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荒む大地   作者: Ecrire
第二部
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16/20

“Я” side 2

『ねぇ、もしも世界が理想郷になったら、どう思う?』


 ある日の夕暮れ、小鳥のさえずりが近くの木々から聞こえてきた。小高い丘の上に男女二人が、永遠に続く草原の先にある日の暮れを見つめていた。足元に生える小さな一輪の花はふわふわと夕風に黄昏ていた。

 この少女はたまに突飛な質問をしてくる。そして男はそれに対する解答をゆっくり探して、いつも答えられずにいる。今日の質問も難しいもので、男は上手く答えられずにいた。


『…俺には分からない、成るなんて思えないから』


 現実を見る男に対し、少女は意外そうな目で彼を見た。彼はいつも夢を創る仕事をしていた。だからこそ、こういった夢物語に対して、人一倍素敵な考えを抱いているものだと勝手ながらそう思っていたのだ。少女の水色の目は弁解するように、後ろにそびえ立つ自らの故郷を見ていた。


『あら、この街よ? 不可能なんてないわ』


 なびく金髪と水色のリボンが指し示す先の風景は、自然と調和した大都会の姿である。これ以上はないくらいに栄えきった生きる理想郷は、未だ伸び続ける技術力と、古来から伝わる魔法の力によって大陸一の繁栄を文明に刻んでいる。中でも中央に立つ大きな建物、調和の塔と呼ばれるそれは、王者のごとく見事な風格を担っていた。

 勿論男もこの街の力は大したものであると深く自覚していた。自分もその力に携わる生業をしているため、誰よりも近くで街の発展を見守ってきていた。群青の瞳が街を移すと、切なげに声を上げる水色の少女と目が合った。


『私はね、理想郷になったら、夢を叶えるんだ』


 光の糸が風を強調する。小さく惨めな少女の、履かない夢が口から物語られる。口にした夢は必ず叶うと男はどこかで聞いたことがある。彼女の夢を知りたいと、深く感じた。

 黒と金が交わる夕焼けの下、小鳥のさえずりは収まってしまった。代わりに少女の口から、ゆっくりと幻想が物語られようとしていた。


『それはね………』


 風が、再び姫君の声を攫った。


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