↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
荒む大地   作者: Ecrire
第二部
PR
15/20

ユメ 後編

前回の続きです!


『――上司の命令が聞けないのか!!』


『ちっ………!!』



 場面は一変した。いつも穏やかな上司の叫び声が、イブキの意識を覚醒させる。目の前にはなおも暴走し続けるメインコンピューター。ディスプレイには赤い文字で“DANGER”と綴られていた。あちこちに存在するキーボードは目まぐるしく光を放ち、各自問題解決のために死力を尽くしている状況だった。


 悪魔のような時間だった。メインが死ねば街は必ず崩壊する。それだけは避けなければならなかった。信頼できるのは自分の腕前と機械の正確さ。この街は理想郷と謳われている。崩壊なんて、あってはならない事だ。止められないはずがない。


 イブキは必死に止めに入っていたも、上司の怒号が真っ直ぐ突き刺さった。彼はイブキを、部下を逃がすという選択をとるというのだ。誰が見ても無茶だとわかる策である。



『いいかイブキ、お前は確かに腕がいいプログラマーだ。

だけどな、この事故は抑えられない。

たとえどんなに死力を尽くしても、誰にも止められねぇんだよ!!』


『なら上司にも無理じゃねえか! さっさとこっちに……!』


『馬鹿野郎っ!!』


 再び怒鳴り声が辺りをこだまする。緊急事態の放送や、エラーの音が甲高く響く中でも、上司の声は何よりも強く耳に流れ込んできた。


『オレはあの日にお前を部下にした!

部下に出来ないことを務め切るのが上司……――――親ってもんだろうが!!』


『………っ…』


『だから早く……早く行け!!』


 崩れていく。

 何もかも。

 ―――――父親の、力一杯の笑顔も。



 夢は無慈悲にも、そのまま世界を崩壊させた。

コンピュータは暴走し、誇り高き街のシンボルは派手な音を立てて地に落ちていく。

 どんなに高い技術力、魔法があったとして、誰がこの惨状を救うことが出来たのだろうか。

誰がどのように懺悔をすれば、世界の理を覆して、理想郷という名の虚像を実現させることが出来たのだろうか。


 黒衣の技術士の夢は、ここで覚めた。


〜〜〜


「………ぁ………つぅ……」


 細い喘ぎが洞窟一帯に広がる。悪い夢を見たかのような感触。頭はとても重かった。


「イブキ………?」


 視界に映ったのは、青い目を潤わせながら、心配そうにこちらを覗き込む、見慣れた水の魔導師の姿だった。洞窟はとても暗く、夢の衝撃で余計に闇が深く写って見えた。


「……ナ…オ……か…」


「どうしたの? すごく顔色が悪いよ……」


 弱々しく腕を上げ、目元を隠す。あの出来事から目を背けたくて、自身の衣類で群青の目を覆いかぶせる。もう思い出したくもないという、そんな悪夢のような話であった。


「……嫌な…夢を、見たんだ…」

「夢?」


「…“世界の衰退”の犠牲となった、俺の…大切な人の夢」


「……そういえば、話していなかったな。事件の全貌を…」


 ゆっくり起き上がり、掠れた声で当時の出来事を、相棒に話そうと試みた。まだナオは世界の衰退について、なにも知らないままだ。知らぬが仏という言葉もあるが、知らなくてはならない事実もある。イブキは、真っ直ぐナオをみて、決意を固めた。


「話しておかないとな……あの場で、何が起きたのかを」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。