第71話:マンティコアの正体
「何か心当たりがあるのね?いいわ。私にできることであるなら協力しようじゃないの」
「忝いであります」
全員を後ろへと引かせながら、メイアとハロイラが隣に並ぶ。
「で、何をすればいいのかしら?」
「前脚と前脚の間の部分がマンティコアの心臓に当たるはずなので、そこを刺突剣で貫いて欲しいであります」
「……死んでしまうわよ?そんなことをしたら」
後ろに引かせたため二人のやり取りは聞こえていないようだが、絵理華の方を一瞥する。
ドラマなどではナイフや包丁で心臓を一突き、なんていう表現はいくらでもあるが、人間や動物の肋骨はその心臓を覆うようにして配置されているため、実際には刃物を横向きにしないと肋骨と肋骨の間(人間で言うのであれば第三関節と第四関節の間。10cm以上差し込むと心臓に到達する)に刃が入らないと言われている。
しかし、メイアが持つ剣は刺突剣。
「刺す」ことに特化した攻撃であるため、肋骨と肋骨の間をすり抜けて容易に心臓へと突き進むことができるし、【アブゾープション】で肉体が強化された今ならば、刺した時に骨に当たったとしても砕きながら進むことができる。つまり、一度攻撃すると決めてしまえば手加減する余地などなく、そのまま殺してしまう。
「私の予想が正しければ、あのマンティコアは生き物ではないであります。そのまま攻撃してしまっても構わないであります」
「??どういうこと?私たちは闇属性の魔法で幻覚を見せられているとでも言うんですの?」
「zPwyUmHe!!」
「……説明は後であります。私が攻撃を受け止めるから、メイア殿には攻撃して欲しいであります」
「本当にいいのね?」
ハロイラが静かに頷いたのを確認。傘から刺突剣へと形を変えた愛剣ブラッドサックを構える。
「QreCvDikTO!!」
前脚から振り下ろされる鋭い爪による攻撃を盾で受け止めて隙を作ると、
「はあっ!!」
図体の下に潜り込んで刹那の刺突を一撃。
指示された通りに心臓へと突き刺す。
「なっ?!何やってるの?!!」
説明をせずに行ったのだ。絵理華が狼狽するのも当たり前である。
「ルナティ!早く回復魔法を掛けて!!」
「ええっ?!どうにかなるものなの?!!」
人間の場合、心臓を刺されてから死に至る時間は早くて三秒、遅くても五分未満。止血処理が不可能なため、ほぼ間違いなく死に至るとされており、回復魔法による治癒は不可能に近い。
下に潜り込んだメイアは致命傷から溢れ出た血液を頭からたっぷりと被り、鉄っぽい匂いが辺りに蔓延する。
――ようなことはなく、
「?!何が起こっているんですの?!!」
「やはりそうでありましたか……」
胸を貫かれて苦しそうに呻くマンティコアには横向きに線が入り、その姿が透明になる。
「EfvBklhJ……」
見たことがある。
絵理華は遥か昔、自分がいた世界で似たような光景を見たことがある。
「ホログラム映像……」
そう、あれだ。
電波の悪い部屋にあるブラウン管テレビで映像を観た時に時々入る映像の乱れ・ブロックノイズだ。
「さすがエリカ殿。エリカ殿の世界にも似たような装置があったのでありましょうか?」
その透明度は次第に増していき、マンティコアは消え入るような声を残すと空気に溶けるように消えていった。後には心臓の部分にあった立方体の機械のようなものが残り、軽い音を立てながら地面を転がる。
「これはドワーフたちが作った実戦用装置であります。様々なモンスターとの戦闘を想定して作られた、重量・衝撃・ダメージなどを伴う映像を映し出す装置でありますね」
メイアの刺突によって亀裂が入った機械を拾うと手中で弄ぶ。
「つまり、あのマンティコアは本当に生き物ではなかったということかしら?」
「凄い……っ!空中に映像を映し出す機械は私の世界にもあったけど、痛みや質量を伴うものはなかったよ!!」
絵理華のいた世界にも3Dテレビや匂いを再現した映像などの開発・実験は進んでいたが、それも全てVRゴーグルや付属の装置を通して再現したものであり、ここまでの臨場感を再現したものはなかった。もしかしたら、この世界のドワーフたちの技術は中世末期(1,400年代)から700年以上進んだ技術を自由に使い熟していたのかもしれない。
