第95話:炎
『モノクローム=アンドゥレーション』は全ての物体を消滅させる超強力な魔法である。
しかし、この魔法には重大な欠点があった。
「相反する二つの力を以ってゼロの安寧を与えよ!モノクローム=アンドゥレーション!」
『何度も撃ったところで無駄に魔力を浪費するだけだぞ?』
絵理華が放った黄色と黒が綯い交ぜとなった光線に杖を向けると闇属性の光線を発射。必殺の魔法は霧散して消える。
『モノクローム=アンドゥレーション』は光属性と闇属性の魔法を過不足なく5:5の割合で合成することによって生まれる魔法だ。
だが、『5:5』という完璧なバランスを満たしていないと魔法として成立することができず、どちらかに過不足が発生すると崩壊してしまうのだ。
『赤色と青色を混ぜると紫色になるが、そのどちらかの色が多すぎるだけで色が濃くなってしまうだろう?それと同じでどちらかの属性を足してやればバランスが崩れ去り、魔法としての形を保てなくなる。……皮肉にも勇者どもが得意とした戦術だがな』
嫌なことを思い出して吐き捨てるように言う。
『2,000年以上魔法の研究を行ってきたワタシには魔法攻撃など通じぬと思え!!』
「ふうん。なら、圧倒的な物理攻撃で攻めてご覧にいれましょうか?」
後方を見ると【アブゾープション】を開放したメイアが刺突剣を構えていた。
「リッチって全ての骨を完璧に砕くか小箱に入れられた魔法の心臓を破壊すれば機能停止するのよね?なら、私の【アブゾープション】で全て砕いて差し上げますわ!!」
何処かに隠し持っていたのか闇属性の魔法『マニピュレイト=スケルトン』を使ってデュラハンを二体召喚。一体をその場に残して疾駆する。
『ローゼンガウラ家の令嬢か。貴様にラウノーラ=イグロータストほどの実力があるとは思えないのだがな』
「私だってローゼンガウラ家の血を引く者よ?昼型吸血鬼の名門が魔王軍如きに屈するわけにはいかないのよ」
力強い突きを一撃。
『ぐおおっ!!』
肋の一本が粉々に砕け散ると風に乗せられて何処かへと消える。
『今のは痛い一撃だったぞ?この例はさせてもらおう!!』
「私が後205本を砕くまでにできるかしら?」
『攻と防の二つの面を属性によって具現化せよ!ウォール=グラウンド!』
ミシミシバキリと嫌な音が反響する中、カロルは既の所で『ウォール・グラウンド』を唱え、メイアとデュラハンを巻き込む形で半円形の岩のドームを作り出す。
「あら?私との一対一がお望み?ならば遠慮なく仕留めさせていただきますわ!!」
『そちらこそ忘れてはいないだろうな?ワタシは死を恐れぬアンデッドだということを!!その供物を堪能して勢いを増せ!ドラゴンズマスティケーション!』
カロルが唱えた途端、狭い半円形のフィールドの中に歪曲する赤熱した柱が地面から生えた。
『ドラゴンズマスティケーション』。
火龍が持つ灼熱の舌を再現した魔法で、触れた対象を超高温の炎によって溶解する魔法だ。
『この狭い空間の中で、しかも二本の舌を避けながら戦うのは苦痛であろう?』
「くううっ!!」
相手は意志を持った生命ではなくただのエネルギー体。どれだけ攻撃をしようが形を失うことはなく、閉鎖された空間内の空気が熱せられて蒸し風呂のような暑さになる。
『さらに、ここでワタシが魔法で追い打ちを掛けたら貴様はどうするかな?』
「っ?!」
ここからさらに魔法攻撃をするというのか。二本の長い舌を躱しながら身構えると、
『天から槌を振り降ろせ!サンダー!』
ごく初歩的な風属性の魔法。
それ故に変に力を入れてしまい避けられない。
天から降り注いだ一筋の稲妻がメイアに確実なダメージを与える。
「きゃっ!!」
ここで怯んでしまったのが文字通り命取りとなった。
LSランクに相当する魔法力を持った魔法は、例え初歩的な魔法であっても大きなダメージをメイアへと与え、一瞬であったが隙を作る。
『くくく。今のは効いたようだな』
阻まれた空間を覆うように炎の柱が伸びる。
これから口の中へと入る獲物の味を想像する龍の舌のように。
『いくら身体能力が高くても、これほどの閉所であれば自由に身動きが取れぬだろう!!さあ灰になるがいい』
「動きなさい!デュラハン!!」
例え使役されていてもSランクに匹敵するモンスターだ。必死に操って応戦しようとするが、
『無駄な抵抗をっ!!火龍の舌の前では無意味だ!!』
ジュッ!!
