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第68話:超科学都市ドンガーラ

「全く……。勇者様御一行と知り合いというのでしたら、もっと早く言って欲しかったですわ」

「ごめんごめん。内緒にしておいた方が二人が驚くかなと思って」

「驚きすぎて口から心臓が飛び出るかと思ったであります」


 場所はロマリアのギルド案内所。

 次のSSランクの依頼(クエスト)をクリアすべく掲示板を眺める。


「驚かすというのにも限度があるわよ。こんなことでしたら、温泉で身体をもっと綺麗にしておくべきでしたわ」

「背が低いので依頼(クエスト)を探すのにも難儀するでありますね……。ルナティ殿、何かいい依頼(クエスト)はあったでありますか?」

「『ソーリア平原人参畑奪還作戦』なんてものは見つけたけど?レオニエ王国の田園地帯の一つ、ソーリア平原にある人参畑をモンスターから奪い返す依頼(クエスト)だって!どうよ!?」

「Aランクだねそれ……。もしかして単騎(ソロ)でやっていた時の癖が抜けきってなかったり?」

「てへ☆。そうかも」


 可愛らしく舌を出す兎を放っておいてSSランクの依頼(クエスト)を探す。


「難易度SSランク依頼(クエスト)『ドンガーラ市マンティコア抹殺作戦』……。あら、ドンガーラって確か」

「ロワッタ王国の都市の一つであります。首都のラグノリスよりは発展していませんが、工業の盛ん()()()都市であります」

「随分詳しいんですねハロイラさん」

「それはそうであります」


 爪先立ちで背筋を伸ばして依頼書を掴んで引っ剥がすと、


「ドンガーラは私が生まれた場所でありますからね」


 寂しそうな表情を浮かべながら呟いた。



☆★☆★☆



「ロワッタ王国は大陸にある王国の中でも珍しく、ドワーフが統治する王国でありました。大陸に散らばっていたドワーフたちが集まり、肩を寄せ合いながら暮らしていた王国であります」


 ギルド案内所が用意した転移用魔方陣(ポータル)を使って移動。ロワッタ王国の都市の一つ、ドンガーラを歩く。


「国を治めていた王も勿論ドワーフ。他の王国からは、亜人種が国を治めるなどと言語道断という意見もありましたが、ロワッタ王の温和で大らかな性格が周辺の国々から評価され、国としての独立を認められたのであります」


 周囲には背の高い建物がいくつも並ぶが、そのほぼ全てが元の形を失い、基礎が剥き出しになっていた。


「エリカ殿。マンティコアの反応はどの辺りでありますか?」

「それが、『スペシファイ』で検索してるけど全く反応がないんだよ。圏外なのかな?」


『スペシファイ』とはロマリアの街でタイガを探す時に用いた光属性の魔法で、設定した対象の位置をマップ上に光点で表示することができる。『マンティコア』を指定してもヒットしないところを見ると、絵理華(えりか)が捕捉できる範囲にはいないということだろうか。


「絵理華さんのレベルならかなり広い範囲を探せる上に、『スペシファイ』は神目線による空からの俯瞰で探していますから、電波のように建物に反射して上手くアクセスできない、なんてこともないはずなんですけどねえ」

「特殊な装置を多く取り扱う街でもありますからね。何らかの機械の影響や誤作動で『スペシファイ』が妨害されているかもしれないであります。ならば商業区画に向かってみましょうか。……これなら使えそうであります」


 両開きの扉がある小部屋の中に入ると、他のメンバーに入るように促して何やらボタンのようなものを操作して扉を閉める。

 直後、身体を襲う浮遊感。


「わっ!何これ?!誰かが『フライ』でも使ったの?!」


 他の者たちは知らないようだが、密室となった小部屋が下降する時に身体に感じるこの感覚を絵理華だけは知っている。


「…………エレベータ」

「さすがエリカ殿。エリカ殿が遥かに技術が発達した世界から来たというのは本当でありましたね」


 全員の視線が絵理華へと集中する。


「エレベータって、あのエレベータですの?このエレベータには奴隷や人力が使われている気配がしないわよ?」

「魔法で動いている感じでもないよね?これだけの重量を『フライ』で動かそうと思ったら、それこそエリポンくらいの高いランクとスキルじゃないと無理だし」


 今日の電動エレベータが生まれたのは近世に入ってからだが、人や物体を載せて昇降させる『昇降板』という考え方は紀元前3世紀には存在した。

 紀元元年の皇帝ネロの宮殿には人力のエレベータが使用され、同じ時代に誕生したコロッセオには、戦士や動物を登場させるための舞台装置として使用されていた。


「このエレベータは電気を用いた電動のエレベータであります。決して『フライ』を使ったものでも、ルーンにエンチャントされた魔法を使ったものでもないでありますよ?」


 近世に入ってから人間たちが生み出した電動エレベータを当たり前のように使っていることからすると、他の諸国とは比べ物にならないほどの高度な技術を持った王国のようだが、エレベータの中から俯瞰で見える街並みは荒廃し、破壊され尽くされていた。背の高い建物は大通りに倒れて道を塞ぎ、人の気配は全く見受けられない。

 何故なのか話をしようとしたところで、ハロイラの話が本筋へと戻る。


「ロワッタ王国は領土こそは小さい王国でありましたが、ドワーフが集まった国というのもあって、技術においては大陸一――いえ、世界一発達した国でありました。()()()()()()()()()()()()()()()()


