笑顔の仮面 1
次の日。
教室の扉を開けると、何人かと目が合った。
「雪斗、おはよう!」
「おはよう。」
笑って返す。
それだけで十分だった。
自分の席へ向かう途中、
「昨日の歌唱レッスン見た?」
「雪斗、数学のプリント見せてくれ~頼む!」
「今日の公民って何限だっけ?」
次々と声が飛んでくる。
一つずつ答えているうちに、気づけば机の周りには人が集まっていた。
毎朝こんな感じだ。誰かが話しかければ、また別の誰かが加わる。
その輪の中心にいるのは、いつも俺だった。
……別に嫌じゃない。
でも、少しくらい静かな朝があってもいいとは思う。
そんなことを言えば、「雪斗らしくない」なんて返されるんだろうけど。
だから今日も笑う、いつも通り。
「雪斗くぅん」
甘ったるい声がして、人の輪が左右に分かれる。
派手なメイクに、少しきつめの香水を纏った女子が俺の机まで歩いてきた。
「あの問題児ばっかりのユニットに入ったって、本当?」
その一言で、教室が静かになる。
みんなの視線が、一斉に俺へ向いた。
……やっぱり、その話か。
噂が広まっているのか、どこへ行っても同じことを聞かれる。
早瀬零。
白鳥海璃。
御流薫。
一年でも有名な問題児ばかりが集められたユニット。
教師ですら扱いに困る連中だ。
そこへ、なぜか俺が入れられたとなれば話題にならないはずがない。
「うん。本当だよ」
そう答えると、
「えぇ!?」
「なんで雪斗が?」
「先生何考えてるの?」
「絶対大変じゃん」
予想通りの反応が返ってきた。
苦笑しながら肩をすくめる。
「先生の考えなんて、俺も知りたいよ」
教室に小さな笑いが広がる。
これで終わると思った。
でも。
「実際どんな人なの?」
「もう話した?」
「怖くなかった?」
質問は止まらない。
……しまった。
適当に返したせいで、余計に興味を持たせたらしい。
笑顔は崩さない。
一人ひとりの質問に答えながら、心の中で小さくため息をついた。




