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ワールド・ガイア  作者: 水野青色
44/281

44~運営さんはお仕事だ~

いつもお読みいただきありがとうございます。

居眠り女主人公、今回はお出かけしてます。

「今年は雨が少ないな」


運営さんが早朝の空を見てつぶやく。

確かに夏になっても、雨が降ったかなんて、片手で数えられるくらいの記憶だ。

しかも昼間には降らないからか、暑さが厳しい。

朝方は何となく湿っている空気がするときもあるけれど、どうなのかな。

夜にふっているようにはあまり思えない。

この家や拠点は、水不足は起こらないけれども、まだ周りは水不足で、野菜が高いのだそう。

拠点で育てている野菜持ってくればいいから、いつもみずみずしい新鮮なもの食べているけどね。


「アイリーン、少々、上に戻ってくるので、しばらくいなくなるぞ」

「そうなの?システムを見てくるの?」


確かシステム管理だって言ってたしな。


「一度見ないといけないようだ。ほかのワールドでもどうなっているかはわからないしな」

「そうだよね。雨が降らないって大変なことだよね」


水は生きていくうえで当然なくてはいけないものだ。

それはどの世界の生物でも同じだよね。


「いってらっしゃい」

「うむ」


運営さんの姿が消える。

というか、抜け殻だけ残されたというのが正しいのか。

シツジローくんに部屋に連れ帰るように言う。

しばらくとはどれくらいだろうか。

いつも一緒にいたから、いないと少し寂しい気がする。

でも考えてみたら、地球ではずっと一人暮らしだったのだから、今はメイちゃんやシツジローくんがいるだけでもさみしくはない。

でもやっぱり少し寂しいかな。


メイちゃんが朝食の用意を始めたころに、なぜかサカイさんが来る。

草むしりをして、ご飯を食べて出勤だ。

何を当たり前のように毎日来るのだろうか。


「あれ?今日はデュース師匠はいらっしゃらないのですね」


相変わらずのがつがつしているの朝食時、不意にサカイさんが言い出した。

結構食べた後に気付くとか、遅くないか?


「用事があって出かけてる。しばらく帰ってこないわよ」

「デュース師匠も、たまには出かけるときがあるのですね。いつもは部屋にこもって何かしている感じでしたが」

「ああ・・・、仕事があるのよ。プレイヤー国の仕事は、距離があってもできるからね」

「魔道具ですか?」

「そうね」


ここに来た当初、もし仕事がどうとか聞かれてしまったら、いうことは決めてあった。

わたしはともかく、運営さんはね、この世界を見守る仕事があるからね。


「あなたもさっさと行きなさいよ」

「ごちそうさまでした。メイさん、今日もありがとうございます」

「おそまつさまでした。そろそろ生垣も、手入れが必要なんですよね」


普段はシツジローくんがやってくれているけどね


「休みにやります!」


ご飯のためだけに労働力を提供する男、サカイ・・・

メイちゃんにいいように転がされているわね。

あの生け垣は、中に意志がある子がいるから、一筋縄ではいかないけどね。


運営さんもいない。

サカイさんはいなくてもいい。

暇だ。

寝てしまってもいいのだけど、寝てしまうといつ起きられるかわからない。

毎日起きているほうが正常なのだけど、どうも寝る時間があまり短くなってない気がする。


「お嬢さま、本日はどうなさいますか」

「うーん・・・そういえば、まだほかのとこっていってないよね」


どこの施設もほぼ見て回ってないや。

この国に最初に来たときは、図書館に行こうとも思っていたのに、いまだに行かない。


「王立図書館に行きたいわ」

「承知いたしました」


メイちゃんもシツジローくんもついてくるという。

まあ私ひとりじゃ無理だからね。


支度が終わって、図書館への道。

ギルドや役所がある場所へと同じような道だ。

公共の建物はみなこの方面にあるのだという。


図書館はひときわ大きな建物だった。

そういえば、ゲームでもこんな大きな建てものだったな。


ゲームの中の王都の図書館は、エルフが職員をしている。

文書館などもだ。

緑の知恵者と呼ばれる彼らだからこそなのだろう。


中には自由に出入りができる。

本の閲覧も自由だ。

盗難防止の魔法がかけてあるので、外には出せない。


わたしたちプレイヤーは、というよりゲーム内では、本を手に取って、パラパラとめくるだけで、スキルや魔法が手に入る本があった。

それを伸ばすのは本人次第だ。

全部基本の魔法やスキルは取っているから、もう見ることなんてないけど、見たことにないものはたくさんあるはずだ。

この国の歴史とかも楽しそうだ。

識字率はそんなに高くないはずなのに、製本技術は発達しているようだし、壁だけでなく、本棚にはぎっしりと本が並んでいる。


「どれがいいかな」


人がまばらな図書館内では、静かだ。

一日本を読むのもいいかもしれないけど寝そうだな。

地球にいたころは、本なんてほとんど読まなかったな。

資格試験の本は読んだか。

仕事仕事で、娯楽がゲームだったなあ。


「こんにちは、何かお探しですか」


ふいに話しかけられて、そちらを見る。

エメラルドグリーンの髪の毛、銀色の瞳、真っ白な肌の背の高い青年だ。

服装が図書階位の職員の服装だった。


「えろ・・・ふ?」


わたしはゲームの中のキャラクターに似た、その図書館職員の顔を見て驚いた。

確か、図書館に行くと、必ず話しかけてくるNPCが、エロルフという名前だった。

なぜかいつも持っている本が、女性の水着の本だったので、私はそのNPCのことは、エロフと呼んでいた。

そっくりだ。


「どなたでしょうか、そんな名前ではありませんが」


そりゃそうだよね。

あれはゲームの世界だ。


「知り合いに似てたので、すみません」


違うとわかっているけど、つい口に出てしまう。

考えてみたら、この王都はゲームの中でだって来たことがあるのだから。

何年たっているのかわからない世界だけど。


「それで・・・本をお探しでしたか?」

「あ・・・そうだった。歴史の本とかないかなと思いまして。伝承とか」

「それならこちらです」


連れてこられた本棚は、この星の伝承がたくさん並んでいた。

お礼を言って、選び始める。

中でしか読めないとはいえ、複製魔法かければ持ち出せるんだよね。

犯罪だからやらないよ?


本を一冊とって椅子に座って読み始める。

その間は、メイちゃんもシツジローくんも外に出て、家のことをやるらしい。

昼と夕方迎えに来るという。


寝なければ夕方になるまでには伝承などは読めるだろうな。

なかなか面白いし。


図書館の静かな時間の中、ページをめくる音だけが聞こえて、一日が終わる。

たまにはこういう日もいいな。

でも早く運営さんには帰ってきてほしいな。





毎週水曜日更新しています。今回はいつも通りの長さです。

まだまだ続きます。

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