第94話:魔術王カロル
「わたしですか?!魔王軍の四天王がわたしに何の用があると言うのですか?!!」
これから戦う敵にいきなり頭を下げられたのだ。無理もない。
改まった姿勢から立ち上がるとカロルは言葉を返す。
『貴女なら当然知っているだろう?ホロ族という種族を』
「ホロ族!?ってことはまさか!!」
『その通り。ワタシはホロ族の唯一の生き残りだ。……リッチとなった身体を『生きている』と捉えるか否かは置いておくとしてな』
話の内容が全く掴めない。助けを求めるように動揺しているセレンに目線を送ると、テルルが説明を入れる。
「……ホロ族は今から2,000年前、ゼロスト教を作り出して信仰していた部族です。その生き残りがこんな所にいたなんて、わたしも知りませんでした」
「で、カロルがそのホロ族とやらだから何なのかしら?私たちを他所に話を進めないで頂戴」
『考えても見て欲しい』
ご立腹の吸血鬼の令嬢へと振り向く。
『自分たちが生み出して信仰していた宗教の神様が目の前にいるのだぞ?貴様らで例えるのであれば主神ヴィルリアの配下にいる16柱の神のうち二人と会っているようなものだ。喜ばないモノが何処にいるというのだね』
王侯貴族が全ての神の頂点に立つヴィルリアを崇拝するように。
金属製品の出来栄えの有無を決める鍛冶の男神ロウチュンをドワーフが信仰するように。
正誤尾善悪を見通す力を持つ審判の女神ジルジを裁判官や刑吏の者たちが慕うように。
ゼロスト教そのものを生み出した部族のモノがセレンへと頭を下げる。
『ここにゼロスト教の二人の女神が揃ったことの何と光栄なことだ!!そんな女神様に折り入って願いがある』
「……何でしょうか?願いを聞くだけなら勝手なのでどうぞ」
自分たちのことを誰も知らなかったはずなのに、いきなり「知っている」と名乗った人物が現われた。授業参観で母親を見つけてしまったような気分だった。
『ワタシを『救世主』にして欲しい』
『救世主』の文字を聞いた途端、二人の女神が息を呑む。
『ワタシは、この魔杖アルーフ=ザ=レストリクションを完璧な物にし、自らをリッチと化したことで地上最強の魔法使いとなった。だが、それだけでは足りぬ。一度とは言え勇者どもにも退けられているしな。その勇者どもすらも圧倒的な実力差で捻じ伏せられるほどの『力』が欲しいのだ』
カン、と六つの宝珠が嵌まった重そうな杖を鳴らす。
『だから、ワタシを『救世主』にせよ。そうすればこの世界を――』
「これ以上はいけません!!」
目を細め眼光鋭く睨みながらセレンが止める。
「これ以上はわたしたちですら発言を禁止されています。その先を言葉にした瞬間、あなたの存在は消えますよ?」
『なるほど。ゼロスト様はこの場所におわせられないから問題ないかと思ったが、そうも行かぬか。して、どうだ?ワタシを『救世主』にする気はないか?』
「微塵もありませんね。いくら部族の生き残りだからって、天はあなたを選ばないでしょう」
『その理由は何だ?参考までに女神様の意見を聞かせてもらおうか』
「…………言えません。これ以上は天界の機密事項なので」
『テルルも同じことを言って吐かなかったな。ならば二人とも力づくで吐き出させるのがお好みか!!』
ぞわぞわぞわぞわぞわぞわ。
カロルの周囲を風属性の精霊が舞う。
『それならば貴様らを全滅させてからゆっくり尋問してやるとしよう!!遍く吹き通る一陣の風よ。ワタシたちを『探究の古城』の外へ運べ!ワープ!』
風属性の魔法で攻撃されるかと身構えたが『ワープ』だった。
本来『ワープ』で同時に安全に移動できる最大積載量は【マジックマスター】か【疾風の才・神】で約900パウンド程度(約408kg。成人男性5人分程度)のはずだが、『ライザーズ』の六人とカロルの計七人を危なげなく一気に『ワープ』させ、『探究の古城』が遠目に見える小高い丘の麓へと移動する。
「驚きましたわ。このままマグマの火口にでも『ワープ』させられて、そのまま死ぬかと思いましたわ」
『どうせ『フライ』を使えるモノがそちらにもいるのだろう?その程度のものが通用しないことくらいは分かっておる。さあ始めようか!『魔術王』の名と2,000年以上蓄えた知識を見せてやろう!!』
