第26話 正式昇格の祝杯のはずが、帰路環の断片がまた俺のところへ来た
四層暫定入域許可の祝いは、ギルド食堂の安い果実酒だった。
でも、今の俺たちにはそれで十分だった。
「乾杯」
セラの声で杯が鳴る。
正式にパーティとして次へ進める。
それだけで、少し胸が軽かった。
「リーダー、今日は変なもの拾わないでよ」
エルフィーが言う。
「食堂では無理だろ」
そう返した五分後に拾った。
正確には、調査任務の報酬に混ざっていた壊れた金属輪だ。
現場で拾われた“よく分からない古物”として雑に箱へ入れられていた。
俺が触れた瞬間、手のひらが熱を持つ。
【帰路環第二片を検知しました】
【既存鍵片との共鳴率:高】
やめてくれ。
本当に食堂で来た。
「……どうしたのですか?」
セラが気づく。
俺は無言で金属輪を机へ置いた。
輪といっても完全な円じゃない。欠けた弧の一部みたいな形で、表面には旧保守路と同じ紋様が走っている。
クロハが一瞬で酔いを飛ばした顔になった。
「本物じゃん」
「そう言われると全然嬉しくないな」
「でも、これで兄貴分が追ってたものと線がつながった」
エルフィーはすぐ周囲を見回し、俺たちの席から少し離れた冒険者たちがこちらを見ていないことを確認する。
「今ここで長く話すのはまずいわ」
「ですよね」
セラが金属輪を布で包む。
その仕草が妙に慣れてきているのが怖い。
副支部長へ最低限の報告だけ入れると、あの人は本当に嫌そうな顔で言った。
「どうしてお前たちは、普通の護衛依頼からも厄介なものを引くんだ」
「俺が聞きたいです」
だが、報告を受けた副支部長は輪を没収しなかった。
「保管はお前たちでしろ。ただし、次に何か起きたら即共有だ」
かなり譲歩してくれている。
たぶん、あの人も分かっているのだ。
これを都市の上の方へそのまま渡したら、たぶん綺麗に消える。
祝杯のはずの夜は、結局また地図と布包みを囲んで終わった。
でも、帰路環の断片が二つに増えたことで、俺たちの進む理由も前よりずっとはっきりした。




