43~side :サカイ~
いつもお読みいただきありがとうございます。
今回は、寝坊助女主人公のお話ではなく、ブルーム=サカイの話です。
私の名前はブルーム=サカイ。
先祖にプレイヤーであるスーベニア・サカイを持つ。
とはいえ、スーベニア・サカイには、血族としてつながっているわけではない。
スーベニア・サカイの養子となった子供が先祖だ。
プレイヤーというのは、この星の、どこかにあるという、プレイヤー国からやってきたもので、その存在は、英雄とも魔王ともいわれている。
伝わる話によれば、国を一夜で滅ぼしただの、魔の森を蹂躙しただのという、荒唐無稽なことが多いからだ。
そんな存在の一人が、スーベニア・サカイだ。
彼は、伝え聞くところによると、とても騒がしい人物だったようだが、市井に溶け込み、この国に様々な魔道具をもたらしてくれたそうだ。
だがある日、先祖である養子にした子供が、神のもとへ召したのを見届けた後、旅に出たという。
そんな彼の姿は、若いままで変わらなかったという。
そんな偉大な先祖を持つ私にも、出会いがあった。
偉大なプレイヤー国の住人である、師匠との出会いだ。
師匠は、アイリーン・プラム・シュガーという、少女だ。
初めて会ったのは、王都中央部の、冒険者ギルドの、ギルドマスターの執務室だ。
このギルドのギルドマスターは、私より年上なのだが妹の夫、つまり義弟だ。
書類仕事が苦手で、ギルドマスターがやらないといけない書類仕事は、私が一切合切になっている。
そんな日々のある日、王都中央部の冒険者ギルドに、プレイヤーが素材を売りに来たという。
身分証も確認し、本物だと、ギルドのカウンター嬢からの連絡があった。
午後に素材の代金を取りに来るという話だが、その日は結局会えなかった。
彼女に会えたのは、それから数日たった時だった。
今度は依頼に来たという。
ギルドマスターが直接出向くというので、会ってみたいと頼んだ。
ギルドマスターが、執務室に彼女を連れてきてくれたのだ。
入ってきたのは4人。
一人はあどけなさの残る少女。一人は全身黒い衣装をまとった青年。あとの二人は、執事服とメイド服の成人男女だ。
ソファに促され、少女と黒服の青年が座る。執事とメイドは後ろに控えている。
この四人が、プレイヤーなのだろう。
「依頼を出したいとか?何を頼みたいのだ」
「スライムを100匹ほど、生け捕りで」
ギルドマスターの問いかけに少女が答える。
「は?」
思わず声が出てしまった。
スライム?
プレイヤーがスライム生け捕りの依頼?
「あ、失礼しました。名乗るのが遅れて申し訳ありません。王都中央冒険者ギルドの副ギルドマスターをしていますブルーム=サカイと申します」
まずは自己紹介だ。
「実はわたくし、プレイヤーの子孫なのですよ。何百年か前の先祖が、プレイヤーの養子になりまして、それ以来、プレイヤーの名前を使わせていただいております」
この少女が先祖と関係があるとは思わなかったが、同じプレイヤーだ。
興味があった。
「そのためプレイヤーが来たと聞いて気になりまして、マスターによんでもらったのです」
そのあと、ちょっとおどけて男色家みたいなことを言ったら、微妙な肯定されたが、きちんとギルドマスターが義弟だということは言っておいた。
でも、一瞬驚いた顔をするのは、面白かった。
そのあと、依頼であるスライム100匹が、錬金術のための素材だという話を聞き、しかも、簡単なことだからと、低級冒険者用に依頼をしてくれるという。
ありがたい話だ。
しかも依頼料が銀貨5枚。
低級冒険者には破格だった。
「またきてくださいね」
ほんとに来てください。
興味がありますから。
わたしの願いがかなったのは、依頼完了最終日である一週間後だった。
ギルドマスターの名前は覚えてないようだったが、私の名前は覚えてくれたらしい。
倉庫に連れていく。
ネットにうごめく100匹以上のスライム。
引換証を渡し、書類をいくつか書いてもらって、完了。
だけどこれで終わりは嫌だった。
憧れのプレイヤーだ。
しかも、錬金をするという。
