第28話 深路標の初遠征会議は、思ったよりちゃんとパーティらしかった
翌晩、俺たちは宿の二階を借りて正式な遠征会議をした。
ちゃんと机がある。
ちゃんと地図がある。
ちゃんと予算を書いた紙まである。
「なんか急にパーティっぽいな」
「今さら何言ってるの」
エルフィーに即座に返される。
でも本当にそう思った。
ここまでは、巻き込まれながら前へ出て、そのたび皆で何とかしてきた感じが強い。今回は違う。最初から四層へ行くと決めて、そのための準備をしている。
セラが筆を持って、必要物資を書き出していく。
「浄化触媒、治療薬、導光石、保存食。あと、水路対策で防湿布」
「有能」
「会計もつけます」
「もっと有能」
クロハは窓辺で足を組みながら言う。
「私は先行偵察と裏路確認。それと、兄貴分の印探し」
「危なかったらすぐ戻れよ」
「誰に向かって言ってるの」
「危ないところへ真っ先に突っ込む人に」
するとエルフィーとクロハが同時にこっちを見た。
「いや、お前もだろ」
「あなたもです」
二人分まとめて返ってきた。
否定しづらい。
会議は予想以上にちゃんと進んだ。
四層への正規ルート。
旧保守路へ入る場合の退避手順。
帰路環断片は常に二重保管。
誰か一人が持ち歩きすぎない。
それを決めているだけなのに、妙に安心感がある。
「俺、一人だったら絶対どこかで雑に突っ込んで終わってたな」
ぽろっと言うと、セラが小さく笑った。
「だからパーティなんですよ」
エルフィーも頷く。
「リーダーが全部背負わないために組むのよ」
クロハは肩をすくめた。
「ついでに、外部協力者が勝手に死なないためにもね」
「まだ外部協力者を名乗るのか」
「正式加入って言うと、ちょっと照れるから」
軽口ばかりだ。
でもその軽さが、今日は妙にありがたかった。
深路標の初遠征会議は、思ったよりずっとちゃんとパーティらしかった。
そしてたぶん、こういう夜があるから、俺たちは次の危ない場所へも行ける。




