第27話・薬剤師という職種
国家挙げての医薬分業推進の結果、いまやコンビニの数よりも調剤薬局の数が多いらしい。いいことなのか悪いことなのかここでは議論はしない。
調剤薬局の経営者だが、これか薬剤師資格を持っていなくとも可能。ただし、薬剤師は最低限1名は雇用しないといけない。それが管理薬剤師だ。病院が目の前にある調剤薬局はそこの病院が出す処方箋をあてにしている「門前薬局」という。
患者もできるだけ動かず近いところで早く薬をもらってさっさと帰途につきたいのは一緒だ。だから病院前には数件の門前薬局があってそれぞれしのぎを削っている。
ただし筆者のみるところ、医療従事者にもぴんきりがあって患者には絶対わからぬ案件がある。医療と経営とは結びついているようではあるが、結局は福祉ではなく、金儲けでしてあるのだ。
医療者になるにあたり、必須とはされてはいないけれども、必須なのはボランティア精神だと思う。それを重視すると経営とは相いれなくなるのもまた事実。
病院然り医院然り、調剤薬局も然り。(福祉関連施設全体もまた然り)
今回は調剤薬局の薬剤師について書いてみようかと思う。
薬剤師と職種は調剤薬局だけ見ていると医師が発行する処方箋の指示に従い調剤だけすればよいと思われがちだが、実はいろいろな職種がある。
調剤だけすればよくって楽できていいなー、の声があって私はそれをすごく残念に思う。藤原薬子のシリーズを書き始めたのは実はその理由もあるのだ。
調剤業務メイン、その調剤重視として話題にすると、病院薬剤師は調剤薬局の薬剤師を軽蔑する人がいる。実はMRにもいる。職務の内容が狭いことを軽蔑するのだ。
調剤薬局は病院のカルテが見れないまま、処方箋1枚と患者が教えてくれる情報に従って薬剤の情報提供をするだけ、と思われるからだ。事実かどうかを議論するのではなくここでは現実を書く。
調剤薬局だけしか知らぬ薬剤師は病院薬剤師にコンプレックスがあるように見受けられる。病院薬剤師は確かに職務の範囲が広い。
病棟にも行けるし必要に応じて医師や看護師に直に情報提供を受けれるし、業務範囲が調剤だけではなく、製剤や注射業務、DI病棟業務にTDM(血中濃度測定)場所によっては輸血業務を兼任することもある。
調剤薬局オンリーの職歴しかもたぬ薬剤師は(特に年配の人は) 病院出身の薬剤師に対して非常にコンプレックスをもっているといっても過言ではないのではないか、そう思うことが何回もあった。
また調剤薬局経営者の人とも筆者は何人かあっているが、無資格経営者には何も知らないで年配の調剤薬局しか知らぬ流れ者の薬剤師の言うことをうのみにして、病院薬剤師がラクしたいから、調剤薬剤師が困ることも多いと平然と言われたことがあった。
かつ病院薬剤師は調剤方法は知らないで当たり前、調剤薬局出身の薬剤師の方がいろいろな調剤方法を熟知している、という虚言を信じ込んでいる経営者もいた。いずれも経営者にそう吹き込んだ薬剤師は、薬剤師としての能力というよりも人間としての資質が疑われる人物だった。
こういう人の良い経営者は薬剤師人口かつ医療者人口が極端に少ない医療過疎地域に1つか、2つの調剤薬局しか持たずかつ雇用した薬剤師の威勢? に押されて弱気になっているのが多い。この薬剤師さんにやめられるとうちは困る、そういうわけだ。薬剤師の少ない地域にはそういう弱気経営者がいるのである。そしてそういう弱気経営者には薬剤師と名乗るのも恥ずかしいバカが管理薬剤師をしているのだ。
話題を転じて病院を定年退職して調剤薬局に流れてきたものには、プライドだけは異常に高くまわりの調和を乱す、文句だけは一人前で一体誰のために働いているのか、患者のためだろう、という基本的なことがわかってないので困ると言う苦言ももらったこともある。
私の意見は、まあどっちもどっち、というところか。どっちの職種にも長所短所がある。だが一番仕事の醍醐味を感じるのはやはり患者との触れ合い、ということだ。
薬剤の調剤にしても無言ではいかない。自分のために診察してもらい薬を出してもらい安心して治癒にあてってもらいたいからだ。私はそのことだけ思って仕事してきた、もちろん成功も失敗もある。が、どこの職場でも結構重宝がられたのは結局はどういう仕事でも誠意をこめてしてきたからに他ならぬだろう。
年取ってもなお、雇っていただけるのは非常に有難い。
職場の皆に感謝しつつ、若い時から思っていたことをちらっと書いてみた。
薬剤師の仕事は本来は皆さんが思うよりももっと豊富なもので、医師、看護師と並んで三職と言われるものなのだ。結構軽くみられるのはそれだけアホ薬剤師が多いからなのか、それとも縁のしたの力持ちに徹して黙り込むのが多いせいなのか、それはわからない。いや、わかっているがそこまで書くと反感を持たれるのでやめてここで筆を置く。




