第70話:【アブゾープション】
【アブゾープション】とは吸血鬼たちの間に極めて稀に発現するスキルで、対象の体液を直接吸うことで魔力を吸収するスキルなのだという。
メイアが牛乳などの乳製品から血液の成分を吸収しているように、体液であればどんなものからでも魔力を吸収することが可能で、通例、吸血鬼たちの間にしか発生しないスキルであるため、魔力を吸収したい対象から血液を吸収することで魔力を得る。
しかし、ここにいるのはメイア=ローゼンガウラ。
昼型吸血鬼の家系ではナンバー2に当たり、首領であるイグロータスト家を支えてきた家柄のお嬢様であるにもかかわらず、血液の『鉄っぽい味』が苦手な吸血鬼である。
「貴女の魔力を吸収するためには、貴女の体液を飲まなければならないのよ。最も口に含みやすい体液と言ったら涎が一番でしょ?」
「だっ!だったら、尿とか汗という手もありますよ?!飲みますかわたしのおしっこ?!!」
「変なこと言わないでよっ?!私が体液を摂取するのと同時に、相手の体内にも体液を流し込まないといけないのよ!!一番手っ取り早いのが吸血かキスでしょうが!!」
「だったら血を吸ってくださいよ!ほら、あなた吸血鬼なんでしょ?!!」
「言ったでしょ?!『鉄っぽい味』が苦手って!!」
「面倒な女ですね!!」
「どっちでもいいから早くしてほしいでありますっ!【朽ち褪せない騎士道】がそろそろCTに入るでありますよ!!?」
このままでは本当に危ない。
背に腹は代えられないので、
「ファーストキスは理想の男性が良かったです……」
顔を紅潮させながら顔を逸らす金髪の女神の頬を両手で優しく挟み、顔を近づける。
そして、
「んっ…………」
柔らかい唇と唇が重なると同時に、どちらともなく艶めかしい吐息が漏れ、口角から一筋の涎が滴る。
「……これで大丈夫よ。……うん。【アブゾープション】の気を感じる。確かに魔力を頂いたわ」
顔を離して左手を開閉させ、湧き上がる力を感じ取る。
「【朽ち褪せない騎士道】が切れるであります!3・2・1――」
「後は任せなさい!」
刺突剣を構えて疾駆。
振り回された尻尾を剣で受け止める。
「はあっ!!」
巨大な獣から放たれる一撃を華奢な身体のメイアが受け止めたら吹き飛んでしまいそうだが、受け止めた尻尾を弾き返し、その後に続けて放たれる前脚の爪による攻撃も体重を乗せて受け止める。
「WqxmaSe!!」
生半可な攻撃では倒せないと判断したのか、前脚を高く挙げて全体重を乗せるべく、上から覆い被さるように襲撃するが、
「甘くってよ!!」
これも刺突剣を一文字に構えて受け止めて持ち堪えている。
「凄いであります……!あれほどの巨躯を相手にしても潰されないとはっ!!」
「あっ!!攻撃が来るよメイっち!!」
「その呼び方は止めなさいと言ったでしょ駄兎!!」
体重を乗せてもダメならば毒針を使った搦め手だ。
逆立てた尻尾からシャワーのように細かい毒針が射出させる。
が、
「ふんっ。誰に楯突いたのかを思い知ることね!」
ダンスをするかのような巧みな足捌きで回避し、避けきれないものは【アブゾープション】によって強化された高速の突きによって撃ち落とされる。
「さあて、万策尽きたところかしら?」
メイアが一瞬だけこちらに振り向いて目配せしてくる。「魔法で攻撃するなら今だ」という合図か。
「数多もの生命を終わらせた死の風よ。この者たちに終焉を与えよ!スノウストーム!」
広範囲に吹雪を発生させる水属性の魔法を使って攻撃する。
「fPlaK!!」
しかし、マンティコアとてそのまま一撃を食らう間抜けではない。得意の脚力で跳躍して吹雪を避ける。
「何度やっても躱されてしまいます!このままでは鼬ごっこですよ?!」
「いや、これでいいんだよ」
狙いはマンティコア――ではなく、マンティコアのいた地面。
『スノウストーム』により地上にある水分が凍り付き、地面には薄氷が張る。
「tBxza!!」
相手はアジア圏に住む動物の特徴を持った生物。白熊のように氷の上で生活する術を身に着けていない。つるつると滑る床の上に着氷した瞬間体制を崩し、倒れた姿のまま地面を滑る。
「ちょっと冷たいけど我慢してね!!その歩みを止めさせ、冷たき像とせよ!フィックスアイス!」
