第39話 帰路環がつながった夜、俺たちはようやく次の扉の前に立てた
全部を繋げたのは、その夜だった。
監理塔の最上階。
風の強い観測窓の前。
帰路環第二片、経路符、代替監理印、それに元からあった旧路鍵片を制御台へ並べる。
「失敗したら?」
クロハが聞く。
「嫌な言い方するな」
「大事な確認だよ」
確かにそうだ。
俺は深く息を吸う。
たぶんここで必要なのは、最後の条件――渡界者共鳴。
つまり俺が触れるしかない。
盤面へ手を置く。
次の瞬間、断片同士が光の糸で結ばれた。
【帰路環の仮接続を開始します】
【渡界者共鳴を確認しました】
【北隔離立坑第三保守門への限定経路を表示します】
制御台の上に、薄い光の円が浮かぶ。
完全な門じゃない。
でも地図でも幻でもない、明確な経路表示だ。
監理塔から北へ伸びる一本の保守線。
途中で現在の迷宮地図から外れ、その先に古い扉の印が出る。
『北隔離立坑第三保守門』
「見えた……」
俺は思わず呟いた。
セラも息を呑み、エルフィーは剣の柄を握り直す。クロハは笑っているのか泣きそうなのか分からない顔で光を見ていた。
その時、円の中心に短い文字が浮いた。
『遅い』
クロハが息を止める。
さらに次の一文。
『来るなら全員で来い。半端に開くと閉じ込まれる』
ハザマだ。
たぶん。
兄貴分らしい雑な警告文にしか見えない。
でも、生きている人間の意志がそこにあった。
帰路環がつながった夜、俺たちはようやく次の扉の前に立てた。
まだ開き切ってはいない。
でも道は確かに見えた。