あまりにも呆気なく炎に巻き込まれ、塵一つ残さないまま影となって消える。
『これで仕舞いだ!!観念するのだな!!』
「きゃああぁぁあああああぁぁぁっっっっっっっ!!!!」
「メイア殿!!」
『ウォール系』魔法の耐久は使用者の魔法力が強ければ強いほど強力となるため、タンクのハロイラ如きが叩いてもダメージが吸収されてしまう。
「どいて」
事態は刻一刻を争うが、『モノクローム=アンドゥレーション』を馬鹿の一つ覚えのように使っては、また無力化されるかもしれない。
「雲の隙間から漏れる転舜の光を裁きの一撃へと変化させよ!サンセットアロー!」
これで六発目。
五角形の頂点となる位置に光の矢を突き立てた後、真ん中に少し魔力を込めて強い一発を放つ。
直後、型抜きでもするかのように五本の矢に囲まれた部分が砕け散り、岩塊が吹き飛んでバリアの中が剥き出しとなった。
『いくら接近戦が得意な相手でも、一対一で封じ込めてしまえば他愛もないことよ』
絵理華が放った魔法に耐えられなくなった『ウォール=グラウンド』が割れた先に見えた光景。
それは、激しく空気を吸い込みながら燃える炎の中に黒く焼き焦げた『何か』が転がっているのと、それを見つめているカロルの姿だった。
「……メイアはどうなったの?」
『見て分からぬか?死んだよ。炎に包まれて悶え苦しむ様をワタシがこの目で見届けたのだから間違いない』
カン、と草原に杖を打ち鳴らすと壊れていたドームが泡のように割れた。相当激しく燃えたのか、遺体周辺の草原が黒い円形状に焼き焦げている。
「メイア殿……。吸血鬼は生命力が高いのではなかったでありますか?」
『再生はできるが不死ではないからな。吸血鬼も例外なく死ぬのだよ』
「う、嘘であります!!メイア殿は死んでいないであります!!」
『現実を受け入れられぬか。だが心配することはないぞ?すぐに死後の世界で再会させてやるからな』
こんなにあっさり。
こんなに簡単に。
さっきまで他愛のない会話をしていたモノが死ぬなんて。
「まだ諦めないかんな!!ルナティちゃんは回復魔法を掛けてみる!!タイちゃんはメイっちを運び出すのを援護してっ!!」
拡声杖を握って走る。
「……ねえセレン」
「何でしょうか絵理華さん」
「あいつを一撃で屠れるほどの魔法って何かない?」
「『ニューワールド=イントロダクション』でしょうか?わたしもアジ=ダハーカさんから初めて聞きましたが」
「文句分かる?」
「分かります」
光属性と闇属性の準備魔法は唱え終わっているし、『ワープ』を使った時に風属性の魔法を使っているためこれも問題ない。後は火属性・水属性・土属性の準備魔法だけか。
「ちょっと残酷なことを聞いてもいい?セレン?」
「何でしょうか?」
「一年間に死ぬ生き物の数って、天界で管理されているんだよね?」
「そうです」
絵理華の周囲を火属性の精霊が舞う。
「じゃあ、メイアはこの場で死ぬ運命にあったってこと?」
「わたしだって信じられませんが、そうです、としか答えられません」
「まだ死んだって決めつけるのは早いよっ!!回復魔法と薬を全部ぶち込んででもルナティちゃんが何とかしてやるからなっ!!」
絵理華の周囲を水属性の精霊が舞う。
「この時この場所で死ぬし、何をどう足掻いてもそれを回避できないってことだよね?」
「わたしだってそんな冷たいことを言いたくはありません。ですが、そうです、としか言いようがありません」
「回復魔法反応なし!!これ本格的にダメかもっ?!!」
「生き返らせる木の実とかないの?」
「そんな都合のいいアイテムがあったら、冒険者たちで取り合いになっているよ!!」
絵理華の周囲を土属性の精霊が舞う。
