31~おうちを買おうかな~
寝坊助女主人公、おきてます。最近は普通に起きられるようになったようです。
王都中央部は、結構広いです。
朝。
起きられた。
まだ眠いけど、今日の目的のためには起きなければならない。
目的の場所は朝市だ。
昨日と同じ場所で開かれるという。
なので朝から、ご飯食べずに行ってみる。
屋台がたくさん出ている。
夕方と同じで朝も新鮮な野菜と、お肉売っている場所がある。
え?
生肉売ってんの?
大丈夫なのかな?
私の目的は果物屋さんだから、お肉はいいや。
まだ牛がいっぱいあるし、シツジローくんが、家に帰るたびに、イノシシと熊の肉を持ってくる。
うちの使役獣たちは、何をそんなに暴れているのか…
あの森の魔獣がいなくなったら、生態系も崩れるかもだし、言い聞かせたのになぁ。
「売れないのかな、肉」
「売るなら、お肉屋さんかギルドではないでしょうか」
そうか。
そういえば、私も一応冒険者だった。
プレイヤー国の冒険者って、どういう扱いになってしまうのかな。
「ねえ、運営さん?私は今でも冒険者なのかな?」
「一応な。ただし、国からの強制依頼ができない、Sランクの冒険者扱いになる」
「Sランクなの?」
「本来、プレイヤーはこちらでは冒険者として扱うのが難しい。なんといってもレベルが違いすぎるからな。だから、プレイヤー国冒険者は、こちらではSランク以上になる」
そうだった。
レベルが四桁超えてる化け物扱いが、プレイヤーだった。
こちらの世界には、私たちしか来ることができないものね。
もうあの世界もないんだし。
「でも売れるんだよね?素材とか」
あまりあっても困るんだよね。
自宅の倉庫がいっぱいになってきたという話だし。
「素材などの買取はゲーム内と同じで冒険者ギルドだ」
「そうなんだ?あとで行ってみよう」
今は、果物屋さんでレモンだよ。
果物のたくさん売っている屋台がある。
新鮮だ。
「すみません」
「はい、いらっしゃい」
人のよさそうなおばさんだ。
「このリモネください」
「はいはい」
一つ買ってみる。
見た目はレモン。名前もレモンっぽい。
匂いもレモンっぽい。
問題は味だ。
ちょっとむく。
恐る恐る出かじる。
すっぱー!
レモンだ。
普通にレモンだ!
なんでリンゴが桃味なのに、レモンはレモンなのよ!
いや、これで解決だわ。
口の中痛いくらい、酸っぱい。
「す…すみません…これ全部」
口が動かない。
メイちゃんが見かねて桃リンゴジュース出してくれた。甘くておいしい。
やっと酸っぱさ緩和だ。
「大丈夫かい、おじょうさん。すっぱかったんだろ?」
「これが必要なんです。・・・ありがとうございます」
リモネを受け取る。
袋いっぱいに買って、空間に放り込む。
これで時間経過ない。
ほかの果物もいくつか買おう。
買占めはいけないよね。
まだまだ買いたいものあるし。
野菜は昨日いっぱいかっておいたけど。
「おじょうさん、あまり見ない格好だけど、この辺の子じゃないのかい?」
おばちゃん、そんなじろじろ見ないでよ。
確かにこの辺りにはいない格好だけど、プレイヤー国での冒険者の一般的な服だよ。
このローブとか。
「旅しているんです」
「そうかい。それなのにそんなに果物かって平気なのかい?」
「時間経過なしの空間魔法あるので」
「それならいいけどね。王都中央部は、珍しいものがあるだろう」
「そうですね。しばらくはここにいたいと思うので、宿に泊まってます」
「長期なら、宿より家を借りたほうが安く済まないかね?」
「家を借りる?」
賃貸物件があるのかな?
