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元悪役令嬢ですが、夫が二人になりました。どちらも私に執着しています  作者: すなな


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24/37

24_少しだけ

朝。


セレナは約束通り、レオンの部屋を訪れた。

扉を叩く。


「レオン様?」


返事はない。


「入りますわよ」


そっと扉を開けると、レオンはまだ眠っていた。

黒い髪が寝具の上に散っている。昨夜より顔色はいいように見えて、セレナは少し安心しながら寝台のそばへ近づいた。


「レオン様」


小さく呼んでみても、反応はない。

起こすのも可哀想だけれど、熱だけは確認しておきたい。

少し屈んで額へ手を伸ばす。

昨日より、少し低い。

ほっと息を吐いた、そのときだった。

突然、手首を掴まれた。


「え?」


ぐっと引かれ、身体が寝台へ傾く。


「きゃっ……レオン様!?」


背中へ腕が回り、気づけばレオンの胸元へすっぽりと抱き込まれていた。


「ちょっと、レオン様……」

「……ん」


頭の上から、眠そうな声が落ちてくる。


「起きていらっしゃいます?」


返事はない。

聞こえるのは規則正しい呼吸だけだった。


「レオン様」


困って胸を押してみても離れない。

むしろ抱く腕に少しだけ力が入り、さらに身体が近づいた。


ふわりと香りがする。

いつもレオンが身に纏っている、甘さの奥に深い香木の混じった香り。


「……もう」


どうやら、寝ぼけているらしい。

どうしたものかと考えていると、耳元に掠れた声が落ちた。


「……愛してる」


セレナの動きが止まった。

自分に向けられた言葉ではない。


分かっている。

あの人だ。


『オレの愛する人に、似てたから』

『もう、会えなくて』

『会いたい』


あの夜、声も出せないほど泣いていた。

きっと今も、夢の中でその人を抱いているのだろう。


「……本当に、お好きなんですのね」


返事はない。

ただ、自分を抱く腕だけが温かかった。

レオンの香りに包まれながら、セレナは目を伏せる。

これを無理に振りほどいてしまうのは、なんだか可哀想な気がした。


「少しだけですわよ」


身体から力を抜くと、頬がレオンの胸元へ触れた。


とくん、とくん。


耳元で規則正しい鼓動が響いている。

この人が少しでも穏やかな夢を見られるのなら。


今くらいは。

いいのかもしれない。

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