世界の衰退
同じ頃、街の中でナオはユアに遭遇した。
真っ向から、彼女の名前を呼びながら走ってくる所、ユアは相当急ぎの用事があるようだ。
「あれっ、ユアだ。どうしたの?」
「ナオー探したよー!」
息を荒くしながら、焦り混じりに話を続けた。
「警報なってるし、イブキくん見当たらないしナオいないしで心配で…!」
「警報ねー……。 なにか事故でもあったのかな」
「うん、実験が失敗したんだって。
もうすぐ街を巻き込むほどの大爆発が………っ」
「えっ………」
――――――爆発…?この街で?
となると、恐らく実験は失敗に終わってしまったのか。
塔の中にいるイブキ達や、街の中でも危ない。
早く逃げないと…と、ナオもまた焦り始めた。
ユアはその言葉の後に、これからの行動について話した。
「私、イブキくん探しに行く。
きっとまだ街にいるはずだから……!」
「ま、待ちなよ! 一人は危ないって!」
「ナオはこれ持ってて先行ってて! 見つけたら魔法で連絡するから!」
ユアは首から下げていたものを、ナオに託した。
そして、言葉の断末魔とともに彼女の姿も人混みの中へと消えていった。
「…メッセージ魔法…って、ユア!!」
姿をくらました彼女を追うことをナオは諦める。
街の人々は悲鳴や焦りの声を上げながら、徐々に避難の流れを作り始めていた。
早足に歩く集団の中、ナオは託されたものを眺めていた。
「これ、ペンダント…?」
翡翠色に鈍く輝いていた。
―――――どうか、無事でありますように
ナオは、ペンダントを胸に強く願った。
孤独に残った技術師は、自らのプログラムの元、街を延命させるためにコンピュータに立ち向かっていた。
「メインコンピュータ、爆破範囲の誘導を。
半径XZKからYTMへ、高さおよそSS209。
上空へと爆破の威力を促し、直径は街全体の広さへ変更。」
カタカタカタ…と忙しくタイピングをする。
距離の計算、高さ、爆破の幅や威力までも全てil1で統一したコンピュータで操作する。
街の人は、恐らく最先端の出入口へと避難しただろう。
だが、爆破を最小限に抑えることは出来ても、街の人が避難した矢先を爆発範囲外にすることは不可能であった。
―――――……………この爆発は、必ずこの街を壊すのだ。
「各部最終確認、完了……よし」
イブキは手を止め、一つだけ赤く光るボタンに目を落とした。
「……これを押せば、街は…………」
爆破予測時間まで、残り10秒。
イブキは、ふぅ…と息を吐き、自らの思いを綴り始めた。
きっとこれは償いだろう、人々を守るヒーローになれない、彼なりの懺悔の言葉だ。
その一言は、カウントと共に静かにこだました。
「……なあ、ナオ、ユア、俺さ――」
9、
「どうしても、一度は悪に染まっちまうみたいだ。
だがな……」
8、
「……それでも、その後に賭けてみたいと思うんだ」
6、
「これを押せば、俺はこの世界で再び活動することが出来る」
4、
「その後の世界で、解決策は必ず見つかるんだ」
2、
「……こんな言い訳がましいのが、『さいごの言葉』でごめんな?」
1、
「………絶対助けてやるからな」
ボタンは、さいごの言葉と共に押された。
刹那、この街を全体で包む大爆発が起きた。
音は激しさをまし、むしろ誰にも聞こえなかった。
それほどまで強力な、禁忌を犯した罰が街を襲う。
夜の静けさ、盛り上がった街の跡地、全てがこの大事故に巻き込まれてしまった。
音の末、街の姿をイブキは見届けられなかった。
後に『世界の衰退』と呼ばれたこの事故は、
……果たして、本当に救われるのだろうか。
真っ白になった頭の中、かすれた意識の元で、悪役は静かに意識を失った。
これで第1部は終了となります、ありがとうございました。
次回からは第2部をお送り致します。




