↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元悪役令嬢ですが、夫が二人になりました。どちらも私に執着しています  作者: すなな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/36

21_甘えてもいい

セレナはレオンの額へ手を当てた。

朝より、少し熱い。


「また上がってきているのではありません?」

「そうかな」

「そうですわ」


手を離そうとすると、レオンがその手に頬を寄せた。


「……レオン様?」

「セレナの手、気持ちいいね」


熱を持った頬が、手のひらへ擦り寄ってくる。セレナは困ったように眉を下げた。


「……本当に甘えん坊ですのね」


レオンが目を細める。


「嫌?」

「嫌ではありませんけれど」


思いのほか、あっさり返ってきた。


「具合が悪いときくらい、甘えてくださって構いませんわ」

「……そっか」


レオンは小さく笑った。


甘えん坊。

それで済むんだ。


このくらいなら。

セレナは受け入れる。


「じゃあ、もう少し」

「調子に乗らないでくださいませ」


そう言いながらも、セレナは手を離さなかった。

その向こうで、アルベルトが二人を見ている。唇を噛み、手にしていた資料の端が指の中で少しずつ歪んでいた。

それに気づいたのは、レオンだけだった。

目が合う。

緑の瞳が、すっと細くなる。

レオンの口元が、わずかに上がった。


「セレナ」


アルベルトが立ち上がった。


「僕が代わるよ」

「アルが?」

「朝からずっと調べてたでしょう。少し休んで」


そう言いながら二人のそばまで来る。


「熱を見るくらい、僕にもできるから」


レオンはセレナの手に、もう一度頬を寄せた。


「オレはセレナの手がいいけど」

「聞いてないよ」

「冷たいな」

「病人なら大人しく寝てて」


セレナは二人を見比べた。


「お二人とも、何を張り合っておりますの?」

「張り合ってないよ」


アルベルトが即答する。

レオンは笑った。


「そうだね」

「……何」

「別に」


セレナには分からなかった。

いつものように二人が言い合っているだけ。

そう見えた。


「でしたら、まずは横になってくださいませ」

「まだ平気だよ」

「昨日はあんなに苦しそうだったではありませんか」


セレナの声が少し低くなる。

何の毒なのか、まだ分かっていない。医師も知らない症状だと言っていた。

命に別状はないと言われても、安心できるはずがなかった。


「お願いですから、無理をなさらないで」


レオンがセレナを見る。


「……そんなに心配してくれるんだ」

「当然でしょう」


少し間があって、レオンが笑った。


「分かった」


ようやくセレナの手から離れる。


「寝るよ」


レオンが立ち上がった、その瞬間だった。

身体が大きく傾く。


「レオン様!」


セレナは咄嗟に腕を取ったものの、大きな身体を一人では支えきれない。すぐに反対側からアルベルトの腕が伸びた。


「僕が持つ」


レオンの腕を自分の肩へ回し、腰を支える。


「歩ける?」

「……たぶん」

「それ、歩けない人の答えだよ」


さっきまでの刺々しさは、もうなかった。

二人でレオンを寝台まで連れていく。腰を下ろしたレオンの額には汗が浮いていて、セレナはもう一度そこへ触れた。


「……やはり熱いですわ」


今度はレオンも軽口を返さなかった。

それを見たアルベルトの表情が変わる。


「医師を呼ぶよ」

「お願いします」


アルベルトが扉へ向かう。


「それと、従者も呼んでくる。着替えた方がいい」


ほどなくして男性従者がやってきた。

セレナは寝台に腰掛けているレオンを見る。


「お着替えになって、もうお休みくださいませ」

「うん」


随分と素直な返事だった。

それがかえって心配になる。


「医師が来るまで、無理に動かないでくださいね」

「分かった」


従者が着替えを用意し始めるのを見届けて、セレナはようやく部屋を出た。アルベルトもそのあとに続く。

扉が閉まる直前、セレナはもう一度だけ振り返った。

レオンは寝台に腰掛けたまま、先ほどまでセレナが触れていた頬へ、自分の手を当てていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。