「図図しいかもしれませんが、作っているところを見せていただけませんでしょうか」
「いいですよ、うちに招待しましょう」
やった。
お礼を言うと、スライムの核を取り出すとこをから手伝えという。
もちろん半休を取ったので、それに同意した。
馬車は驚くほど揺れがなかった。
これがプレイヤーの馬車なのか・・・
アイリーンさんの家につく。
木の囲いに囲まれて、中はよく見えない。
その生垣も、何かがうごめいているようだ。
なんだここは・・・
部屋に入ると、昼食になった。あんなおいしいものは初めて食べた。
実家にいたころの料理人よりもおいしいじゃないか。
結婚していなければ、このメイドのメイさんを嫁に欲しいくらいだった。
食休みの時に、グローブを渡された。
スライムグローブ。
知らないアイテムだ。
スライムの核を取り出すためのグローブだという。
「この世界には失われたものが多いのでしょうか」
「プレイヤーの国には当たり前に存在するけどね」
そうか。
これは古代魔法具なのだ。
今では技術すら失われている代物なのだ。
スライムの核を取り出す作業は、なかなか難しかった。
アイリーンさんが簡単にやっていたので、すぐにできるかと思ったが、そうでもなかった。
やっとコツを覚えたころには、スライムが残っていなかった。
いや、まだ居る?
「この池のとこにいるスライムは」
「それは私の使役獣よ」
スライムも使役しているのか。
ただの錬金術師ではないらしい。
抜け殻のスライムはどうするのかと思ったら、池のスライムとくっついていた。
すごいな、スライム。
スライム核を持って、部屋に入る、
錬金部屋だという。
見たことのある、しかし使い方のわからない道具が並べられていた。
手伝い、スライム核石を作る。
師匠である、アイリーンさんは、どうやら、でこぼこの核石をきれいに研磨するのは苦手らしく、それも任された。
ものすごく真剣に磨き、きれいな核石ができた。
「それはあげるわ。初めて自分で作った核石だし、何かに使えるでしょ」
まさか、錬金の技術を手伝わせていただけただけではなく、作ったものももらうことができるなんて・・・
使い方も教えてくれた。
「こんなすごいものだなんて・・・」
「なんだと思っていたの」
「プレイヤーのみが作れるものだと…」
なのにあっさりと使い方を教えてくれた。
魔法陣はまだまだ勉強不足だからよくわからないが、わたしもまた、錬金術師になれるのだ。
その感動を、夕飯時に師匠に語る。
いつの日か、プレイヤー国に行くという夢も。
きっと、それが夢じゃなくなる日も来るかもしれない。
それからは毎日師匠の家に出向いた。
ポーションづくりを教えていただけている。
師匠を師匠と呼ぶと、弟子を取った覚えはないといわれるが、この方は師匠だ。
わたしの中ではそう決めた。
わたしが作るポーションは、初級ポーションよりも性能が悪い。
師匠いわく、ごみポーションだ。
それでも偽ポーションよりはましな性能なので、新人訓練用にギルドで扱わせていただくことにした。
師匠はよく眠る方のようで、寝ている日は家に入れてもらえない。
ある日、師匠の執事であるシツジローさんが来て、師匠からの課題を言い渡された。
材料であるいやし草の採取だ。
課題。
師匠がわたしを認めてくれたのだろう。
すぐに長期休みを取り、採取に向かう。
この時期は乾いているうえに、王都中央部ではなかなかいやし草の採取はできない。
東に向かう。
東のはて。
そびえたつ崖のもとにある森。
森の中も水気が少なく、さらに深い。
わたし自身は戦闘能力がほぼないために、迷ってしまっていたら、冒険者たちが探しに来てくれた。
ギルドマスターが依頼してきたという。
ありがたい。
探索しつつ戻ると、洞窟があり、その洞窟にすんでいるのだろう魔獣と戦闘になり、勝利。しばらくそこを拠点としていやし草を探し、帰った。
早朝の師匠の家の庭は、なんだかうっそうとして草が生い茂っていた。
師匠が気付いてくれて、入浴をすすめてくれた。
メイドのメイさんが、服などを用意してくださり、少ししたら、ガイアード師匠とシツジローさんも来て、朝食となった。
うまい!
