“Я” side 1
エクリールです。
今回は“Я”(リバース)sideの投稿になります。
本編にとって、とても重要な回となりますので、
是非お楽しみください。
『うー……時間まであと少しだけど…遅いなぁ…』
少女は一人その場で人を待っていた。
空は徐々に黒くなり、暗雲が空間を支配していた。
目の前には大きな建物、そして周りはそれを取り囲むように様々な施設が建設されていて、街中を駆ける回線は全てこの建物にたどり着いていた。
少しすると、闇に紛れて足音が静寂を破った。
固い地面を蹴るように、ぶっきらぼうに歩く様子を見て、少女は影の主である一人の男を呼びかける。
『おーい、こっちだよー』
『…先に言っておくが、長居はできない。了承してくれるな?』
『勿論だよ。…来てくれてありがとうね』
少女は力なく笑い、男は話を切り出した。
『それで、用事は?……あの件か?』
『……うん。 私、やっぱり君しか頼れないかもしれない』
『…』
暗い空に交じるように、少女の顔にも影が見えた。
『……言ったでしょ? 私は君たち以外には失望しちゃったの。
私があの子を嫌いになる前に、もう君の力を借りないで済むために……』
自分を諭しながら、少女の顔は徐々に憂いに満ちる。
そして、本心の雨を降らせたのだ。
『………――たいよ、もう嫌だよ……』
男はその言葉を全て受け止め、その上で自分がどうするべきかを考えた。
表情を少し和らげ、まるで泣き出した少女をなだめるように、落ち着いた声音で彼なりの意思を述べた。
『……――には、お前を止めるべきなのかわからない。 だからこそ、全てを委ねる』
委ねる、という言葉を聞いて落ち着いたのか、
少女は涙を拭って優しく微笑み返した。
『珍しく、優しいんだね』
『……うるさい。 好きに使ってくれて構わない』
不意に褒められたもので、男は少し赤面した顔を誤魔化すように空を見上げた。
その様子を見て、少女はクスクスと笑い、言葉を返した。
『うん……
……ごめんね、―――…………』