「住めなくなった者たちの借財として押さえられた家がいくつもあってね、それを貸し出しているんだよ。その家賃は、借金の返済に回されたり、余れば元の持ち主に渡されたりするんだよ」
「そうでしたか。宿の紹介所では言われませんでした」
「紹介所はそれでお金もらっているからね。賃貸物件なら役所のほうだよ」
「ありがとうございます。早速行ってみます」
いいこと聞いたわ。
こちらを中心にしたいから、宿での長期滞在をどうしようか考えてたのよね。
家を借りるか、買うか。
どちらでもいいな。
朝市でいくつか食べられるものを買って、宿へ。
マヨネーズは、後にする。
まずは買ってきたものでご飯。
おなかすいたよ。
食べ終わったら、やはり散策だよね。
長期滞在したいから、役所に行こう。
「シツジローくん、場所調べて」
「聞いておいてあります」
優秀だわ。
シツジローくんの案内で、役所へむかう。
王城を中心に、反対側にあった。
商店街や、役所などの公共施設が並ぶ。
宿などがある場所とはまた違う雰囲気だ。
地球での、学校施設みたいな建物の門前に来た。
どうやら、これが役所らしい。
「中央の建物が役所兼裁判所で、左の建物が商業ギルド、右の建物が冒険者ギルドとのことです」
なんと建物ごとに、施設が違ってた。
そういえば門から入っていく人たちは、それぞれに別れていくなぁ。
「まずは役所だね」
中央の建物だ。
入ってすぐに案内カウンターがあった。
女性が座っている。
「すみません」
「ようこそ、今日はどうされました?」
椅子に促される。
座る。
「王都に長期滞在したいので、家を借りるか買うかしたいのですが」
「ありがとうございます。それでしたら、商業ギルドに不動産を扱う部署があります」
「そうなのですね。ありがとうございます。早速行ってみます」
「お待ちください。御紹介状をお書きしますね」
ここでも紹介状が必要なんだ?
カウンターの席で待つことしばし、封書を渡された。
「素敵な家が見つかるといいですね」
「ありがとうございます」
お礼を言って、建物を出る。
今度は左の建物だ。
商業ギルド。
商業ギルドのカウンターで、紹介所を渡すと、不動産を扱うという部署まで案内された。
「ようこそいらっしゃいました。本日はどのようなものをお探しでしょうか」
椅子に座り、待っていると、胡散臭そうな笑顔の男性に声をかけられた。
不動産部署の人間らしい。
ジグ・ドレットと名乗った。
「王都に長期滞在するので、家を買うか借りるかしたいのですが」
「そうでしたか。ありがとうございます。」
予算や広さなど、具体的に話を進める。
せめて、家は小さくてもいいから、庭は広くないと、使役獣たちを連れてこられない。
「ではいくつかご紹介させていただきます。失礼ですが、お時間はありますでしょうか」
「え?」
「直接物件を見に行っていただいて、お気に召しましたら、借りていただきます」
「あ、はい」
それもそうか。
地球だって、そうだったわ。
予算内で紹介された家は四件。
どれも商店街に近い場所だった。
でも、周りの家がちかすぎるし、庭もそんなに広くない。
「・・・あとは、土地だけで、建物は注文という形で買っていただく場所となりますが」
借りるのが無理そうだから、土地を買うしかないと思っていたら、それが分かったのかジグさんが言う。
それもそうか。
土地を買って自分で建てるのもいいかな。
「見せていただけますか」
「こちらです」
商店街からも住宅街からも少し離れた場所だった。
庭が広いのがいいというからと、広い土地だけの場所に案内されたのだ。
大きな木が一本立っていた。
「ああ!まただ」
「どうしました?」
「この木は、勝手にはえてきてしまうのです。何度も切り倒したのですが…」
え?
こんな大木が、すぐにはえてくるものなの?
<これは・・・精霊の命の木だな。しかし枯れかかっている>
精霊の命の木って、確かエルフや妖精の命の源の木の一つだよね。
なんでこんなとこに?
