状態
「こちらからも質問を少し良いか?」
受付嬢の説明により、ある程度内容を把握した哲哉は今まで疑問に思っていた事を投げかけた。
例の体力や魔力についてだ。
「はい、承ります!」
先程までビクビクとしていた態度は何処へやら、なんだかんだでやはりプロなのだろう。今では毅然とした態度で、哲哉の話に耳を傾ける。
「ギルドカードについて少し聞きたい」
「はい」
「その、なんと言うか体力や魔力とかはギルドカードでは把握出来ないのか?」
「えーっと?? それはどういう意味でしょうか?」
(ん? 内容が通じてないのか?)
「・・・つまり、魔力10とか体力20と言った数値はギルドカードでは確認出来ないのかと思ってな」
「んっと、それは何でしょうか?」
(マジか! 無いのか状態的な何か!!)
「・・・鑑定技能とかもあったりしないのか? 魔物の強さ見たりとか」
「そんな便利な物があればある種の指標になっていいんですけどね。生憎そんな事はギルドカードでは出来ません」
どうやらこの世界においてゲームの様なレベルやHP、MPなどを知る術は無いらしい。
「ただ、一定数魔物を討伐すると、身体能力は大幅に向上すると言うことは分かっています。とある人だと片手で大木をヘシ折ったりですとか」
数値で確かめる術が無いだけで、魔物を多く倒せば倒すほど、身体能力の向上や適正技能取得が行われるなど周知の事実であり、魔物の魔素を取り込む事によって、肉体的に強化されるのだと言う。
(なるほどな、レベルアップの認識が無いだけで、実は経験値的なモノは取得してるって事か。魔素値とか普通に見れるもんな)
「悪いな、変な事を聞いて。為になった」
「いえ、こんな事で宜しければいつでも気軽にご相談ください。ところでコタニさん早速依頼を受けて行きますか?」
「テツヤでいい。そうだな、今日は色々と準備やら整理やらしたいし、明日また顔を出す。その時によろしく頼む」
「テツヤさんですね! はい、承りました。」
そう言って受付嬢は今日一番の笑顔で見送ってくれた。そのまま冒険ギルドを出て宿への道筋を歩いていると、先程から隣を歩いているフィンが元気のなさそうな顔をしていた。
「どうかしたのか? フィン」
「・・・」
哲哉は心配になって話しかけたが、フィンは何も答えず、下を向いてしまった。もしかして仲間が死んだ事が今になって悔やまれてるのかと、哲哉は再度話かけようとしたところ全く関係の無い話がフィンの口から零れた。
「・・・テツヤ様はああいった子がお好みなのでしょうか?」
ーーはい?
お門違いの心配をしていた哲哉は呆気に取られるが、フィンの表情は優れない。何でそんな事を聞くのか甚だ疑問だが、惚れられているなど露程も感じておらず、勘違いするほど経験も浅くは無い。しかし哲哉は鈍感な人間でも無い為、フィンの考えが読めない。
「何でそんな事を?」
話の本質が見えないので、質問で質問を返す。ちょっと失礼だが、仕方ないだろう。
「それは・・・いえ、何でもありません。失礼しました。忘れてください。」
ーーフィンは笑顔を哲哉に向けて、言ったが表情がどこか寂しそうだった。
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テツヤ=コタニ 27歳 男
職業:冒険者
階級︰G
適正:銃剣術
技能:演算処理
称号:黒鎧の騎士