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貴方が大好きでした(1)

 翌日、真冬は重い足取りで四季折高校の正門を抜けた。

 時刻は8時前。

 部活に所属してない生徒が来るにはあまりにも早すぎる時間。

 いつもならまだ聖女様を装う為の身支度に力を入れている時間だ、最近は少し余裕が出来たから化粧品なんかも買って下地を整えることが出来るようになったので時間に少し余裕を持てるようになったがちょっと前まではすっぴんでいかに良く見せるかに力を入れていた為、空腹の中、時間を登校のギリギリまで使っていた。でも、今日は準備もそこそこに1時間早く家を出た。

 ナツと……顔を合わせたくなかったから。

 自分から一緒に登校しようと言ったのに自分勝手だと思いながらも衝動を止められなかった。

 校舎へと続く舗装された道の右に広がるグラウンドでは野球部とサッカー部が区分けして練習に励んでる。進学校でありながら野球、サッカー共に市でも名の知れた強豪である為、その練習は素人の真冬が見ても凄まじく、掛け声は耳を劈くよう。マネージャーと思われる女の子達も黄色い声で応援し、まるでコーラスのようだ。

 真冬は、空を見上げる。

 夏の昇ったばかりの太陽は既に強い熱を放って肌を焼き、雲一つない青々とした空が水面のように煌めく。

 あれからナツとは一言も話さなかった。

 いや、話さなかったのではない。

 ナツは、真冬に話しかけようとした。

 見てくれようとした。

 気づいてくれようとしてくれた。

 それなのに真冬が一方的にナツを断絶(シャットアウト)したのだ。

 ナツを見ると……あの言葉を思い出してしまうから。

 

"俺は店長のことが好きだ"

"世界で一番好きだ"


 ここまで重く、破壊力のある言葉がこの世に存在するのだろうか?

 実際、真冬はこの短い言葉に木っ端微塵に打ち滅ぼされた。

 世界で最も有名なエネルギー波でもここまでの威力はないのではないかと思った。

 そのせいでアキにも迷惑をかけた。

 真冬が頑張っているからと鳥の唐揚げをたくさん作ってくれたのにお礼もしなければ一言も会話をすることもなく、ご飯も喉を通らなくてちょっとしか食べれず、せっかく作ってくれた朝とお昼のお弁当も忘れてきてしまった。

 ナツもナツの肩に乗った雅も心配そうに真冬を見ていた。


 最悪だぁ。


 私……何してんだろ?


 ナツ君が店長のことが好きだからってなんだっていうの?

 そんなの……最初から分かってたことじゃない。


 猫カフェ"Ca-Syuu(かしゅう)"に初めて足を踏み入れた時からあの2人が普通の関係ではないことは直感で分かっていた。

 流れ出る感情、醸し出される雰囲気。

 それはまるで互いを求め合う片羽の鳥のよう。

 自分が間に入ることなんて……最初からできなかったのだ。

 それなのにナツに自分を見て欲しいとお願いした。

 気づいて欲しいと願った。

 それがどれだけ彼を苦しめる行為かなんて考えもせずに。

 

 悪いのは真冬(私)。

 

 それなのに頭の中はナツのことでいっぱいだった。

 ナツのことを考えるだけで胸が張り裂けそうだった。

「ナツ君……」

 真冬の大きな目が潤み、目尻から一筋涙が落ちそうになる。

「真冬?」

 背中から声が掛かる。

 真冬は、思考と心の淵から抜け出し、涙を拭いて振り返る。

 そこにいたのは土埃に汚れた練習用のユニフォームシャツとパンツを履き、四季折高校の校章の入った帽子を被った三春だった。

「三春……」

 真冬は、目を大きく見開く。

「お前、こんな朝早く何し……」

 三春は、言いかけた口を紡ぐ。

 青ざめた頬と、力のない表情、そして涙の跡が残った真冬の顔を見てギュッと眉を顰める。

「こっち来い」

 そう言って三春は真冬に背中を向けて歩き出す。

 真冬は、少し躊躇うも三春の背中を追いかけて歩く。

 3番の文字が大きな背中で揺れていた。

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