者かに尾行されていると気がついた。相変わらず疲れては居るが、意識が朦朧とする事は無かった。それもそのはず、常にゴーレムの体重移動に細心の注意を払っているのだから。地面が数ミリ沈み込む度に頭の位置を動かして、こけないようにバランスを取っているのだ。

それはそうと、尾行してきている何者かは、3〜5匹程で木の上に居たり、茂みからこっそり此方を伺っていたりするだけで、一向に姿を見せる気配がない。そして、此方を誘導する素振りも見せない。本人たちは完璧に隠れているつもりだろうが、此方からだとサーモグラフィーアイがあるるので丸見えである。


(一体何のために尾行してるんだ?)


どこまで進んでも、1匹たりとも姿を見せようとはせず、此方の歩調に合わせて一定間隔を保っている。それはまるで、攻撃の時を待つ暗殺者の様だ。



暗殺者紛いの集団を引き連れる事20分。ようやく、元の階層に戻るための入り口が見え始めた。


(...ようやくたどり着いた!あと少し!)


安全にドックボアードを丸呑みできる場所まであと少しのところで、奴等は動き出した。

今までの尾行が嘘の様に周囲に展開し、自分たちを囲む。そして、1匹の猿が目の前に立ちはだかった。


「キキー、ウキィーキ」


それは、腕と足の筋肉が異常に発達した猿だった。体は黒い毛に覆われているが所々に赤い毛が纏まっており、遠くからだと赤い実を付けた低木か何かかと思うだろう。


「(...あぁ?もういっぺん言ってみろ。)」


念話を受信専用にしていなかったので、猿の言っている事が分からなかったが、その行動から敵対的な事だけは分かったので、喧嘩腰にもう一度言えと睨みをきかせる。すると、まるで蛇に睨まれた様に一瞬硬直した後にまた喋り出した。


「(そ、そのイノシシを置いて行け!そうすれば、な、殴らないでおいてやる!)」


目の前に立ちはだかる猿は、声を震わせながらもそう脅迫(?)してきた。

どうしたもんかと考えながら、無言で睨んでいるだけで、顔からは正気が徐々になくなっていっているのが見える。


(...そんなに睨んだ時の顔が怖いのかなぁ...ま、いいや、実験につきあってもらおう。)


そう思いいたるや否や、周りの隠れている部下達にも一度だけ目を合わせる。そして幻覚魔法の幻視と幻触、幻聴を発動させる。すると、ゆっくりゆっくりと青ざめていた顔に赤みが戻っていく。それと同時に、隠れていた部下たちも、前に出てくる。その目は恍惚としており、何もない空間を見つめている。


(おぉ!うまくいったか⁉︎)


次の瞬間、隊長格の猿が嘶きながら、何も無い空間を片手で掴み、いきり立ったナニをもう片方の手で扱き始めた。それに釣られる様に他の部下猿達も自慰行為を始める。


(やったぞ!後は死ぬまで扱き続けさせる事が出来るかだな。)



待つ事1時間、猿達は仰向けにぶっ倒れてもなお、扱き続けていた。そして幻術をかけた張本人もまた、地面に両手をついて、息を荒げていた。周囲には黄ばんだネットリとした液体が散乱しており、不快な異臭を漂わせていた。


(へ、へへ。どうよ、もう立ち上がることもできまい!)


幻術を解いても扱き続ける猿達を見ながら、息を整えていく。5分程ゆっくりしてから、上階層への入り口へと猿を迂回しながら向かった。


次回も、土曜日更新です。

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