 チン、という何処か不釣り合いな音を鳴らしながら止まると、両開きの扉がゆっくりと開かれて、絵理華たちが載った時とは別の景色が広がる。

 ドンガーラは崖の上下で居住区と商業区が分かれているようで、絵理華たちがエレベータで下降して到着したのは商業区だ。傾いた看板や風化した店の具合から特定できる店はいくつかあったが、ほとんどの建物は形を失って瓦礫と化し、電子部品やガラスのようなものが散乱する。

 異世界に住む住民たちからしたら全く別の次元の地域に見えるのだろうが、予備知識のある絵理華にはSFの世界などに登場する近未来都市が、誰も住まなくなって朽ち果てたかのように見えた。


「「超常的な技術力を持つドワーフと圧倒的な知識量を誇る人間が手を組んだら、想像もできないような恐ろしい武器を作り出すに違いない」。そう判断した魔王の命令によって魔王軍が押し寄せ、なす術がないままに壊滅してしまったのであります」

「その結果、生き残ったドワーフと人間が手を組んで作った聖剣リライトに貫かれて死んだ、と。何だか皮肉な幕切れね」

「「魔王軍のモンスターたちのために武器を生成するのに使える」ということで、優秀な一部のドワーフたちは捕まったでありますが、逃げ遅れたその他の同朋たちは全員殺されたであります。あろうことか、ドワーフたちが作った死者をアンデッドにさせないために粉々に分解する装置の中に投げ込まれ、跡形もなくこの世から消えてしまったのであります」

「うげえ。ルナティちゃん悲しいお話もニガテ……。ほら、もっと明るい話をしようぜい!」


 必死に笑顔を作って場の空気を和ませようとするが、とてもではないが笑顔一つ作れそうな雰囲気ではない。


「それにしても不思議な縁ね。マンティコアってアラキラが可愛がっていたモンスターの一体で、ロワッタ王国を滅ぼした時にも連れていたモンスターよね?『煌々(こうこう)たる裁きの剣』に撃退されたと聞いていたけど、実は生きていたのか、それとも別の個体が入り込んだってことかしら?」

「ちょっと待ってください。それは本当ですか?」


 列の後方にいるセレンが驚いたような表情を浮かべる。


「もし仮にレオルスさんたちに倒されたということは、マンティコアは生き返ったってことですか?となると、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「マンティコアが複数体存在するのならば確実だけど、そこは私にも分からないわ。ただ、偶然にしては出来過ぎているのは確かよ」


 フェンリルは種族名ではなく個体名であるため一匹しか存在しないが、マンティコアの場合は種族名であり、神話などに登場する神獣や幻獣をモチーフにしているわけではないため、理論上は複数体存在しても不思議ではない。

 ヨーロッパでは長らくその存在が信じられてはいたものの扱いはどちらかと言えばUMAに近く、分かりやすく言うのであればツチノコやビッグフット・ネッシーなどと同等の扱いである。複数体いるとも言えるし、いないとも言える何とも絶妙な立場にあるモンスターなのだ。


「じゃあもしもの話だけど、マンティコアを復活させた人たちがいて、その人たちが魔王の手下かもしれないってこと?」

「『リヴァイヴァル』は土属性・光属性・闇属性の三属性の魔法を寸分の狂いもなく均等に使うことで発動させる魔法ですから、絵理華さんの『マジックマスター』のような規格外のスキルを持っていない限りは、複数人いると考えた方がいいでしょう」

「ま、魔王軍の手下?!それって一体――」

「sdKLovCaqEdc――――」


 兎型獣人が何かを言おうとした時、管楽器のような妖艶な美しさを孕む音色が崩落した都市に寂しく反射する。

 人間には――いや、女神にも獣人にも人虎にも吸血鬼にもドワーフにも――内容を理解できない声のはずなのに、「人間の声なのではないか」という錯覚が何故か生まれてしまい、無意識のうちに近づいてしまいたくなる。


 それこそがモンスターの仕掛けた罠なのだが。


「今はそんなことを議論している場合ではないようであります!戦闘準備!!」


 小さな身体から発せられた声に背筋を正し、前方から聞こえてくる重量のある足音に全員が持っている武器を構えた。


「weJzmoxGIkebRu!!」


 身体は燃えるように赤いのに対して綺麗な青い瞳。

 猛々しい獅子の見た目。

 普通のライオンには絶対に付いていないはずなのに違和感なくフィットする(さそり)の尻尾。

 そして、「吸収されたのではないか」と思わず違和感を抱いてしまうほどにミスマッチした、獅子の顔の部分に浮かび上がった人間の顔。


 絵理華がいた世界では紀元前4世紀から紀元後17世紀頃までの約2,000年の間、ヨーロッパで存在が信じられていたモンスターが目の前に躍り出る。

「なろう」にていいねが二件増えました!いいねしてくださった方ありがとうございます!!



 何故かは分かりませんが、つい最近無性に少女マンガが読みたくなって「ちゃお」を衝動買いするところでした。多分近くで売っていたら買っていたと思います。

 面白いですよね少女マンガ。妹が「ちゃお」を毎月買っていた時は結構読んでいましたが、最近はあまり読んでいません。


「ブラックアリス」や「人間回収車」などの、人間の欲や内面の恐ろしさを描いたようなホラー系の作品や、「ドリームゲーム」のようなデスゲーム系作品もあれば、異性との恋愛を描いた王道作品など、様々なジャンルがあるので自分に合った作品を探してみると面白いかもしれません。


 ちなみに藤井が好きな少女漫画家は池田多恵子とやぶうち優です。



 ではまた!これからもよろしくお願いします!!


 ……覚えていれば次の機会には「コロコロコミック」の話でもしようかと思います。多少途切れた期間がありますが、コロコロコミック購読歴20年以上なので、ちょっと思い出トークでも。

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