「戦闘準備!!」
ハロイラのこの掛け声を聞くと、自然と背筋が伸びて自然とバトルに向けてスイッチが切り替わる。前衛にハロイラ・タイガ、中衛にメイア・ルナティ、後衛に絵理華・セレンが並ぶいつもの配置を取る。
「相手は一人!私が接近して時間を稼げば魔法の詠唱はできないはずであります!!」
剣を構えて肉迫。まずは小手調べに一撃叩き込むが、
「なっ?!何故ガードしないであります?!!」
牽制も兼ねて入れたはずの攻撃がそのままヒット。ゴリリという嫌な音を立てながら骨に剣がめり込む。
『言わずもがなだろう?ワタシはリッチ。死への恐怖など疾うの昔に消えたわ!!生を終えた生き物たちよ。骸となってワタシに傅け!マニピュレイト=スケルトン!』
敵の目の前だと言うのに悠々と魔法の詠唱を終え、空中に投げ上げた骨片から五体のワイバーンスケルトンを召喚する。
「五体同時でありますか?!LSランクでもここまでの数は使役できないでありますよ?!!」
『これがアルーフ=ザ=レストリクションの力だ!!自らの生命力と引き換えに魔法の力を超越させるが、ワタシには失う命などない!!反動で骨が砕けようが何度でも再生してやる!!』
黒い宝珠が不気味な黒い光を放つのと同時に、至近距離にいるハロイラの耳だけがミシミシという骨の軋む音を捉える。
「タイガ殿!ワイバーンは何匹対処できるでありますか?!!」
「いくら骨とはいえ厄介だね。それにスケルトンということは何度も再生するんでしょ?ボクたち前衛だけで抑えるのは厳しいよ」
「一か所に集めて!!」
絵理華が叫んだのを一瞥すると、翳した手の前に魔方陣が浮かび上がり、中では光と闇が数奇な紋様を描きながら蠢いていた。
『モノクローム=アンドゥレーション』。
プラスへと引き延ばす力とマイナスへと圧縮する異なる二つの力を混ぜ合わせた必殺の光線により、相手をゼロへと押し込める魔法だ。
「相反する二つの力を以ってゼロの安寧を与えよ!モノクローム=アンドゥレーション!」
黄色と黒が混ざり合おうとしても混ざり合わずに不可思議な螺旋を描き殺到。五体のワイバーンスケルトンが集まった場所へと射出させる。
「…………」
ワイバーンスケルトンはカロルと違って声帯がないらしく、断末魔を挙げることなく虚しく光線に巻き込まれると、空中へと出現した捻じれた渦の中へと圧縮されて消える。
『『モノクローム=アンドゥレーション』か。まだ幼い見た目にしては物騒な魔法を使いおる』
「何度でも再生できる身でも、さすがにこの魔法を受けたら助からないんでしょ?要するに上手く『モノクローム=アンドゥレーション』を当てれば倒せる。違う?」
『ご名答だ。いくらリッチとなったワタシでも、復活するための肉体がなかったら不可能だからな。だが、当たらなければいいだけのこと』
漆黒に包まれた瞳の部分の空洞が怪しい光を放つ。
『永く生きていれば魔法を去なす術くらい心得ているに決まっているだろう?ワタシに魔法攻撃が通じるかな?』
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本日は冬至ということで、折角の機会なので冬至に関するお話を!
「冬至の日にはカボチャを食べるといい」と言われていますが、実はカボチャじゃなくても「ん」が付く食べ物であれば何でもいいそうです。てっきりカボチャオンリーなのかと思っていたので、藤井の家では冬至になると毎回カボチャの煮物を食べておりました。カボチャは昔は「南京」(なんきん)と呼ばれていたそうなので、カボチャを食べても全然オッケーだそうですよ!!
ちなみにですが、土用の丑の日は必ずしもウナギではなく、「う」が付く食べ物であれば何でもいいそうです。
……となると、「神羅万象チョコ」は「う」も「ん」も付くので、土用の丑の日にも冬至にも食べられるし、しかもウエハースチョコレートだからバレンタインやホワイトデーでも使えるスーパーフードってことですか?!!「超獣戯牙ガオロード」にはできない芸当ですね!!
ではまた!これからもよろしくお願いします!!
次回は実は「神羅万象チョコ」を7年以上収集していた藤井が「神羅万象チョコ」について熱く語ります!!




