喜「怒」哀楽
お読み頂きありがとうございます。楽しんで頂けたら嬉しいです。
「正直、寡人にも『怒り』というのがどのような心持ちであるのか、正確には理解できていないのだが」
「まあ不快の感じるものでございますよ。ちょうど喜びの感じるの反対かと」
チュウさんがそう返すと、国王陛下は得たりって感じに薄く笑う。
「まさにそれだな」
「それ、とは何のでございます?」
「確か喜怒哀楽、だったか?そなた達の言葉にあるあろう?」
「御意にございます。ですが超広域宇宙生活圏連合の皆様と商売のさせていただいておりますと、喜、哀、楽の3つしか無いように思います」
うんうん、そうなんだよねー。
「そうだな。ちなみに哀しみは分かるのだ。だからおそらく楽しみも分かっておる」
「と、いうことは.....喜びを感じるのことが不完全だと?」
「うむ。例えるなら光と影だ。光なくして影はなく、影なくして光りもない。寡人をはじめエント星の民は皆、怒りを知らぬが故に、きっと真の喜びを知らぬのだ」
ふーん......そんなもんかなあ??
宇宙人さん達って、どいつもこいつもノーテンキで、いつだって生きるヨロコビに満ちあふれてる気がするんだけどな.....
.......
.....
...
「ところで陛下、この内紛の目的でのある『怒り』の感情を取り戻すことができたと仮定のしまして、再び亜空間を使えなくのなりましたらどうなさるおつもりで?」
チュウさんがソロリとたずねる。
そうそうそれよっ!
それが肝心!!
だって今のところ、「怒り」の感情を捨てないかぎりは亜空間技術を使うことはできない、ってことしか分かってないんだもん!
そこんとこ、もうちょっと詳しく!!
「どのみちその目的は達せられそうにないのだがな。だが地球人は対応策を見つけ出しているではないか。生身で亜空間を通れなくなったとしても、そなた達のように元素変換によるクローン技術で星間移動はできるであろう?」
うーん、どっちかと言うとそれは対処法に近いんだよね。
だってそのせいで、歌保ちゃんみたいな「S2」を持っていない人は、星間移動がしたくても出来ないんだもの......
「その方法はどうでしょうか?私ども人類におきましても、『S2』保持の者でなければ星間移動のできないのです。それゆえに、私どもは『S2』の有る無しので格差があるのも現実のことなのです」
「ふむ......エントの民が、今度こそ本当に2つに分かれる可能性があると?」
「否定のするのは難しいかと」
3人して考え込んでしまう。
ここは単刀直入に聞いてみよっかな?
まずは焼酎をロックにして、と......
「あの陛下......どうぞ」
「おお、すまんな」
難しい顔をした陛下が、グラスを一気にあおる。
さりげなくチュウさんが2本目のボトルを注文してる。
そうそう、もっと飲んでー♪
飲んでー♪飲んでー♪
.......
.....
...
顔を真っ赤にしたベロベロの国王陛下。
人類と同じで、エント星人でも酔うと赤くなるのね。
そろそろいいかな?
「ところで陛下、『怒り』の感情を持ったままだと、なぜ人は亜空間には入れないのでしょうか?」
「......うん?はじけ飛ぶのだ、肉体も魂もずたずたに引き裂かれてな。無論、2度と出てくることは叶わぬ。亜空間の発見当初は、まだ精神的に未熟な種族もいてな、そういった連中が犠牲になったが故に判明していることなのだがな」
なにそれ怖っ!!
私たちの魂って、そんな物騒なトコを通ってるの?
「まるでブラックホールみたいのでございますね?」
「そうだな。なんにせよ、『怒り』の感情を持ったままでは、人は亜空間には入れぬのだ」
「それはまた何故?」
「分からぬ。教えてやりたいのはやまやまだが、それは今のところ誰にもに分かっておらぬのだ!」
............いや分かってないのかいっ!!!
くそー、焼酎代かえせー!!!
「使いこなせているとはいっても、そのメカニズムは未だ不明でな。だがひとつだけ分かっていることもある」
「「そ、それは.......??」」
固唾をのんで次の国王陛下の言葉を待つ。
「亜空間の存在が明らかになったのは、人が『怒り』の感情を捨て去って、しばらくしてからのことなのだ。つまり人が『怒り』の感情をもったままであったならば、亜空間は発見されることもなく、ましてやそれを使うことなど出来なかったであろうな」
へぇ.......
「ですが私どもは?もしかして結構レアケースなのでしょうか?」
「そうだ。肉体そのものは無理でも、『怒り』の感情を持ったままの魂が亜空間を通っておる。地球人の持つこの特性、そのことの重大さに気付いておらぬ者はまだ多いのだがな」
.......
.....
...
結局のところ、私たち人類が生身のまま亜空間を利用するのはまだ無理みたいね。
そもそも大前提である「怒り」の感情を捨てるなんてそう簡単にはできないし、そうとう時間がかかるわよ。
「ところで陛下、エント星の人々の紛争についてのは、今後どうなさるのおつもりで?『怒り』の感情を取り戻すのことは、もう断念なさいますので?」
とっとと気持ちを切り替えたらしいチュウさん、この星が今後どうするのか、どうなるのかを探り始めた。
紛争が続くのか、終わるのか?
終わるとしたら、エント星の人々の生活はきっと変わる。
「何かが変化するときは、必ずそこにビジネスチャンスがあるんよ」って日来課長もよく言ってるわ。
「そうだな。寡人としては、そろそろ潮時だとは思っている。だがそのためには、ひとつ問題があってな。今日はその件についても、そなた達に相談にのってもらいたいのだ」
国王陛下はそう仰ると、私の顔をじっと見つめてきた。
.........ん?
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