↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
7/11

ただいまのあとで。1

校舎から寮へと伸びる、まっすぐな一本道。


夕暮れどきの空は、俺の心とは反対に雲一つない。


春特有の生ぬるい風が頬にまとわりつく。汗ばんだ制服が肌に張り付き、不快感だけがジワリと残る。

重い足を一歩。また一歩と前へ運んだ。




10分ほど歩き続けると、ようやく目的地である白壁の3階建ての学生寮が見えてきた。


入り口では、何人かの生徒たちが輪になって談笑していた。その笑い声だけが、まるで水の中にいるように、くぐもって聞こえた。



足早に横を通り過ぎ、開きっぱなしのドアをくぐる。


正面にある階段の手すりに手をかけた。一段上るたびにギィ、と古びた階段が軋む。


見慣れた部屋の扉の前で立ち止まる。

カバンの奥にある鍵を探す気力すら湧かず、代わりに力任せに数回、ドアを拳でたたいた。


「はいはーい。ちょっと待ってね~」


部屋の中から、聞きなじんだ明るい声が聞こえてくる。

バタバタと足音が近づいてきたかと思うと、ガチャと鍵が回る。ゆっくりと開いたドアの隙間からひょこっと顔が現れる。


「あ、雪斗だ。おかえりー!遅かったから心配したんだよ?」


出てきたのは、ルームメイトの桜井諒だ。俺と目が合うと、花が咲いたような満面の笑みを浮かべる。

ふわふわなくせ毛の茶髪を揺らし、まん丸の瞳をきらめかせる彼は、高校に入って初めてできた友達。

慣れない毎日の中で、自然と隣にいてくれた唯一の存在だった。



「た…だいま……」


かすれた声で小さくつぶやくと、限界まで張っていた糸がぷつりと音を立てて切れた。全身から一気に力が抜けていく。ぐらりと視界が大きく傾き、冷たい床が視界いっぱいに迫る。


__倒れる。


そう思った瞬間、強く抱き寄せられた衝撃とともに、諒の腕が俺の体をがっしりと受け止めた。


「ちょっと、雪斗!?……うわっ、ここで倒れちゃ……だめ!」


細い腕のどこにそんな力があるのか。彼は必死に俺の腰に手を回し、ずるずると引きずるように部屋の中へと運んだ。

そのまま近くのソファーに座らせ、玄関に放置されている荷物を取りに行った。



「…少し寝てたら?夕飯出来たら起こしてあげるからさ」


心配そうな、あたたかい声が耳に届く。その言葉に甘えて、体を横に倒す。

限界をとうに超えていた意識は、すぐに暗闇へと沈んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。