第27話 保守路の追跡戦で、俺たちは門を狙う別口の連中に気づく
襲撃は、帰り道で来た。
ギルド裏の通路から外れた瞬間、俺の危機察知が強く鳴る。
【複数の敵意を検知しました】
【上方、右路地、背後です】
「来る!」
声を上げると同時に、屋根の上から黒い影が降った。
灰色の外套。
顔を隠す布。
迷宮都市の正規探索者じゃない。裏で動く回収屋崩れか、盗掘専門の連中だ。
「断片だけ置いていけ!」
分かりやすい。
エルフィーが即座に前へ出て一人を受け、セラが光弾で後方を牽制する。クロハは逆に上へ飛び、屋根側の二人へ向かった。
俺は布包みを懐へ押し込み、右路地から来た短剣持ちをいなす。
動きは悪くない。
でも、命を懸けた正面戦じゃない。奪って逃げるための動きだ。
「誰の指示だ!」
俺が問うと、相手は黙ったまま煙玉を投げる。
視界が潰れる。
だが、今は索敵がある。
俺は煙の中へ踏み込み、荷重歩法で足音を殺したまま横へ回る。逃げる気配がひとつ、上へ飛んだ。
「クロハ、上!」
「見えてる!」
屋根上で金属音が弾ける。
クロハが一人を蹴り落とし、もう一人の首元へ刃を当てた。
結局、二人逃げ、一人倒し、一人拘束した。
捕まえた男は完全に下っ端だったが、それでも吐いた言葉が大きかった。
「門は都市に渡せって言われてるだけだ……!」
「都市の誰に?」
「知らねえよ……上の倉庫筋だ……!」
上の倉庫筋。
ギルドか、教会か、あるいは都市管理局の旧設備保管担当か。いずれにせよ、俺たち以外にも帰路環を集めている連中がいるのは確定した。
クロハが顔をしかめる。
「兄貴分だけを追ってるつもりだったのに、思ったより争奪戦だね」
「むしろ今まで争奪戦になってなかったのが不思議なくらいだ」
エルフィーが剣を納めながら言う。
「次からは“四層へ行く”前提の動きじゃなく、“誰かに先を取られる”前提で考えた方がいいわ」
その通りだ。
帰り道を探すだけの話じゃなくなってきた。
門を巡って、複数の大人がもう動いている。
なら、俺たちも少しだけ本気の速度に上げるしかない。




