第38話 深路標の名で初めて受けた四層指名依頼が、そのまま門前の資格試験になった
北隔離立坑へ向かうには、もう一つ足りないものがあった。
表向きの理由だ。
四層の外れへ大人四人と外部協力者一人がぞろぞろ向かえば、さすがに誰でも怪しむ。
そこへ副支部長が持ってきたのが、四層指名依頼だった。
「監理塔周辺で保守異常が増えている。正規探索者が嫌がって手を出さない。お前たちが行け」
「それ、実質うち向けでは?」
「そうだ」
開き直りが早い。
しかも監察官リシェルまで同席していた。
「教会としても同行監視します」
「監視なんだ」
「ええ。今のところは」
そう言われると嫌だけど、逆に言えば今は取り締まりじゃない。
依頼内容は、監理塔周辺で消えている保守員代行の救助と、異常水位の原因究明。
実際に行ってみると、保守員たちは古い立坑の途中で足止めされていた。水位変動のせいで退路が消え、さらに古い自動封鎖が作動していたのだ。
「助けに来ました!」
セラが声を張る。
閉じ込められていたのは全員成人の作業員で、完全に疲弊していた。
俺たちは戦闘より救助優先で動く。
エルフィーが封鎖弁を破り、クロハが保守路の抜け道を通し、セラが消耗した作業員へ治療を回す。リシェルは教会式の封印解除で一番危ない扉を開けた。
かなり綺麗に連携した。
全員を地上近くまで戻し切った時、作業員の一人が震えた声で言った。
「奥の立坑には近づくな。あそこ、夜になると誰もいないはずの保守灯が点く」
北隔離立坑だ。
しかも最近まで人の気配があったらしい。
指名依頼の皮を被ったこの救助任務は、そのまま門前の資格試験みたいなものだった。
俺たちが危ない場所で誰を優先するか。
情報を抱えたままでも、目の前の人間を見捨てないか。
たぶん、そこを見られていた。
少なくとも副支部長とリシェルは、帰還後の俺たちを見る目を少しだけ変えた。




