笑顔の仮面 2
…トイレにでも逃げ込もうか。
こいつらを蹴り飛ばしたい気持ちをぎりぎりで抑え、席を立とうとしたその時。
またもや、教室が静まり返った。
何事かと思い、みんなの視線の先へ目を向ける。
噂をすれば、なのか。
扉の前に立っていたのは、御流薫だった。
彼はこちらを一瞥すると、誰とも目を合わせることなく、そのまま教室の隅へと歩いていく。
………助かった。
ここから逃げる口実ができたことに感謝し、御流の後を追った。
「雪斗、どこ行くの?」
背中から声が飛んでくる。
伸ばされる手を振り払い、適当に笑ってかわす。
御流はイヤホンをつけて、窓の外を眺めていた。
完全に自分の世界に入り込んでいる。
俺はその前に立ち、少しかがんで目線を合わせた。
「ねぇ、御流くん」
反応なし。
「御流くん?」
もう一度。
「御流くん。」
ここまで無視されるのは、初めてかも知れない。さすがに少しムッとする。
俺は机を軽くたたいた。コン、という音が教室に響く。
それでも無視。
ならばと、ただ、御流を見続ける。
10秒。
…20秒
一度もこちらを見ない。
そのうち、静かだった周囲から、ひそひそと声が聞こえてくる。
「雪斗のこと無視とか、何考えてんの?」
「無駄だよ。御流が誰かと会話捨てるとこなんて見たことないもん」
…思いっきり聞こえている。
「……うるさい」
突然、御流が口を開いた。
「え?」
「うるさい、さっきから」
イヤホンを片方だけ外し、ようやくこちらを見る。
「聞こえてたの?」
小さく首を振る。
「机叩いたのも?」
「………。」
黙り込む。どうやら無視はしていたらしい。俺が小さく笑うと、御流の眉がわずかに寄った。
「……何」
「いや、ちゃんと聞こえてたんだなって思って?」
俺がそういうと、そっと顔をそむけた。意外とわかりやすい。
「それで?何しに来たの」




