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第89話:魔法学のお勉強タイム

 SSランクの依頼(クエスト)を三つ達成したので『ライザーズ』も晴れてLS(レジェンドエス)ランクギルドに昇格だ。

 しかし、三つをそれほど間隔を開けずにクリアしたため、全員疲れが溜まっているのでは?ということで、数日間休息を取ることとなった。


「ん…………」


 モンスターたちの世話・宿の手伝い・依頼(クエスト)など仕事が毎日あったため、こんなにゆっくり休むのは久しぶりだ。

 睡魔と戦いながら布団の中でもぞもぞしていると、


「起きなさいエリカ。勉強の時間よ」


 勢いよくドアを開け放ち、部屋の中へとメイアが入ってくる。


「おはようございますメイアさあん。朝から元気ですねえ」

「三時課の鐘(午前9時を告げる時報)が聞こえなかったのかしら?それとも聞こえていて今日一日寝て過ごす気かしら?」


 布団の中からメイアを見る。

 普段愛用しているものなのかそれとも一種のファッションアイテムなのかは分からないが、丸レンズの眼鏡を装着していた。


 ちなみに眼鏡が生まれたのは13世紀のイタリアで、当時の眼鏡は今と違って丸いレンズと鼻に引っ掛けるブリッジの部分しかなく、耳に掛けることはできない。高級品で落とすとすぐに壊れてしまう精密な作りであったために、顔から落ちないように注意する必要があんあのだとか。


「貴女、【マジックマスター】を持っている癖に魔法に関する知識が全然ないわよね?だから、私が魔法について直々に教えて差し上げますわ!」

「眠いからパス」

「右に同じですう。魔法に関してだったらわたしがいるから大丈夫ですよ絵理華(えりか)さあん」

「……よりよく眠れるいい魔法がありましてよ?」


 右手でブリッジを抑え左手で本を弄びながら、メイアは人の悪い笑みを浮かべる。


「まずは光属性の準備魔法を唱えて頂戴。その魔法は光属性にカテゴライズされているのよ?」


 これで安眠できるというのならば仕方がないか。ごにょごにょと口を動かしながら準備魔法を唱える。


「ではこう唱えて。星の力よ。空の輝きを地上に!ライトニング!」

「星の力よ。空の輝きを地上に!ライトニンぐあああぁあああぁぁぁぁああっっっっっ!!!!(たばか)ったなああぁぁぁぁああああっっっっっ!!!」

「うおえあっ!!眩しっ!!」


 魔法を唱え終わると同時に頭上に閃光が出現。真下から眩しい光を直接浴びた絵理華とセレンが目を抑えながら転がる。


「どう?お目覚めかしら?」

「…………やってくれたな?」

「こんなのCランクの魔法使い(マジシャン)でも使えるような初歩の初歩の魔法よ。そんなものにまんまと引っ掛かるのが悪いのではなくて?」

「……」


 何も言い返せなかった。寝て過ごすというのも勿体ないので、寝間着のまま身体を起こす。


「貴女は全属性の魔法が使える【マジックマスター】を持っているというのに、魔法の種類を知らなすぎるのよ。これを使って勉強なさい」


 ぼすっ!と膝の上に投げ込まれたのは『Cランクでも分かる初めての魔法入門』というタイトルが表紙に書かれた少し厚めの本。


「ガオバーロの古本市で買ったものだから役に立つかどうかは分からないけど、まずはこれを使って初歩的な魔法を覚えることね」

「……あれじゃない?何でも消しちゃう『モノクローム=アンドゥレーション』を完璧に唱えられれば他の魔法は要らないんじゃないの?」

「貴女、『モノクローム=アンドゥレーション』でどうやってモンスターを弱らせるのよ……。手足を一本吹き飛ばすつもりかしら?」


 そういえば、ルナティやメイアと力を合わせて高火力の魔法を使う時も、二人の知識に頼りっぱなしだ。自分の無力さを噛み締めてしまったので本をパラパラと捲ると、本の冒頭に魔法に関する説明書きが登場する。さすがCランクでも分かると謳っているだけある。


