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第78話:七つの鎧を破壊せよ

 マンティコアと戦った後にメイアが教えてくれた。【アブゾープション】は相手と体液を交換することで、その相手から魔力を吸収できるようになると。

 最も簡単な方法だと吸血、その次がキス、その次がお互いの陰部を出し入れすること。『鉄っぽい味』が苦手なメイアには吸血は無理だ。


(これもみんなを守るため)


 絵理華(えりか)は同性愛者でもなければ恋仲になった異性もいない。25年間の人生で誰かとキスをするのなど初めてだ。


(これもみんなのため)


 顔の上に掛かった金色の髪を(はら)いながら吸血鬼の顔を覗き込む。

 まるで人形にように精緻な作りをした顔と雪のように白くて柔らかそうな肌。


(これもみんなのためっ!!)


 別に初めてがメイアなのが嫌なわけではない。

「ファーストキスは愛した者とする」という意外にも乙女チックな考えを持っていたために抵抗があったのだ。そんな矜持など捨ててしまえば怖いものなど何もない。むしろ、異性とはいえここまでの美少女とキスできるのなど何回生まれ変わっても不可能かもしれない。


 腹は括った。

 覚悟は決めた。


 指で顎を軽く持ち上げて頭の向きを変えると、小さくて柔らかい唇に自身の唇を重ねる。


「んっ……」


 キスの仕方など分からない。

 舌の絡め方など分からない。

 唾液の交換の仕方など分からない。

 

 一心不乱に見様見真似で舌を口の中へと差し込み、相手の舌へと密着させる。


「んんっ」


 そもそもキスとは何をすればいいのだ?

 何のためにキスをするのか?

 キスとは何なのか?


 忙しなく舌を動かす中、頭だけは異様な速度で回転し、いよいよ何が何だか分からなくなったところで、


「……下手なキスね。これだから男との経験がない女は嫌なのよ」


 外からの刺激で【アブゾープション】を強制的に起動させられた金髪の吸血鬼が目覚める。

 まるで、王子様からの愛のキスで永遠の眠りから目覚めるお姫様のように。


「状況を手短(てみじか)かに説明して頂戴。私が眠っている間に何があったの?」

「時間を稼ぐためにタイガがフンババの気を引いてくれている。起きているのは私とタイガとメイアだけだよ」

「なるほど。駄兎(だうさぎ)のカバンを勝手に探せば眠気覚まし用のアイテムとかはあるだろうけど、他の仲間を起こしたところで、またあの催眠魔法を使われたら厄介ね。……ところで、セレンは『勇み足の練習曲(エチュード)』を使えるかしら?【天啓の導き】にある一定時間CCを無効にする魔法なのだけれど?」

「あるとは思うけど、フンババが使う『ニ』は魔法でもスキルでもないみたいだから、その魔法を使ったところで防げるとは限らないよ」

「『第三の力』か。厄介ね」


 後で知ったことなのだが、この世界では神獣やモンスターが最初から持つ特殊な力(バジリスクやコカトリスの石化能力など)やカミサマパワーなどの魔法やスキルで説明することができない超常的な力のことを『第三の力』と呼んでいるらしい。


「なら、あれこれ考えるよりも短期決戦に持ち込んだ方が早いかもしれないわね。このパーティ最強の物理アタッカーとなった(わたくし)が再び眠らされるよりも先にフンババを仕留めるのよ」

「メイアって意外にも短絡的だよね」

「スマートな思考と言って頂戴。速攻で攻め滅ぼすという戦術だってあるのよ?」


 文献によって様々だが、英雄ギルガメシュとエンキドゥが戦った時のフンババが所持していた『ニ』は一枚で、その時でさえ太陽神シャマシュが八つの風を吹かせて足止めをしたことで何とか勝てたのだという。(この時、何故他の『ニ』を所持していなかったのかは不明)


