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第77話:ニ

「確か依頼書には「ウェルタナ森林地帯はフワワが守護している」って書いてあったよね?」

「そうですね」

「じゃああのフンババって何者なの!?」

「今は気にしている場合ではないであります!戦闘準備!!」


 タンクのハロイラ・回避タンクのタイガが前衛へ。

 サブディーラーのメイアが中衛へ。

 DD(ダメージディーラー)絵理華(えりか)・バッファー兼デバッファーのセレン・ヒーラーのルナティが後衛へ。


 ポジションに合った立ち位置へと移動する。


『……数が多いな。いきなりだが遠慮なく使わせてもらおう』


 フンババは巨人でもあり、少なく見積もってもその背丈は16.5フィート(約5m)以上。獅子の顔が上から見下ろすように言葉を紡ぐ。

 と、


『はああっ!!』


 気合を込めた一声。

 直後、巨人の身体は眩しい光に包まれてその輪郭を失う。


「っ!!」


 相手は巨人。

 その大きな身体から放たれる光の量は尋常ではなく、周囲にある樹々を隈なく照らして光の世界へと塗り潰す。


「い、一体何だったの…………?」


 視界が焼き付いて目が(くら)む。

 眩しさを払うように首を振ると、とさり、という軽い音と共に立っていた女性たちが次々と倒れていく。


「セレン?!ルナティにメイア、ハロイラも?!一体どうしちゃったの?!!」

『ぬう……。二人だけ残りおったか』


 空から獅子の口で話すのも無視してセレンへと駆け寄る。


「セレンっ!どうしちゃったのセレン!!」

「眠っているみたいだね。残ったのはボクとエリカだけ」


 必死に揺り動かすが金髪の女神が目を開ける気配はなく、呼吸に合わせて小さな胸が静かに上下する。


『眠ってもらったのだ。『ニ』でな!!』


『ニ』とはフンババが纏った光の形をした七つの鎧のようなもので、この光の力を浴びたモノは眠ってしまう。

 古代メソポタミアの英雄譚・『ギルガメシュ叙事詩』で有名な英雄ギルガメシュも『ニ』の力を受けて眠りに落ち、同じく英雄エンキドゥに励まされることによって何とか起きることができたのだという。


『だが不思議だな。他の者は眠ったというのに貴様らだけ眠らないとは。……さては貴様ら、エンキドゥのように神に創られた存在だな?』


 フンババから『ニ』の光を受けた時、人間の父と女神の母から生まれ、神から知恵を授かった三分の一が人間・三分の二が神という性質を持つ半神半人のギルガメシュが眠ったのに対し、大地の女神ニンフルサグの手によって粘土から作られたエンキドゥは無事であったという。

 半神半人すらも昏睡させてしまうほどの力のようだが、神の手によって直接創られたモノには効果がないようだ。


「ボクとエリカ以外が眠ってしまったとなると、ここは二人の力でフンババを斃すしかないみたいだね」

「そんなことをしなくたって、ビンタするなりして起こせばいいんじゃないの?」

「皮肉なことにFF(フレンドリーファイア)が働かないようになっているからね。仲間がダメージを受けるような攻撃はしても意味がないんだよ」

「じ、じゃあ【マジックマスター】を持っているんだから、眠りから目覚めさせる魔法を使えば!」

『貴様、【マジックマスター】を持っているのか?だが無駄だ』


 腕を組んでフンババが悠々と見下ろす。


『【マジックマスター】はあくまで、火・水・土・風・光・闇の六つの属性の魔法が使えるだけ。【女神の祝福】・【天啓の導き】・【悪魔の勾引(かどわ)かし】などの回復系・援護系・妨害系の魔法は六属性に属さないから使えないのだ!貴様らに仲間を目覚めさせる手などない』

「……随分と詳しいんだね」

『当たり前だ。()()()()()()()使()()()()()()()()()()


 フンババの周囲を土属性の精霊(ノーム)が舞う。


 そういえば何処かの機会で誰かが言っていた。

 この世界の(ことわり)に支配された『冒険者』と言われる人々は、魔法を使うことを可能とするスキル【才】がないと魔法を使うことができないが、北欧神話の神々や他神話の英雄・絵理華がいた世界で生まれゼロストの手によってこの世界へと『配置』されたモンスターは、魔法を唱えるための声帯・知能・魔力さえ備わっていれば、スキルの有無に関係なく魔法が使えると。


