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第5話 知らされるルールと、受け継がれる護り

 私は準備ブースと呼ばれる個室へと案内された。

 中央には球状のポッド、その隣には小指の先ほどのサイズの機体が静かに置かれている。


(……え、これ、操作するんじゃないの?)


 不安になっていると、担当スタッフの男性がにこやかに説明を始めた。


「湊ほのかさんですね。こちらが今回あなたが乗り込む機体、ライラック・ゼロです」


「の、乗り込むって……?」


「はい。カスタムモードを選択された方は、最新のミクロナイズ技術により、ご本人の身体を現実のサイズから約1000分の1サイズに縮小し、実機に搭乗して現実の特設コースを走行していただきます」


「えっ……!」


 私の顔が一気に青ざめるのを見て、スタッフは穏やかな笑みのまま続けた。


「ご安心ください。大会規約に基づき、スタート時点とゴール時点の2箇所で、ご本人の肉体・精神の完全バックアップを保存します。万が一の事故が発生しても、復元は可能です」


(なら……大丈夫……だよね)


 そう思いかけた瞬間、準備ブースの扉が開き、両親と弟が駆け込んできた。


「ほのか!」


「ほの姉!」


「お父さん、お母さん、蓮くん……!」


 私は驚いて振り返る。

 父と母の手には、それぞれ淡く光るクリスタルが握られていた。


「これを持っていきなさい」


 父が私に、青みがかったクリスタルを手渡す。


「これは俺が若い頃レースに出てた時、ずっと持ってた護りの結晶だ。俺の守護霊の力を込めてある。小さくなったら、機体のコックピットの横にホルダーがある。それにしっかり取り付けろ。絶対だぞ」


「う、うん!」


 次に母が、淡いピンクの優しい光を湛えたクリスタルを差し出した。


「こっちはお母さんの守護霊の力。傷を癒して、気持ちを落ち着かせてくれるの。小さくなったら、一緒にそれもホルダーにセットして。必ず守ってくれるから」


「ありがとう、お母さん」


 そして、少しうつむき気味だった弟・蓮が前に出た。


「ほの姉……ごめん。こんなことになっちゃって」


「蓮……」


「でも、ほの姉ならきっとできる。俺も普段の画面の操作と、リアル機体じゃ全然感覚が違うって聞いたことあるんだ。操作の反応も視界の距離感も、体感速度も全然別物。でも、ほの姉ならきっとやれる。だって、いつも宇宙ステージで最速だったじゃん! だから……信じてるから」


 胸がじんと熱くなる。


「ありがとう、蓮。すごく勇気出た」


 私は弟の頭をぐしゃぐしゃと撫で、父が私の肩を叩いた。


「大丈夫だ。お前なら絶対やれる」


 母もそっと私を抱きしめた。


「行ってらっしゃい、ほのか」


「……うん!」


 私は涙がこぼれそうになりながらも頷いた。

 スタッフの呼びかけを受け、意を決してポッドの中へと入る。


 シートに座り、固定ベルトを締めると、目の前のディスプレイに自分の名前と機体名、ライラック・ゼロが表示される。

 その下にはAIによるリアルタイムのコースプレビュー映像も流れていた。


「それと、湊ほのかさん」


 スタッフがディスプレイ越しに説明を続ける。


「ミクロナイズ完了後、このポッドはそのまま自動で移動し、コース内に停められているあなたの機体のコックピット近くまで運ばれます。そしてポッドの扉が開くと、目の前に機体がありますので、そこから乗り込んでください」


「わ、わかりました」


(命の危険はない。スタートとゴールの2箇所でバックアップも取るし、お父さんとお母さんのお守りもある。湊も信じてくれた。なら、やれる。やるしかない!)


 そう自分に言い聞かせ、ポッド内の光が満ちていく。


「それでは、ミクロナイズを開始します」


 スタッフの声と共に、私は全身がふわりと浮き上がるような感覚に包まれた。

 視界が淡い光に覆われ、世界がぼやけていく。


(これが……ミクロ化……)


 意識が遠のくと同時に、感覚が消えていった。


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