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元悪役令嬢ですが、夫が二人になりました。どちらも私に執着しています  作者: すなな


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50/53

50_前にはいなかった

セレナが眠ったあと、アルベルトは一人で香房へ向かった。

夕食のあと、レオンから話があると言われていた。

香房の扉を開けると、昼間とは違う香りがした。

甘さの少ない、乾いた木の香りだった。


「遅くにごめん」


低い卓の向こうに座っていたレオンが顔を上げる。その前には、何枚かの書類が広げられていた。


「何か分かった?」

「少しだけ」


向かいへ座ると、レオンが一枚を抜いてアルベルトの前へ置いた。


「原料の流れを追ってもらった」


アルベルトは書類へ目を落とした。

ヴァルディアでは珍しくないが、エルグランではほとんど流通していない原料。

こちらへ戻ってから、レオンはヴァルディア側に残る取引の記録を調べさせていた。


「エルグランへ売った人が分かったの?」

「たぶんね」


レオンが一つの名前を指した。

ヴァルディアの商人だった。

アルベルトはその名前を見ても、何も思い当たらなかった。


「知ってる人?」

「いや」


レオンは答えてから、しばらくその名前を見つめた。


「だから気になってる」

「どういうこと?」

「前回、リリア・エヴァンスに毒を売った人とは違う」


アルベルトの表情が変わった。


「……覚えてるの?」

「覚えてるよ。あのときも調べたからね」


レオンはそう答えてから、ふと眉を寄せた。


「あのとき毒を売ったのは、この人じゃない」


アルベルトも改めて名前を見る。


「じゃあ、今回は別の人が動いてる?」

「今のところは、そう見える」

「前回の人は?」

「そっちも調べてもらってる。今もヴァルディアにいるのか、今回の原料に関わってないのか。それから、この二人に繋がりがないか」


アルベルトは少し考えた。


「繋がってたら?」

「同じところから動かされてる可能性もある」

「繋がってなかったら?」

「今回だけ、別の人間が動いたことになるね」


レオンはそう言って、書類を指先で軽く叩いた。

アルベルトは黙ってその名前を見つめた。


前回にも、毒はあった。

今回も、毒が使われた。

けれど、毒を売った人間は違う。


「もう少し追ってもらってる」


レオンが書類を揃えた。


「この商人が誰から原料を仕入れて、どういう経路でエルグランへ流したのか。前回の人との繋がりも含めてね」

「分かった」


アルベルトが頷いた。

ひとまず話は終わったらしい。

レオンは書類を脇へ退けると、香炉の蓋を開けた。

細く削った香木を一片入れると、乾いた木の香りの中に、少しずつ甘さが混じり始める。

アルベルトはその様子を何となく眺めていた。


「そういえば」

「何?」

「君とセレナって、面白い香りするね」


アルベルトは眉を寄せた。


「……何の話?」

「二人を見てて思った」


レオンは木箱の中から香木を選びながら続ける。


「セレナ一人のときと、君が隣にいるときで全然違う」

「だから、何が?」

「イメージする香り」

「そんなの勝手に考えてるの?」

「そうだよ」


あっさり答えられて、余計に嫌だった。


「セレナで遊ばないで」


レオンが顔を上げた。


「遊んでないよ」


アルベルトは言い返そうとして、やめた。

昨日のセレナは確かに楽しそうだった。

初めて見る香木を一つずつ手に取り、焚く前とあとの違いを比べてはレオンに質問していた。

部屋へ戻ってからも、東の香料について調べてみたいと話していたくらいだ。


「……気に入らない」


結局、出てきたのはそれだった。

レオンが目を上げる。


「何が?」

「君が」

「ひどいな」


レオンが笑った。

その顔まで気に入らない。


「帰る」

「おやすみ」

「……」


アルベルトは立ち上がって扉へ向かった。

香房を出る直前、一度だけ振り返る。


「本当に、嫌がったらやめてよ」

「やめるよ」


今度は笑わずに答えた。

アルベルトはそれを聞いてから、扉を閉めた。



◇



足音が遠ざかっていく。

レオンは閉じた扉をしばらく見つめてから、香炉へ目を戻した。


嫌がったらやめろ。

最後まで、アルベルトが言ったのはそれだった。

自分が気に入らないとは、はっきり言ったくせに。

セレナが楽しんでいることまでやめさせろとは言わない。




「……そっか」




レオンは小さく呟いた。

それから香木を一つ摘まみ、火へ近づける。



甘い香りが、ゆっくりと立ち上った。






_____________________________________


(おまけ 設定メモ)


ヤンデレ製造機セレナ ― セレナの香りついて ―


◆セレナの香り

セレナ:イランイラン+微かなラベンダー



◆影響


アルベルトへの影響:鎮静

→セレナがいると理性が働く


レオンへの影響:欲情

→セレナがいると理性が揺らぐ


◆2人の香りが合わさると


セレナ+アルベルト→お菓子のような甘さ。純粋さ


セレナ+レオン→媚薬のような妖しい甘さ。




同じセレナなのに、アルベルトと混ざれば、お菓子のように甘くなる。

レオンと混ざれば、媚薬のような魅惑的な香りになる。

セレナ本人は何も知らない。

アルベルトも知らない。

知っているのはレオンだけ。


では。

三人を混ぜると――?



(おまけ 設定メモ)


ヤンデレ製造機セレナ ― セレナの香りついて ―


◆セレナの香り

セレナ:イランイラン+微かなラベンダー



◆影響


アルベルトへの影響:鎮静

→セレナがいると理性が働く


レオンへの影響:欲情

→セレナがいると理性が揺らぐ


◆2人の香りが合わさると


セレナ+アルベルト→お菓子のような甘さ。純粋さ


セレナ+レオン→媚薬のような妖しい甘さ。




同じセレナなのに、アルベルトと混ざれば、お菓子のように甘くなる。

レオンと混ざれば、媚薬のような魅惑的な香りになる。

セレナ本人は何も知らない。

アルベルトも知らない。

知っているのはレオンだけ。


では。

三人を混ぜると――?


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