 では、その『ニ』が七枚完璧に揃った状態の今、その強さは如何なものか。


「ぐううっ!!」


 その小さな身体では衝撃を受け止めきれずに跳ね飛ばされ、タイガが背中から大樹へと打ち付けられるのを確認し、


「貴女は魔法で気を引くことだけに専念して頂戴。私がその『ニ』とやらを破壊するわ」


 刺突剣を構えてフンババの懐へと駆ける。


『ふんっ。あの時はギルガメシュどもに負けてしまったが、それは『ニ』がなかったからのこと。七枚の光輝が揃った今、わたしに勝てるものなどおらぬわ!!』


 身体全体が眩しい光に覆われ始めた。このままだと再び『ニ』を使われて収集が付かなくなるので、


「雄々しき敵愾心(てきがいしん)を具現化せよ!グラウンドホルン!」


 見様見真似で『グラウンドホルン』を詠唱。巨人の脚を貫かんと鋭い岩塊を発生させる。


『くっ!貴様も土属性の魔法が使えるのか?!これは迂闊だったな』


 咄嗟に避けて絵理華の方へと獅子の視線を向ける。


『先ほどみたいに魔法を真似されると面倒だな。『ニ』が聞かぬことだし、まずは貴様から――』

「やあっ!!」


 方向を変えたことで隙だらけとなった脇腹に強力な突きを一撃。

 直後、パキン、という音を鳴らしながら透明な破片が砕け散り、陽光を反射させて光りながら宙を舞う。


『何っ?!わたしの『ニ』を砕いただとっ?!』


 鋭い爪によるカウンターを避けるべく後ろへと引いたメイアを驚き半分怒り半分の色をした瞳で見つめる。


 文献によって違うため諸説あるが、ギルガメシュとエンキドゥが光輝が一つしかないフンババと戦うパターンと、七つの光輝を装備したフンババを誅殺するパターンがある。

 七つの光輝を装備したフンババを誅殺したパターンの伝承によると、ギルガメシュは七つの光輝をフンババが脱いでこちらに渡すのを条件に、ギルガメシュの妹・靴・枝の束・半貴石(明確な区分はないが、宝石の中でもそれほど珍しくないもの)などを渡すことを約束した。

『ニ』の形などについては言及されているものは確認できないが、脱いで渡すことができるものであるとするならば、鎧やアーマー・殻やバリアのようなものだと考えるのが妥当であり、攻撃によって破壊できてもおかしくはない。


「まずは一つ。残りの六つの殻も破壊して丸裸にして差し上げますわ」

『小癪なっ!!』


『ニ』の力は光輝が一枚でも使用することができるため全て剥がすまでは気が抜けない。魔法での補助に徹するべくメイアとフンババの動きを注意深く観察する。


『森を守るためになるべく被害が出ない魔法を使っていたが、もう容赦はせん!!万物の姿形を歪曲(わいきょく)する灼熱の水溜まりを形成せよ!パドルレイブフィールド!』


 フンババが魔法を唱え終わった直後、フンババの真下にマグマでできた水溜まりが出現した。


『これならば迂闊に近づけまい!!踏み入った瞬間に足元のマグマを踏んで、飛沫で溶かしてくれよう!!』


 魔法に対抗するならば魔法だ。今の絵理華にできるのはそれしかない。


「雄々しき敵愾心を具現化せよ!グラウンドホルン!」


『グラウンドホルン』を再び唱えて岩塊を三つ生成。マグマの上に階段を作る。


「……やるじゃないの。貴女のここ最近の成長は著しいものよ」


 マグマのぐつぐつと煮える音のせいでメイアの言葉が聞き取れなかったが、最後に出現させた四つ目の岩塊によって肉迫。神業とも言える突きを連続でヒットさせたことにより、欠片が三つ分くらい割れた音がした。


『いつまでも同じ手を喰うと思うなああぁああ!!!』

「きゃあっ!!」


 足場が不安定だったのもあり逃げ場がなかったらしい。人間のそれよりも大きい(たなうら)に掴まれると空中へと攫われる。


『このまま握り潰してくれる!!下等生物が神より生まれたわたしに楯突いた分際でな!!』

「ぐ……、ううっ…………」


 苦しそうに呻くメイアを今すぐにでも助けたいが、こういう時にこそ冷静になるべきだ。


「雲の隙間から漏れる転舜(てんしゅん)の光を裁きの一撃へと変化させよ!サンセットアロー!」


 手を翳してフンババへと向けると光の弓矢を射出する。


『ぐああっ!!』


 狙いは手ではなくその巨体の胸。

 光輝を割って怯ませると昼型吸血鬼は解放される。


「私の感覚では確実に四枚は割っているから、貴女の魔法が割った分も合わせてあと二枚と言ったところかしら?」

「意外と簡単に割れるんだね……」

「……随分手軽に撃ってるけど、『サンセットアロー』だって貫かれたら十分致命傷になり得るような魔法なのよ?フンババを殺せるくらいの火力が出ているのであれば、物理でも魔法でも関係ないようね」

『貴様ら……』


 バチッ!

 バチバチッ!!