久しぶりだ。
探索中はろくに食べていなかった。
食べ終えて、師匠にいやし草探索のことを語る。
麻袋一つ程度じゃ、ダメポーションしかできないらしい。
わたしの腕ではなのだけども。
それよりも驚くことを聞いた。
「いやし草、庭に生えているわよ。育ててみたの」
は?
あのうっそうと茂っている、雑草かと思ったものはいやし草だという。
自由に使っていいといわれたが、もう、この日は気力がなかった。
師匠・・・ひどいです・・・
夜にギルドマスターと師匠の家に向かうと、夕食をごちそうになった。
みるくあいすというものもだ。
夏の暑さになんとあうのだろう。
その後、報酬金貨30枚を渡したのだけれども、受けとってもらえず、それよりも、先祖サカイの錬金道具がみたいといわれた。
すぐに承諾だ。
数々の錬金道具を、師匠に見せれば使い方もわかるだろう。
夜に実家に使いを出した。
家を出ている身としては、勝手に許可をだしたことは謝罪をし、家の掃除や出迎えの準備をお願いする。
翌日は、昼過ぎに師匠を実家に招いた。
貴族街だというのは嫌がられたが、自分は陞爵しないということは伝えておいた。
そんな身分よりも、師匠のそばがいい。
錬金術師になるのだ。
わたしのステータスに、錬金術師という職種名がついていたからだ。
それはサカイ家にとっては、とても名誉なことだ。
貴族街の家には、本来ならこの日はいないはずの、当主がいた。
当主は、祖父、スーベニア・サカイ。
先祖、サカイの名前は、代々の当主が継ぐのだ。
師匠はその名前を聞き、フレンドプレイヤーだといった。
どうやら、師匠は先祖である、スーベニア・サカイと友人らしかった。
故郷での友人で、どこかに旅立ったというスーベニア・サカイを懐かしんでいる様子だ。
冒険もしたことがあるという。
師匠・・・いくつなのですか・・・
「すごい方を師事したな、ブルーム」
当主である祖父が興奮している。
しかも、自ら倉庫を案内するという。
どこかいってくれないかな・・・
師匠を案内した倉庫は、もともとはスーベニア・サカイの家だった。
その奥の部屋は、錬金道具が置いてある。
わからない、大型の錬金道具。
「これは空の向こう、宇宙を映し出す魔道具です」
すぐに師匠は答えをくれた。
しかも石に魔力を流せば使えるという。
そして次の課題が出た。
「サカイさん、スライム核石の作り方はわかるわよね。自分で作りなさい」
ごみポーションを作り出すわたしにとって、一番最初に教えられたスライム核石は、難易度が高い。
しかし、師匠に弟子と認められたからには、やり遂げてみせる。
その日の夕飯は、翌朝の師匠の家の草むしりでと引き換えだった。
師匠にまた夜に来るように言われた。
草むしりを終え、朝食をごちそうになり、出勤。
仕事が滞っており、少々遅くなったが、師匠の家による。
夕食をいただいた後、思いもかけないものをいただいた。
スライムグローブだ。
スライム核を引き抜くためのグローブ。
しかも、師匠のお手製だった。
使用回数が300。
師匠に認められたと思うと、うれしくて仕方ない。
頑張ってスライムを探し、必ずやスライム核石を作って見せよう。
そう誓いながら、師匠の家を後にした。
お読みいただき、ありがとうございました。今回は少々長めです。
まだまだ続きます。
毎週水曜日更新、頑張ろうと思います。