『雄々しき敵愾心(てきがいしん)を具現化せよ!グラウンドホルン!』


 フンババの詠唱が終わった直後、


「くっ!!」


 二人の女を串刺しにすべく地面から牡牛の角のような猛々しい岩塊が伸びる。


『大した瞬発力だ。だが次は外さん。仲間諸共(もろとも)貫いて百舌鳥(もず)速贄(はやにえ)にしてくれよう!!』

「させないよ」


 岩塊すらも足場として不規則な動きで跳躍すると、三叉槍(トライデント)を構えてフンババへと肉迫する。


「ここはボクが時間を稼ぐ。エリカはその間に何か策を考えて!」

「でもっ!一体どうすれば?!!」

「大丈夫。エリカなら絶対何か思い付くよ。ボクには想像できないような何かをね」


 その言葉を最後にフンババとの戦いに集中。魔法の詠唱をさせないために三叉槍(トライデント)で集中を掻き乱し、猛禽類の爪を去なす。


(どうする)


 FFの防止により味方への攻撃はできないため、顔などを殴って起こすのは不可能。


(どうする……?)


【マジックマスター】で使用できる魔法の中には、眠らされたモノを覚醒させる魔法などない。


(どうするっ?!)


 誰かが持っている荷物を勝手に探って眠気覚ましになるような薬草やアイテムを探す?

 薬の知識がないため、どんな効果があるかも分からないようなものを口に突っ込むのは危険だ。


 この場は逃げる?

 仲間を置いて逃げるなんてことはできない。


 大人しく降参する?

 相手は自然を破壊されて怒っているのだ。こちらの意見など聞き入れてもらえるわけがない。


(いや)


 人間は過度に長期のストレスが掛かっていると判断力が著しく低下すると言われている。まずは落ち着こう。


 ここは『アルミラージの集会所』の一室だ。

 私はそのベッドの上に座っているのだ。

 そして、自分も含めてそこに泊まる六人の笑顔を守るためにこれから策を練るのだ。


 衝撃によって倒れた木の上に座りながら、自分が最もリラックスできる場所を思い浮かべて深く息を吸い、ゆっくりと息を吐く。


 何かあるはずだ。

 この状況を打開できる何かが。


(せめてあともう一人起こせればなあ)


 こんなに騒がしい状況であるにもかかわらず地面に転がって幸せそうに転がる面々を見ながら状況を整理していく。


・セレン……半神半人のギルガメシュですら眠ってしまったのだ。神であるセレンは再び起こしても『ニ』で眠らされてしまうかもしれない。しかし、レベルは低いといえども味方の状態異常の解除やバフに長けた【天啓の導き・神】と妨害やデバフに長けた【悪魔の勾引かし・神】を一緒に持っているため、セレンを起こすことさえできれば味方全員を復活させることができるし、CCそのものを無効にする魔法や手段も何か知っているかもしれない。


・ルナティ……回復魔法を持ったパーティ唯一のヒーラーだ。彼女の援護の有無でパーティ全体の耐久性が大きく変わってくる。しかし、今回のようにCCに弱いようでは復帰させたところでHPSを稼げるかどうかは怪しく、『ニ』への直接的な対策にはならない。


・メイア……闇属性の魔法力はトップ。【アブゾープション】という唯一無二のスキルを持つ。だが、どちらのスキルもCCの前では無力であり、起こしたところで再び『ニ』に囚われてしまっては、折角のスキルも意味がない。


・ハロイラ……強力なヘイト性能を持ったタンク。【妖魔の目配せ】で攻撃を集中させることは可能だが、『ニ』のような範囲攻撃に対しては無力。



【天啓の導き・神】【悪魔の勾引かし・神】【女神の天啓・神】【爆炎の才・真】【アブゾープション】【漆黒の才・神】【妖魔の目配せ・神】【朽ち褪せない騎士道・神】。


 この中に答えがある。

 この中に絶対答えがある。


 全員のスキルの名前と特徴を一つ一つ思い出して頭の中に列挙していく。

 そして、


(これしかない)


 雲の隙間から光明が漏れるように絵理華は一つの答えに辿り着く。


(これで行ってみるしかない)

「なろう」にていいねが一件増えました!いいねしてくださった方ありがとうございます!!



 11月12日に「スプラトゥーン3」のフェスと「デュエルマスターズ」のデッキの発売と「ポケモンGO」のコミュニティデイが被りましたね。どれも月一回か数か月に一回なのに、どうしてこの日に被ってしまうのか。この土日は忙しくなりそうです。


 ちなみにフェスはみず派ですよ!藤井の予想ではクワッスはダチョウっぽい見た目になって、みず・かくとうタイプになるからな!みず・ひこうになんて絶対ならないんだからなっ!!


 ……ならないよね?クワッス飛ぶな!!



 ではまた!これからもよろしくお願いします!!

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