第34話 門守りの残機は、俺よりエルフィーを強敵だと認識していた
水門の奥から出てきたのは、人型に近い古い守機だった。
蜘蛛とも巨兵とも違う。
細身の金属外装に、水路用らしい滑り止めの脚部。だが両腕は完全に戦闘用で、刃のような保守具が畳まれている。
「またこういうのかよ」
「ユウト、来る!」
エルフィーの声で横へ飛ぶ。
次の瞬間、守機の一撃がさっきまでいた足場を真っ二つにした。
速い。
しかも視線が俺に来ない。
守機は最初からエルフィーを主目標にしていた。
「強敵認定されてるわね」
「嬉しくない!」
でも、確かに一番正しい判断だ。
今の前衛力なら、エルフィーが軸だ。
俺は危機察知と索敵で動線を読む。
守機の思考は機械的だが、その分パターンもある。
【主目標の戦闘能力を高評価】
【補助対象の排除を優先すると推測します】
つまり次はセラかクロハを狙う。
「セラ、下がるな! その場!」
セラが一歩止まる。
そこへ守機が飛ぶ。
読めた。
俺は横から短剣を叩き込み、守機の軌道をほんの少しだけずらす。十分だ。エルフィーの突きが胸部の継ぎ目を正確に貫いた。
金属音。
火花。
それでも止まらない。
「しぶといわね!」
「でも中枢はそこです!」
セラの光が傷口へ流れ込み、内部回路が露出する。
クロハが床を滑り、そこへ旧路鍵片をそのまま差し込んだ。
「保守規格が近いなら、逆に噛む!」
守機の動きが一瞬止まる。
その一瞬を、エルフィーは逃さなかった。
全身を乗せた一閃が胸部を裂く。
守機はよろめき、最後に俺の方を見た。
たぶん、渡界者反応か何かを読んだんだろう。
でももう遅い。
俺は露出した中枢へ短剣を押し込み、セラの浄化光と一緒にねじ込んだ。
守機は沈黙した。
【門守り残機を撃破しました】
【経験値を獲得しました】
【レベルが上昇しました】
【レベル14→16】
「……勝った」
息を吐く。
残骸の中心には、青い印章核が残っていた。
【監理中枢印の代替核を取得しました】
経路符。
断片二つ。
代替監理印。
帰るための条件が、とうとう現実の手触りになってきた。