「結局これってさ、私がもっとちゃんとメイアをサポートして、もっと手早くカロルを斃せていればこんなことにはならなかったんだよね?」
「そうですと言いたいですが、もしカロルを瞬殺していたとしても、メイアさんは何かしらの理由で死んでいたでしょう。心臓発作・心筋梗塞・脳梗塞・くも膜下出血・多臓器不全・寿命。理由を挙げればきりがありませんが、何かしらの形で死んでいたと思います。残酷ですが、これが天界が決めた『終わり』である限り、わたしたちはそれに従うしかありません」
「でも、カロルさえ斃せていれば、カロルに殺されることはなかった、と」
「違いありません」
六つの属性が重なり、空中に展開された魔方陣には虹色に畝る不可思議な光が生成される。
全てを消し去り新たな世界を創り出すための礎となる魔法の完成だ。
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皆さんお待たせしました!(待ってなかったらゴメンナサイ)今回は「神羅万象チョコ」に関するお話です!!
「神羅万象チョコ」とは、「原川光博というイラストレーターさんが書いたイラストに価値を付けてカードとして売ろう!!」をコンセプトとして生まれた食玩です。現在では後輩にあたる「超獣戯牙ガオロード」と、可動式フィギュア「アクアシューターズ」のイラストを手掛けている人ですね!
1パック120円(税別)。当時としては珍しく、プラスチック製のカードにイラストが描かれたカードとウエハースチョコが一つ封入されていて、カードの裏にはキャラクターのステータス(名前・種族・年齢・武器・使用できる魔法の属性・必殺技・キャラの説明)とストーリーが書かれていて、複数のカードを集めることで大きな一つのストーリーが完成するようになっています。
藤井が始めたのは「ZX編」(ゼクスファクター編・第6弾)からなのですが、そのシリーズが偶然、異能力学園ものだったのもあってハマり、そこから約7年間購入しておりました。
しかし、「七天武闘会編」(しちてんぶとうかい編・第7弾。基本的には一年で一弾のオムニバス形式)に突入してからキャラステータス欄から年齢が廃止。ストーリーの内容が淡泊になったためにそれほどカードを集めなくても話が追えるようになり、「ZX編」の「氷輪のマヒロ」のレアカードがビキニだったことや「七天編」の「ムジナ」が露出の多いビキニアーマーだったことで苦情が来たのか、「八柱編」(エイトピラー編・第8弾)になってから露出の多いキャラが露骨に減少。「九邪戦乱編」(くじゃせんらん編・第9弾)になってからはほぼストーリーが形骸化しました。
その後も十周年を記念した「天地神明」(てんちしんめい・第10弾)で過去キャラ登場。「一鬼火勢編」(いっきかせい編・第11弾)で過去キャラをオールリセットした準和風ファンタジー、「幻双竜大陸編」(げんそうりゅうたいりく編・第12弾)ではカードの裏側に謎解きゲームを入れるなどと迷走し、「魔怒暴威編」(マッドボーイ編・第14弾)で『西遊記』の孫悟空っぽいキャラが「乗り物に乗ってオアシスを探しに行くぜー!ひゃっほー」とか言い出して約15年の歴史に幕を下ろしました。
13弾の「流星の皇子編」に至っては、当時リアルタイムでカードを買っている人が全然おらず、市場で全然出回らないから、とかいう意味の分からない理由でレアカードが高騰する始末です。逆にそれだけ末期は過疎っていました。
公式ホームページで全てのイラストが見られるので、気になるお方は「神羅万象チョコ」で検索う!!
ではまた!これからもよろしくお願いします!!




