42~サカイ家その2~
いつもお読みいただきありがとうございます。
寝坊助女主人公、前回に引き続き、サカイさんの家に行ってます。
スーベニア・サカイ侯爵様にいざなわれて、お屋敷の裏手にある倉庫にいる。
どうやら倉庫はもともとサカイがこの世界で使っていた家のようだ。
見た目が私たちプレイヤーが使う家って感じがする。
中はきちんと掃除がされているようだ。
各部屋にいろいろなものが置いてある。
ここに置いてあるものは、サカイ家の人間でないと持ち出せないという。
スーベニア・サカイが、そのように魔法をかけ、さらに子孫にその魔法のやり方だけは教えたらしい。
盗難防止の一種だよね。
「この奥にあるのが、先祖スーベニア・サカイの残していった錬金道具です」
一番奥の部屋だった。
ふすま戸だ。
すっと開くと、錬金道具がたくさん並んでいた。
鑑定眼でよく見ると全部コピー品だ。
本物は拠点にあるのだろうか。
そもそも持って行ったのだろうな、次のワールドに。
「我が家には錬金をできるものがおりませぬので、すべてここに収めてあります」
「でも、サカイさん・・・あー・・・ブルさん?が使えるようになったし」
これとあれと、と、指し示す。
基本のポーション作りようの錬金道具だ。
サカイさんの分はコピーしたけど、いらないかな。
「師匠、私の名前はブルームです」
「ん?」
人の名前は覚えられないんだってば。
「ブルでもいいです」
にらみつけたらすぐ肯定した。最初から反論すんな。
「私は市井にすみますから、ここのは持ち出せませんよ、師匠」
「あ、そう」
「ほかの家族にも錬金術を教えてくださるといいんですが」
「断る」
それよりも、大きくて運べない錬金道具がどれか、よ。
見たところ、炉いがいは、大きなものなくない?
炉も使われていないようだけど。
私の表情を察してか、スーベニア・サカイ侯爵様が、さらに奥の扉に促してくれた。
奥の部屋は真ん中に大きな錬金道具が置いてあるだけだった。
いや、これは錬金道具じゃない。
魔道具だ。
「こちらが使い方のわからないものです」
そりゃそうだろうな。
これは家庭版のプラネタリウム。
もちろんゲームの中にもあったし。
スライム核石が原料だ。
石を作って入れないとだめな奴だな。
「これは空の向こう、宇宙を映し出す魔道具です」
「ほう?」
「こちらに使われている石に魔力を流すと、部屋一面にその星空が映し出されます」
「今は使えないのですか」
「石が壊れてますから。それが直れば使うことができますよ」
「なおせませんか」
うーん・・・
直してもいいけど、気乗りしないな。
「サカイさん、スライム核石の作り方はわかるわよね」
「はい」
「自分で直しなさい」
師匠らしく課題を出しておこう。
このスライム核石は、電気系統の性質をもつものだ。
それに対応した石を作らないといけない。
基本はお家にあるものでやってみてもらいたいものだ。
品質も高品質じゃないと作動しないということは教えないけど。
「やってみます」
サカイさんがやる気になったようだから、見せてもらった魔道具はほっておいて、ほかのも見て回る。
全部、使えなくなっているのは、スライム核石がだめだからだった。
長い年月も経てば当たり前だよね。
夕方も遅くなってきたので、サカイ家を辞す。
帰りは馬車に乗せられるところだったけど、あんな馬車に乗ったら、こちらに大ダメージだよ。
歩きで帰ろう。
馬車に乗りたければ、シツジローくんが家から持ってきてくれるし。
「・・・で、なぜ、あなたもこの家から出ているの」
サカイさんが、一緒に帰路についている。
「宿舎に住んでますので」
宿舎のある邦楽はこちらなんだろうか。
どう見ても私の家の方向なんだけどね。
「まさかご飯食べて変える気じゃ?」
「師匠、お願いします。メイさんの料理を食べたら、ほかのがあまりおいしくないんです」
「メイちゃんに許可もらいなさい」
うれしそうな顔でサカイさんはメイちゃんに向く。
「明日の早朝、庭の草むしりと池に掃除をしてくださるなら」
厳しいわ、メイちゃん。
それでもいいと、サカイさんはごはん食べる気満々だ。
途中で材料を買うために、シツジローくんとメイちゃんが私たちと別れ、私は、運営さんとサカイさんを伴い、というか、運営さんに家まで連れて行ってもらう。
迷ってないよ・・・
ちょっと道が複雑なだけだよ・・・
ちょっと遅かったけど、お夕飯は、イノシシの肉が中心。
いつになったらコメに出会えるのかな。
おコメが食べたいです。
おなか一杯になったらおやすみです。
ああ、ねむい・・・
「そうだ、明日、早朝に来るのでしょ?そのあとは?」
「ギルドで仕事です」
「そう。夕方、仕事が終わったら、うちに来て。渡したいものがあるから」
「はい!」
なんだか喜んでるな。
まあいいや。
さっさとねよう。
「おやすみなさい」
ベッドは私の癒し空間だわ。
翌日は、いつものことだけど、お昼近くに起きた。
ちょっと寝すぎではないな。
まだ眠いし。
でも、起きないといけない理由。
スライム核石を手に入れるためのアイテム、スライムグローブを作ることだ。
ゲーム内のアバターアイテム。
だけど実はプレイヤーが作ることもできる。
ただし、どうやっても劣化版なんだよね。
使用回数制限があるのだ。
裁縫スキルが必要。
そのスキルで、編み物開始。
スキル使っているから、勝手に手が動く。
そのあとは錬金術用の魔法陣にて、必要な術を施す。
でも適当。
スライムグローブ自体はいい感じにできたんだけど、術は真剣にやらなかったからか、使用回数制限が300だ。
スライムグローブ(劣化版)
製作者:アイリーン・プラム・シュガー
スライムの核を取り出すための片手手袋
使用回数:300
防御力:30
特性:スライムの粘液での融解無効
こんな感じだ。
久々に作ったな。
アバターアイテムとして、運営さんが売っていたものは使用回数∞だったから、そういうのが作れるといいのだけど、しょせんはレシピがあっても、劣化版になっちゃうんだよね。
残念だな。
時間はかなり立っていたようで、サカイさんが来た。
「こんばんは、遅くなりました」
確かに夕方というよりは、もう夜だ。
仕事が立て込んでいたらしい。
・・・ご飯の時間なんだけど、狙ってきていないよね?
夕飯を食べさせ、本題だ。
「サカイさん、スライム核を手に入れるときに使ったグローブ、覚えてる?」
「はい。そういえば、あれがないとスライムから引き抜けないのでしたね」
「あれはあげられないけど、これをあげるわ。私の作ったものよ」
作ったスライムグローブを渡す。
驚いた顔でこちらを見る。
「いいのですか!」
「使用回数は300回。それ以上は使えないから、気をつけなさい」
「あ、ありがとうございます」
ものすごく興奮している。
おっさん臭が強くなりそうだから、やめてほしいんだけど。
「ほらもう帰って。私は寝るから」
「はい!おやすみなさい」
サカイさんは元気だね。
私は疲れたよ。
ああ、眠い。
「おやすみなさい」
しばらく寝ていたいな。
今回は、短めです。
まだまだ続きます。
毎週水曜日更新、がんばりますが、次はもしかしたら遅れるかもしれません。