「亜人種や獣人種・そして人間は結構単純な脳の作りをしているでありますからね。脳による思い込みを上手く利用した装置であります」
ブアメードの血という人体実験がある。
19世紀にオランダで行われたとされる|(文献による表記のずれ、実験内容が曖昧であることから実際には行われていないという説が有力)実験で、死刑囚になるべく苦痛を与えずに殺すにはどうしたらいいか、と考えた末に生み出されたものだ。
目隠しをした状態のブアメードの手首に刃物を宛てて手首を切ったように偽造し、「血が出ている」と錯覚させるために一定間隔で水滴が受け皿へと落ちる音を聞かせ、耳元で「出血量が何%に達した」、「この出血量ではあと何分で死ぬ」という会話を医師や死刑執行人に行わせた。
結果、血を一滴も流していないにもかかわらず、出血性のショック死によってブアメードが死んでしまったというものである。
ネガティブなイメージを持たせると本当にそのようになってしまう状況・ノーシーボ効果(プラシーボ効果の逆である。ポジティブな思い込みによってプラスの結果が出ることをプラシーボ効果、ネガティブな思い込みによってマイナスの結果が出ることをノーシーボ効果という)を説明するのに用いられる用例だ。
「爪で引っ掻かれると痛い、気味の悪い見た目をしたモンスターは強い、あれだけの大きさをしていたら重い、あの毒針には毒がある……。どれもこれも私たちの思い込みによるネガティブなイメージで、「ダメージを受けていた」と錯覚したものによる影響であります」
「実際に攻撃を受け止めた私だから言えることだけど、攻撃には相当の重量がありましてよ?それを『思い込み』で済ませるのには聊か無理があるのではなくって?」
「その当たりの詳しい仕組みは私にも分からないであります。何せ、この街を離れて時間が経つ故」
「ちょっと貸してくださいな」
黒くて四角い掌サイズの箱を受け取ると、手の上で転がす。
「……こんな物体がマンティコアになるというのでありますの?ドワーフたちはどれだけ高度な技術を身に着けているというの?」
「逆に、これほどの高度な文明を持っていたからこそ魔王軍に狙われたであります」
「あら?何やら突起のようなものがあるわね?一体何かしら?」
指で箱を抓むとスイッチのようなものを発見。メイアが指で押してみると、
『やあやあ驚いたかね?』
「きゃああ!!何ですの?!!」
淡く光った立方体から空中に映像が映し出され、驚いたメイアが箱を地面に転がしながら尻もちをつく。
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最近アニメ「けいおん!」(一期)を観ているのですが、2009年のアニメというだけあって、連絡手段はガラケーを使ったメール・写真はカメラで撮っていて、撮った写真を印画紙に焼いていたりするんですよね。
そして、そこから二年後の「シュタインズゲート」になると、ガラケーのカメラを使って「写メ」や動画を撮るようになります。こうやって昔のアニメを観て時代の変遷を追うのって少し楽しいですね。
藤井が高校生の時はガラケーで、同じ部活の先輩や友達とはメールで話したりしていましたし、修学旅行なんかは母親からデジタルカメラを借りてそれで写真を撮ってたりしました。2009年~2011年くらいのアニメを観ると自分の高校時代と一致している部分が多いので、少し懐かしい気分になったりします。
ちなみに藤井が高校生くらいの時のスマートフォンの普及率というと、ガラケーとは大体半々くらいで、まだまだガラケーを持っている人の方が多いくらいでした。
なのに、大学に入った時にはほとんどの人がスマートフォンを持っていました。藤井も大学一年生の冬に初めてスマホを手にし、約四年間使っていたガラケーとお別れしました。時代の流れとは早いものですね!!
ではまた!これからもよろしくお願いします!!




