第76話:『ウェルタナ森林地帯フワワ抹殺作戦』
レオニエ王国は武器を生成するのに必要な『装備の欠片』や珍しい鉱石が多く採れる恵まれた土地で、それ故に近隣諸国との対立や協調を拒否。永世中立を宣言して孤立することを誓った国だ。
ウェルタナ森林地帯はそのレオニエ王国の領土内にある地域の一つで、上質な材木を採取できる場所である。
「えーっと、「ウェルタナ森林地帯にて森を守護していたモンスター・フワワが最近、違法伐採者の別なく見境なしに人を襲うようになった。本モンスターを抹殺せよ」だって」
「森を守護しているモンスターで、違法伐採者を撃退していた?だったら、いいモンスターってことですか?」
樹々の間にできた小路を歩きながらセレンが疑問を述べる。
「あくまでわたしの憶測ですが、森を守護しているモンスターということは、人間が樹々を伐採しすぎて環境が壊れないように、行き過ぎた伐採行為に「待った」を掛けるモンスターってことですよね?なら、わざわざ殺す必要はないんじゃないですか?」
「言っただろう?無害な人間まで襲うようになったって」
人を喰い殺したことは一度もないのに『抹殺』の対象となったウェアタイガーが三叉槍を肩に担ぐ。
「本人に何か理由があるのか、それとも何かの意図で狂ってしまったのかは分かんないけど、今まで協調関係にあったモンスターが人間を襲うようになったんだったら殺してしまうしかない。人間の血の味を覚えてしまったからという理由で見世物に使われていた動物が殺されてしまうみたいにね」
「…………もしかして、赦すとか言っておきながら根に持ってます?」
「セレンを弄るネタとしては一生使わせてもらうつもりだよ?」
んべ、と軽く舌を出す。
「または人間たちにとって、そのフワワが不都合になったから処分したい、という筋も考えられますわね。殺されても仕方がない理由を捏ち上げて、それを理由に殺す。古くから王侯貴族の間では使われてきたことだわ」
「だとしたらヒドすぎます!フワワだって好きで悪さをしているわけではないでしょうし、木を伐採して裸山にしてしまったら、土砂崩れやなどで多くの死者が出てしまいますよ?!!」
高度経済成長によって多くの森林が消え、有毒ガスが蔓延し、水質汚濁が発生した。
その歴史をこの世界でも繰り返そうとしているのか。
「どんな理由にせよ【テイム】で服従させれば済む話なんだから、とにかく行ってみようよ」
絵理華を先頭にしてフワワが管理しているという区画まで歩いて移動する。
☆★☆★☆
目の前に転移魔方陣で移動させるとモンスターに急襲される可能性があって危険だから、という理由で少し離れた場所に移動させられるのだが、辺り一帯は高い樹々に囲まれた森。歩いているうちに東西南北の方向感覚が分からなくなっていく。
「……フワワの元にはまだ辿り着かないのかしら?一体どうなっているのよ?」
「それが『スペシファイ』に『フワワ』を入力しても察知できないから、地図を見て移動しているんだけど、景色に代わり映えがないから分かんないんだよう……」
イライラしてきたメイアに背中を押されるように先を進む。
「またそのパターンですの?だとしたら、フワワも変な装置で作り出された幻覚ということかしら?」
「自分で言うのも何でありますが、あれほどまでの装置を作れるのは父上とその同朋くらいのものであります。ロワッタ王国の科学技術が悪用されている可能性は低いかと」
「だとしたら、どうして『スペシファイ』に反応しないのかしら?」
前にも説明したが『スペシファイ』は天からによる俯瞰で対象を探し出すため、スマートフォンなどの電子機器と違って入り組んだ地形や森の中でも探査ができる。水中にいる魚や水底にある障害物を音波を使って探し出す、アクティブ式ソナーに近いだろうか。
「マンティコアの件を報告した直後にこれでありますか。全く、最近のギルド案内所は弛んでいるでありますね」
「だったらさ、ここはルナティちゃんがみんなのためにお歌を歌ってしんぜよう!!『ヴィルリアと十六柱の神々』でいいかな?」
「獣対策にはいいですが、モンスター相手にはどうかと思いますけどねえ」
森の中で熊や猪と遭遇しないためには、鈴などを付ける、歌を歌うなどして大きな音を出すといいと言われている。
熊が人を襲うのは、急に人間と出逢って興奮状態になってしまうからであり、音を鳴らして「私たちはここにいますよ」と動物たちにアピールすることで、野生動物たちを予め近寄らせないようにするためである。
「♪~主神ヴイルリアは全知全能の神様。どんな悪いことをしてもお見通しさ」
野生動物たちは人間を恐れるが、森に生息するマタンゴやドライアドなどのモンスターは人間を恐れない。むしろ、人間が来たことを察知して襲い掛かってくるかもしれない。
――なんて思っていたがどうもそういうわけでもないらしく、これといってモンスターが出てきそうな気配はない。出てきたところで、そこら辺にいる雑魚モンスターよりも怖い、LSランクの冒険者四人に返り討ちにされるだけなのだが。
「♪~クスペロールは愛と縁の女神様。愛すべき人と信頼すべき人を見えない糸で結んでくださる」
「……あんた、なかなかいい声しているわね。宿で歌を披露すれば、それだけで投げ銭が見込めるんじゃない?」
「てへ☆。メイっちもルナティちゃんファンクラブに入る?」
「褒めた私が間抜けでしたわ駄兎」
『……何者だ?』
前方から何者かが問い質すような声が聞こえる。
『この森はわたしの森だ。森林を破壊するというのであれば容赦はしない』
人語を話しているが、発声の仕方が何処か人間と違う。モンスターの類と見て間違いないだろう。
「そういう貴方は何者ですの?こそこそと隠れていないで姿を現したらどうかしら?」
『わたしの名前はフンババ。このウェルタナの森を守護するモノだ』
がさがさと前方にある樹々が揺れると、樹々の合間を縫って二足歩行のモンスターが姿を現した。
フンババはライオンの顔を持ち、頭には牡牛の角・そして、尻尾の形は蛇となっていた。身体そのものは半裸の人間の姿をしており、五本の指を持つ人間の手足の爪部分には猛禽類を彷彿とさせるような鋭い爪が伸びていた。
『お前たちも森を破壊しに来たのだろう?だったら容赦はせぬ!今すぐにでも死んでもらおうか!!』
「なろう」にていいね一件、感想を一件いただきました!いいね&感想を入れてくださった方ありがとうございます!!
先日散歩をしていた時の話なのですが、住宅街を歩いていたら「ぐおおお……」という人のいびきのような音が聞こえてきました。
その家の入口にはバイクが置かれていたので、「バイク部品の修理でもしているのかなー」と思いながら近くを歩いて家の方を見たら、建物の入り口を塞ぐようにして煉瓦敷きの玄関の前でおっさんが仰向けに倒れて寝ていました。どうやらいびきのような音は本当に人間のいびきだったようです。今日も日本は平和ですね!
ちなみに天気は雲一つない快晴。テレビからはJアラートが鳴り響き、日本の何処かの上空にミサイルが飛来した日でした。
ではまた!これからもよろしくお願いします!!