 本によると魔法を使うにあたって必要なものは2つ。


 まず一つ、その属性の魔法を使うのに必要なスキルを持っていることであり、これが大前提となる。


・火属性魔法……【爆炎の才】

・水属性魔法……【流麗の才】

・土属性魔法……【大地の才】

・風属性魔法……【疾風の才】

・光属性魔法……【閃光の才】

・闇属性魔法……【漆黒の才】


 となっており、その属性の魔法しか使うことができない。

 そのため、【爆炎の才】しか持っていないのであれば火属性の魔法しか使うことができず、水属性や風属性の魔法を使うことができない。


 ……ただしこれには例外があり、歴史を紐解いても五指に数えられるほどしか前例のない類稀(たぐいまれ)なスキル・【マジックマスター】を持っていれば全てのスキルをLSランクレベルで使うことが可能で、他には【才】さえあれば装着するだけで魔法が使えるようになる遺物が、この世界の何処かに眠っているらしい。(恐らくだが、アラキラが装着していた『天籟王(てんらいおう)の冠』のような遺物のことだろう)



 二つ目に、その魔法を詠唱するのに必要な文言を暗記していることである。


 魔法を唱えるためには、その属性の精霊から力を借りるために必要な準備魔法と、魔法そのものを唱えるために必要な文言があり、準備魔法を唱えないとそもそも魔法を使うことすらできない。


・火属性……「神界より(たま)いし太初の精力よ。物質の形を奪取せよ!」

・水属性……「決して掴むことを能わない万化の趨勢(すうせい)よ。その形を定めて牙を剥け!」

・土属性……「万物を生みし母の(たい)よ。新たなる生を芽吹かせよ!」

・風属性……「(あまね)く世界に満ちる見えない力よ。【自分の名前】に力を貸して!」

・光属性……「煌然(こうぜん)(たたず)む神域の天秤よ。【自分の名前】に正誤善悪を示せ!」

・闇属性……「生死を隔てる(くろがね)の監獄よ。その門扉を開放せよ!」



 つまり、【マジックマスター】を持つ絵理華は上記の六属性の魔法の準備魔法を暗記しておく必要があり、そこからさらに使いたい魔法の文言・その魔法が何属性であるか・複数の属性を合成させる場合、どのような比率で合成させなければならないのかを暗記していなければならないのだ。


「うげ……、魔法使い(マジシャン)って大変なんだね……。何かいい方法ないの?セレン?」

「わたしはドラ●もんじゃないですからねー。泣きついたってアンキ●ンはポケットから出てきませんよー」

「……魔法使い(マジシャン)はみんなこれをやってるんだよね?」

「むしろ、ドラゴンたちが編み出した複雑な魔法を文句二つ覚えるだけで再現できるのだから、これでもかなり短縮されて便利になっているのよ?」

「落ち着いて聞いてください絵理華さん」


 真面目な表情になって正面から見つめてくるセレン。


「あのルナティさんでも暗記できているんです。ルナティさんにできて絵理華さんにできないわけがありません!」

「さらっと失礼なことを言ったわね」


 幸いルナティは朝からイケメンを探しにロマリアをぶらつくということで宿にはいないらしい。


「あれなんてどうかな?スマホのメモ機能に文言をメモしておいて、自動音声で読み上げてもらうとか?」

「現代っ子ど真ん中ですね絵理華さん」

「読み上げ?それって『スピーチ』みたいな感じかしら?言っておくけど『スピーチ』を使った魔法詠唱は無理よ。それができるのなら『スピーチ』が使える【疾風の才】が最強になってしまうわ」

「デスヨネー」


 学問に王道なしとはよく言ったものだ。モーニングルーティーンを済ませて朝食を終え、エントランスの机の上でテキストを開く。


「あれ?そういえばこの世界の言語について一切学んでないんだけど、読めるもんだね??」

「そこはファーストコンタクトでガルシャさんと普通に話せた辺りで割り切っていたと思っていましたけど?!事情はよく分かりませんがゼロスト様が同時翻訳的なのをしてくれているみたいですよ!!」