しかも枯れかかっているって…
「どういたしますか?この土地でよろしければ、すぐに切り倒しますが」
木を中心に、結構広い。
しかも、予算内だ。
土地だけだけど。
「かいます。木は切り倒さないでください」
「よろしいのですか」
「はい。この木は必要なので」
私の頭の中には、家の形が出来上がった。
なので、この土地を買おう。
一度、商業ギルドに帰る。
ジグさんが必要な書類を出してきた。
どうやら、あの気が土地の中心になってしまっているようだ。
でも広さはある。
「本当にここでよろしいのでしょうか?」
「はい。この木を含めてこの土地を買います」
必要な書類に署名をする。
あとは、土地代と税金を払う。
この税金は毎年かかるそうだ。
一気に払うこともできるのだという。
100年分くらいで白金貨20枚くらいか…税金、高くないか?
だからこの王都中央部にはお金のある人しか住んでないのかな。
「建物のほうはいかがいたしますか?職人の紹介もしております」
「必要ないです」
そんなのはいらない。
土とか外から持ってくればいいし、木材なら拠点の木を切り倒せばいい。
スキル持ちは便利だ。
「家を建てるのですよね?」
「はい」
そのために土地を買ったのだ。
「でも職人は必要ないですか」
「こちらでどうともなりますので」
もたもたとやりたくはない。
必要書類がもらえたので、もう、こちらにも用はないかもしれない。
「あ、そうだ。家を建てた場合、それにも税金がかかるのですか?」
「土地代だけですね」
「そうでしたか。ありがとうございます」
よし。これで必要なことはすんだ。
あとは、冒険者ギルドだよね。
プレイヤーは登録できるだろうか?
冒険者としてのほうが素材買取の利率がいいのよね。
まあ、お金はあるからどうでもいいけど。
冒険者ギルドに行く。
いくつかのカウンターがあるし、この時間は静かだ。
掲示板は、余っている依頼書だけがはってある。
やはり朝一が一番混むのだろうか。
一つのカウンターに近づく。
買取専門と書いてある。
カウンターには人間の女性職員が座っていた。
「すみません、素材を買い取っていただきたいのですが」
「はい、素材買取ですね。冒険者登録書をお出しください」
持ってないよ。
身分証でいいのかな?
プレイヤーの冒険者はこれしか持ってないと思う。
「これ・・・ですかね?」
身分証を出す。
冒険者としてのレベルなどは書いてある。
驚愕な表情のカウンターの女性。
やはりプレイヤーというのは、敬遠されるのだろうか。
「プレイヤー国の方…ですか。あ、はい。こちらが冒険者登録証にもなっております」
身分証が震える手で返されてくる。
そんなに怖がらなくてもいいと思うのだけどね。
「それで・・・、どのような?」
「あ、はい。イノシシです」
最初の時に倒したイノシシだ。
なんちゃらボアだっけ。
雑魚だけど、素材としての毛皮はある。
石貨程度にはなるといいのだけど。
取り出して、カウンターに並べる。
「素材の状態を確認しますので、買取金額のお支払いは午後になりますが、よろしいでしょうか」
「はい」
カウンターの女性が、やっと普通の表情になった。
こんなザコでも気を許してくれるならいい。
「今日はこれだけです」
「ありがとうございます。では、午後になりましたら、こちらのカウンターにまたおいでください」
買取金との交換札を渡された。
これであとは、宿に戻るだけだ。
午後はシツジロー君に行ってもらえばいいや。
宿で、服をきれいにして、ベッドに横になる。
動いたなあ。
「はしたないぞ、アイリーン」
「いいでしょ、疲れたのよ」
「プレイヤーはドールと同じだから疲れにくいはずだが、君は少々おかしいのではないかな」
「失礼ね」
確かに疲れにくいかもしれないけど、普段動かないから疲れもする。
「お昼寝するから、午後の受け取りはよろしくね」
「家はどうするんだ」
「明日かな」
「そうか・・・あの木に栄養を与えてくる」
運営さんが部屋を出る。
枯れかけているって言ってたっけ。
心配なのだろう。
何度も切られたから枯れかかっているのかもしれない。
家の構想はできたから、明日のために寝よう。
朝から家づくりしにいかないとね。
「おやすみ」
お読みいただきありがとうございます。
まだまだ続きます