 空気を焦がす音が頭上から聞こえてくる。


『貴様らあああああああぁぁぁああああぁぁぁぁああああああああぁぁぁぁぁぁあああああああーーーーーーーーーっっっっっっっ!!!!!』


 両手を頭の上で構えたかと思うと、小さな電気の球体が生まれる。


「……『エレクトロキュート=ジュエル』。巨大な電気の塊を着弾させることによって広範囲を感電させる風属性の魔法ね。あいつを撃たれたら私たちは全員死ぬわ」

「どうしたらいいの?あと光輝は二枚あるんでしょ?!」

『その通りだ小娘』


 不気味な光に照らされて獅子の顔が歪んだ影を帯びる。


『『エレクトロキュート=ジュエル』は球体を生成するのに少し時間が掛かるが、わたしには光輝がまだ二枚ある!貴様らがわたしを二回殺すまでの攻撃を繰り出すのと『エレクトロキュート=ジュエル』が貴様ら全員を感電させるのはどちらが早いかな?!!』

「なろう」にていいねが一件、ブックマークが二件増えました!いいね&ブックマークしてくださった方ありがとうございます!!



 先日ヒメグマのコミュニティデイがありましたね。


 去年の二月に捕まえて大事に取っていたリトレーン100%個体のヒメグマがいたので、コミュニティデイが終了した後の22時15分頃にガチグマに進化させてみたのですが、おんがえしを忘れて10まんばりきになりました。SNSなどで確認してみると、同じようにリトレーン100%個体を進化させてしまって「おんがえしが消えた」という報告が多く上げられております。


 ここからは藤井の私見です。


 ガチグマは「レジェンズアルセウス」にて初めて登場したごく最近のポケモン(進化前のリングマは昔からいました)で、優秀なタイプと高いステータスから非常に注目されているポケモンです。

 ポケモンGO内ではCPも高く、ノーマルとじめんの二つのタイプを同時に持つポケモンの中では最も高い数値となっています。


 しかしタイプ一致技には恵まれず、ノーマルの一致技を覚えさせるのであればシャドウ・もしくはそのリトレーン後の個体しか持っていないやつあたり・おんがえしとなり、じめんの一致技を覚えさせたかったら、コミュニティ技の10まんばりきしかありません。


 つまり、スペシャル技二つをタイプ一致技で埋めたいのであれば、コミュニティデイではない満月の日までにシャドウ・もしくはリトレーンした高個体を用意し、二つ目の技枠をすごいわざマシンスペシャルで10まんばりきにする必要があります。


 さらにDPSで言えばスペシャル技はおんがえし・10まんばりきの二つとなるため、ガチグマにとって高いDPSを出すのであればどちらも必須の技となっております。


 藤井は今回の事件に関して問題点が四つあると思っています。


 一つは、ガチグマの恒常技にタイプ一致技が一つもないこと。

 例えばのしかかり・地震のような技があればおんがえし・10まんばりきの代替案として考えることもできますが、恒常技がほのおのパンチ(ほのお)、かみなりパンチ(でんき)、つばめがえし(ひこう)となっており、普通に進化させるだけではタイプ一致技を一つも習得しません。


 二つ目におんがえしがすごいわざマシンスペシャルで復元できないこと。

 おんがえしは3ゲージの一致技を持たない・かつタイプ一致が取れるポリゴン系のポケモンなどにとっては選択肢の一つとなる重要な技です。

 にもかかわらず一度削除してしまうと復元できないのはどうかと思っています。


 三つ目にガチグマの進化方法がややこしいこと。

 原作での進化方法を忠実に再現すべく、ポケモンGO内で初の試みとなる、「現実世界の満月のタイミングではないと進化できない」というシステムを組み込んだため、直近ではほぼコミュニティデイの開催期間中しか進化が不可能でした。(今回はゲーム内に特別な満月が出現し、進化可能なタイミングが14時~翌日早朝6時までだったため、コミュニティデイが終わった22時以降に進化させた人が多発。この機を逃すと12月8日になる)

 その影響なのか「ガチグマ 進化できない」という検索候補も出現する始末。


 四つ目に運営側か注意喚起やバグの報告がないこと。

 22時30分頃の段階(バグ発生から30分後)でSNSに攻略サイト「ゲームwith」によるバグの注意喚起が上げられたのみで、今朝も確認してみたらポケモンGO公式からはバグの報告と注意喚起が一切上がっていませんでした。


 藤井も今回に関してはバグの報告を行いましたが、「今回のバグを通じてサービス向上に努めて参ります」とのことで、個別対応・補填などは行われない様子。SNS上では「おんがえしガチグマを返して」の阿鼻叫喚で溢れ返っております。


 勿論適当な個体で実験しなかった藤井も悪いのですが、イベントが終わっているのを確認した後に進化させたにもかかわらず、10まんばりきを覚えておんがえしが消えていたのを見て、藤井は真っ青になりました。皆さん、おんがえしガチグマの被害者はここにもいますよ……。



 ではまた!これからもよろしくお願いします!! 

 ガチグマについて熱く書いていたら半日終わってました……。

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