何も高火力の合成魔法ばかりを使う必要はないのだ。
水属性の魔法を使って地面から氷の塊を出現させ、投げ出された後ろ脚や尻尾を縫い留めるように固定する。
「 LxavsDeouT!!RaSwobeNi!!」
地面はつるつると滑る床で、後ろ脚と尻尾は固定。
しかも、尻尾は先端の向きが変わらないように固定している。
凍えた地面の上で動けなくなったマンティコアへと慎重に近づく。
「どうだろこれ?【テイム】できるかなあ?」
「生け捕りって感じですよ?もう少し弱らせた方がいいかと」
「身動きが取れない動物を全員で攻撃するのって虐待しているみたいで嫌だなあ。何かいい方法ない?」
「セレセレの毒魔法で毒にして、いい感じのところでルナティちゃんが解毒魔法を掛けるとか?」
「もっと残酷な気がするよ?!」
仕方がないので少し弱めの電撃魔法(雷や電気は風属性にカテゴライズされる)を一発叩き込むことにした。
「ちょっとだけ痛いけど我慢してね!天から槌を振り降ろせ!サンダー!」
空から雷を一筋落としてマンティコアに電撃を流すと、結構なダメージが入ったのか少し大人しくなった。
「だいぶ弱ってきましたね!これで【テイム】できるはずです」
何だか少し痛々しいが【テイム】するためにはこうするしかないので仕方がない。後でルナティには回復魔法を多く掛けてもらうとしよう。
「【テイム】!!」
四肢が固定されたマンティコアへと手を添えてスキルを唱える。
服従したかどうかを確認したいが、万が一【テイム】が成功してないとなると『フィックスアイス』を解除するのも危険なので、
「歯を三回カチカチ鳴らして!」
拘束されている状態でも達成できる命令を出す。
「cSDopwErpKv!!」
「歯を三回カチカチ鳴らして!」
「VbherLaQzXS!!」
「歯を三回カチカチ鳴らして!」
「lGnmA!!」
「…………」
おかしい。
これだけ命令をしているにもかかわらず、まるで命令に従う気配を見せない。
「【テイム】に失敗したんじゃないですか?もう一度やってみるとか?」
「でも、今までこんなことなかったじゃん?何でだろ?」
もう一度【テイム】を使って命令してみるが結果は同じだった。暴れ回るだけで絵理華の命令に従う気配はない。
「弱らせ方が足りなかったのではないかしら?もう一発魔法を使ってみるとか?」
「相当弱っているように見えるから、さすがにもう一発使うのは危ないんじゃないの?」
「だったら、実はマンティコアがアンデッドだとか?アンデッドは【テイム】できないんだよね?」
「あんなに狂暴で勇ましい姿をしているんですよ?!さすがにアンデッドなわけないでしょ?!」
「tgRpeloGdsaFzaaaaaaaa!!」
パキリ、という軽い音がした。
見ると、枷から逃れたマンティコアが身を翻し、怒りの籠った人間の顔でこちらを見ていた。
「ひえええ!!こっちに向かってくるっぽいよ?!どうすんのエリポン?!!」
「待つであります」
盾と剣を構えながら小さな背中を見せて前に立つ。
「マンティコアの正体が分かったであります。なので、メイア殿には少し協力して欲しいであります」
「なろう」にてブックマークが三件増えました!ブックマークしてくださった方ありがとうございます!!これで遂に累計100ポイントピッタリですよ!!
皆さんお待ちかね(待っていなかったらゴメンなさい)、コロコロコミックについてのお話を!
それでは折角なので藤井が好きな「太陽少年ジャンゴ」や「マスカレード」・「ミラクルボール」・「コロッケ!」・「クラッシュビーダマン」辺りについての濃厚なトークを繰り広げる!!
……と、皆さんの頭の上に「?」が浮かぶだけなので「ケシカスくん」の話を少し。
「ケシカスくん」って今年で連載18年になるんですが、我が家にある2004年4月号に、読み切りだった頃の「ケシカスくん」・2004年6月号に連載決定を記念した第1話目の話が掲載された号が残っています。
かつては読み切りの漫画だったのに、今では「月刊コロコロコミック」内の連載年数第2位(1位は「スーパーマリオくん」の32年。「でんぢゃらすじーさん」は二回ほどタイトル変更しているためノーカウント)になるなんて凄いですよね!
ではまた!これからもよろしくお願いします!!




