最悪の顔合わせ。4
「まさか、ここまでひどいとはな…。」
呆れたように苦笑しながら、缶をふわりと空中に放り投げた。落ちてきた缶を片手で受け止め、また放る。カラン、カランという金属音が規則正しく、広い室内に響いていた。
張り詰めていたものがぷつりと切れた。
壁にもたれたまま動けない。
数分しか話していないのに、何時間も気を張っていたような疲労だけが残っていた。
体の真横に置いてあった開けっ放しのカバンを漁り、水筒を引っ張り出す。そしてぬるくなった水を一気に喉へと流し込んだ。カラカラになっていた喉に水が流れていく。だが胸の奥に残る疲労のもやはなくならなかった。
「…これをどうにかしなきゃいけないってこと?絶対無理」
少し落ち着いたことで、さっきまでの状況を思い出すだけの余裕ができた。
協調性皆無のメンバーたちの態度を思い思い返しただけで頭が痛くなる。
ここはいない相手に向かって愚痴ろうと息を吸い込んだ瞬間、”お前も大概だ”という声と共に頭を軽く小突かれた。声のした方向へ顔を向けると、いつの間にか俺の真横まで移動していた黒崎先生がこちらを見下ろしていた。
……納得できない。
あいつらと同類になるのだけは嫌だ。
黒崎先生はそれ以上何か言うでもなく、そのまま床にしゃがみ込んで散らばっていた紙を一つにまとめていく。
空になった水筒のふたを強く閉めてカバンへ突っ込むと、壁に寄りかかっていた上半身をゆっくりと起こす。
「みんないなくなっちゃったし、そろそろ俺も帰るね。」
体に力を入れて何とか立ち上がり、黒崎先生の背中に向けてそう声をかけると、先生は床に目を落としたまま、振り返ることなく「ん。」とだけ短く返してきた。
カバンを肩にかけなおし、重い足取りで扉へと向かう。
扉を開け、廊下に出る。立ち去る前に一度振り返ると、黒崎先生は背を向けたまま、空き缶を軽く振ってみせた。