「へぇ、ゼロスト様も大変だね?」

「逐一翻訳しているのではなく、カミサマパワー的なので何とかなっているんだと思います!!」


 テキストを開いた時は順番にやることを意識するよりも、自分が興味を持った分野からやることも大切だと言うので適当にページを送ってみる。


「『エレクトロキュート=ジュエル』……。巨大な光球を生成し、広い範囲に電気を走らせて感電させる魔法……。あっ!これフンババが使ってた魔法だ!」

「風属性の中でも上から数えた方が早いくらいに威力の高い魔法ね。広範囲に攻撃できる反面、FF(フレンドリーファイア)が起こってしまう野良ではまず使わない魔法だわ」

「こういう威力が高い魔法を知っていると便利ですよね!!」

「ランクの高いモンスターを弱らせるのには少し不向きかもしれないわね。それこそ、『サンセットアロー』くらいの手軽な魔法を覚えておくと便利なのだけれど」

「一番威力が高い合成魔法って何なんだろ?ちょっと調べてみよ!!」


 巻末までページを送る。


「『デイトの逆渦(さかうず)』……。指定した空間にいる敵味方の敏捷ステータスの優劣を逆転させる魔法……?いつ使うのこれ?」

「使い道が分からないから誰も使わないのよ。火・水・土・闇の四つの属性を使ってやることが敏捷ステータスの逆転なんて、割に合わないもの」

「その手間で『モノクローム=アンドゥレーション』を連射した方が難易度が低くて確実に葬れますからね……」

「……あれ?『ニューワールド何とか』がないね?ほら、アジ=ダハーカがレオルスたちに向かって放ったって自慢していた魔法だよっ!」

「『ニューワールド=イントロダクション』のことか嬢ちゃん?」


 食べ終わったお椀を片付けに来たガルシャが会話に加わる。


「アイツから直接聞いたんだけど、あれはアイツが魔法を研究して生み出した完全オリジナルの魔法らしいぜ?……まあ、オーバーキルだからあんな魔法を使う機会なんてねぇだろうけどな」

「さすが魔法の研究に没頭した末にドラゴンになった男ですね……。魔法を作り出すのも難しくはないってことですか」


 やはりまずは初歩的な魔法から覚えよう。巻頭の方へとページを戻す。


「『ライトニング』……。空で輝く星の光を地上に再現する初歩的な魔法……。さっきメイアに唱えさせられたのはこれか」

「突如眩しい光を出現させることで、相手を怯ませる魔法ね。相手の隙を作るのに最適よ」

「文言も簡単だね。星の力よ。空の輝きを地上に!ライトニング!だって」

「ちょっ!!なっ――」

「絵理華さああああぁぁぁあああんんんん!!!!」


 絵理華はすっかり忘れていたのである。

 先ほど部屋で光属性の準備魔法を唱えたため、詠唱さえすれば光属性の魔法であれば使えるということを。


 二人が止めようとするのも虚しく『アルミラージの集会所』の中に空で輝く星の輝きを凝縮した光の玉が出現。内側から爆発でもするかのように窓という窓と出入り口から光の柱が一直線に漏れ出た。

「なろう」にていいねが一件増えました!いいねしてくださった方ありがとうございます!!



 さて今回の裏トークはタイガです。


 見た目の特徴(主に服装と肌の色)は藤井の著作『カムイノミコ』(※触れたものを破壊する能力・『破壊のカムイ』を持った少女の冒険と成長を描いた作品。「ノベプラ」内で行われた「クイーンズブレイドコンテスト」にて惨敗して消滅)の主人公・サレキをモチーフとしています。


 本当は虎の姿のまま一緒に冒険する設定だったのですが、「絵理華はチート能力をもらって転移したのに、タイガだけただの虎のまま転移するの不公平じゃね?かと言って何でもできる万能で最強なフェンリルみたいな感じにすると、テンプレなろうっぽくなるよな……」との理由で、虎の姿に変身できる身体能力の高い少女、となりました。

 また、死ぬ前の虎がオスだったこともあって、初期の初期の案は虎型獣人のケモ耳ショタにする案がありましたが、それだと絵理華とのファーストコンタクト時に今後の展開がバレバレなので、「ウェアタイガーの少女=転移したたいが君」という構図を気づかれないようにするためにはどうしたら良かったか、を工夫した結果でもあります。ボクっ娘はその時の名残ですよ!!


 ちなみに、初期の初期の案は「Sランクギルドを追放された俺のスキルが、実は全てのステータスが1000000000000066600000000000001になるチートスキルだったので、ざまあすることにしました。」に登場する、体術で戦う熊型獣人少女・ベルベティをそのまま虎型獣人にしたキャラクターになる予定でしたが、「虎に変身する前と後で戦い方が変わった方が格好いいのでは?」とのことでトライデントを装備。

 ベルベティが筋力で相手の動きを翻弄する戦士兼回避タンクだったため、タイガはその設定を受け継いで回避タンクとなりました。



 ではまた!これからもよろしくお願いします!!

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