第30話 戻るための鍵は一つじゃなくて、しかも誰かが順番に集めていた
監理塔の制御室には、まだ生きている記録晶板がひとつだけ残っていた。
帰路環第二片を近づけると、青白い文字が順に浮かぶ。
『開門条件』
『一 帰路環本体』
『二 外環経路符』
『三 監理中枢印』
『四 渡界者共鳴』
「四つ?」
セラが読み上げる。
「しかも最後のやつ、どう考えても俺だな」
渡界者。異世界から来た人間。
それに該当するのはこの場だと俺しかいない。
「つまりユウトさん抜きでは開かない」
「逆に言うと、俺がいるだけでも開かない」
必要なのは帰路環本体、経路符、監理印。
今あるのは断片二つだけ。
しかも記録の後半には、さらに面倒な一文が残っていた。
『近年、未承認者による順次回収痕跡あり』
誰かがすでに順番に集めていた。
「兄貴分だ」
クロハが即答する。
「たぶん経路符までは触ってる」
その根拠は、塔の下層に残されていた小さな刻印だった。
地図庫と同じ三本傷。その横に、今度は矢印と数字だけがある。
『北水路 三』
「三つ目の鍵の場所か」
「もしくは、三番保守区に進んだって意味」
どちらにせよ、ハザマはここまで来ている。
そしてたぶん、必要な鍵の種類も把握していた。
エルフィーが記録を写しながら言う。
「誰かが順番に集めていたのがハザマだけならまだいいのだけど」
「灰外套の連中も同じ情報を追ってる可能性が高いですね」
セラの言葉に、部屋が少しだけ冷える。
帰り道は見えてきた。
でも、それは“俺たちだけの秘密の冒険”じゃなくなったということでもある。
戻るための鍵は一つじゃない。
しかもその順番まで、もう誰かに読まれている。
なら、次の一手を誤ると、本当に先を取られる。




