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第63話:『ログエスタ荒野ネメアの獅子抹殺作戦』

「これで『ライザーズ』は晴れてLS(レジェンドエス)ランクギルドになったことですし、LSランクの依頼(クエスト)だって受けられちゃいますよ?!さて、どれにしますか?」

「と、言っても、ギルド掲示板を見てもLSランクの依頼(クエスト)なんてないよ?」

「ふんっ。これだから何も知らない庶民は嫌なのよ」


 クルクルと螺旋を描いた金髪ドリルツインテを揺らす。


「LSランクの依頼(クエスト)というのは、自国が所持しているLSランクギルドに対して、国そのものが出す依頼(クエスト)を指すことがほとんどなのよ。だから、掲示板に貼り出されるようなことはないわ」


 例えばゴロド王国は勇者の生まれが同王国内のパゴ村であることから、『煌々たる裁きの剣』を国のお抱えギルドとして所持し、セトレイ王国はテリーナ(タイガを巡ってロマリアでパーティバトルをした際に、倒した盗賊たちを引っ立てて行った女騎士だ)と【マジックマスター】を持つ少女が所属するLSランクギルド・『紅蓮と白銀の騎士』を所持している。


 このように、余程の弱小国でない限りはLSランクのギルドを王の管理の元で所持し、領土内にある未踏のダンジョンの探索・いざとなった時の国の防衛・国境警備などをさせているのだ。

 そのため、ただでさえ稀少であるLSランクの冒険者を、各国が独占し、奪い合うような状況となっていることや、フリーで活躍するLSランクギルドがなかなかLSランクの依頼(クエスト)を受けられないことなど様々な問題があるのだが、ここでは割愛させていただこう。


「じゃあどうやって受けるの?それって、ルナティちゃんたちが国のお抱えギルドにならない限り受けられないってことだよね?」

「こうするのよ」


 カツカツと質の良さそうな靴を鳴らしながらギルド案内所の受付へと上品な所作で歩く。


「ねえ貴女。(わたくし)たちはLSランクの依頼(クエスト)を受けたいのだけれど、何かいい依頼(クエスト)はないかしら?」

「LSランクの依頼ですか?あの、大変申し訳ないのですが……」


 受付のお姉さんが少し言い(にく)そうに表情を歪める。


「エリカ様が所属する『ライザーズ』は設立されたばかりのギルドで実績がないので、SSランクの依頼(クエスト)を三つ以上成功させないと受けられないようになっているんです。決まりですのでSSランクの依頼(クエスト)を三つ以上達成してから再度お越しいただけますか?」

「断られたね」

「断られましたね」

「断られちゃったね」

「ダメだったね」

「残念でありますね」

「~~~っ!!!」


 ()れたトマトのように赤面した吸血鬼が頬を膨らませながらこちらを向く。


「抜けたメンバーの穴埋めを募集していたのではなくて、新しく建ったばかりのギルドだったんですの?!何故そのことを早く言わなかったのかしら!??」

「いや募集要項に書いたよ?!それは読み落としていたメイアが悪いんじゃないのかな?!!」

「私は受付でちゃんと説明を受けたでありますよ?」

「とっ、とにかく、まずはSSランクの依頼(クエスト)を受けますわよ!私たちの実力を見せて差し上げますわ!!」


 ぷすぷすと頭から蒸気を出しながらギルド掲示板まで歩くと、『ログエスタ荒野ネメアの獅子抹殺作戦』と書かれた依頼書を引っ()がして受付に叩きつける。



☆★☆★☆



 ネメアの獅子とはギリシャ神話に登場する人喰いライオンで、ペロポネソス島のネメアの谷に生息していたと言われている。

 その体毛は鋼のように硬くて剣や弓矢では全く傷を付けることができず、あの英雄ヘラクレスですらも三日三晩の格闘の末にようやく勝利することができたと言われるほどに、強靭な肉体と狂暴な精神を持つ。

 死後は神の手によって天へと昇って獅子座となり、『英雄=勇敢=獅子』というイメージを作った起源とされている。


「グルルルルル…………」


 その神話にも登場するような巨大な獅子と六人の女性が対峙する。

 作戦では『抹殺』(完全に殺すことで依頼達成(クエストクリア))となっているが、例によってギルド案内所の受付で確認済み。【テイム】を使って服従し、「これなら暴れ出す心配はないだろう」ということが証明できるのであれば殺す必要はないのだという。


「んじゃ、さっさとやっちゃいますか」


 要は、【テイム】の一言だけで一瞬で戦闘が終わるのだから、そんなに気張る必要はない。気軽に腕をぐるぐると回しながら片手を構えて標準を合わせると、


「【テイム】!!」


 こう一言叫ぶ。

 が、バキィン!!という音が鳴り、見えないバリアのようなものが一瞬だけ光る。


「何あれ……?あんなもの今までなかったよね?」

「言い忘れていました絵理華(えりか)さん」


 首筋から汗を流しながらセレンが答える。


「【テイム】で捕獲できるモンスターは、Sランク指定のある依頼(クエスト)までです。SSランク相当のモンスターとなると、例え【テイム】が【神】でも、弱らせないと【テイム】できないようになっているんです」

「そういうことは早く言ってよ!!……あれ?じゃあ、ネメアの獅子よりも明らかに強いはずのアジ=ダハーカやフェンリルが【テイム】できたのは何でなの?」

「そこはあれじゃないですかね?初心者記念ボーナス的な感じでゼロスト様が調整してたんじゃないですかね?ほら、ソシャゲを始めたばかりの時にあるじゃないですか?初心者限定経験値二倍的なやつ」

「ちょっと言っている意味が分からないんだけど?!!」


 この世界に降り立って数日の間にラグナロクを迎えたため、慣れていない絵理華のためにゼロストが遠隔で【テイム】の制限範囲を弄っていた可能性もなくはないわけか。


「変な話をしている場合じゃないでしょ?!相手は待ってくれないわよ!!」


 慌てて獅子へと目線を戻すと、鋭い鍵爪が付いた大きな前脚を振り上げていた。


 ギリシャ神話曰く、ネメアの獅子を倒したヘラクレスは、その獅子の爪を使って毛皮を引き裂いて鎧にしたという。

 逆に言えば、獅子の爪は剣や弓すらも通さない鋼鉄の毛皮すらも引き裂くことができる威力を持っていることになる。


 では、その爪による攻撃が生身の人間に当たったらどうなるか。


「任せるであります!!」


 こんな時、出番となるのがタンクだ。

 動きやすい鎧へと着替えたハロイラが滑り込むように盾と剣を構え、【妖魔の目配せ】と【朽ち()せない騎士道】を同時に起動する。


「これで一定時間の間、攻撃が私に集中し、私のHPが最大HPの10%以下にならないようになったであります!!ルナティ殿、回復をお願い致しまする!!」

「任せて頂戴ませっ!!ところで、スキルってどれくらいの時間持つの?」

ペンデュラム(振り子)が120回往復するくらいの時間(約5分)であります!エリカ殿たちには、それまでに倒して欲しいであります!!」

「えっと?」

「約5分ですよ絵理華さん」

「5分ね!分かった!!」


 そうこう言っている間にもネメアの獅子のヘイトを集めたハロイラは何度も攻撃を受け、それをルナティが付きっ切りで回復している。


「いくら【朽ち褪せない騎士道】があるとは言え、このままではハロイラさんがかわいそうです。早く倒しちゃいましょう!」

「要するに物理じゃなくて魔法で攻撃すればいいんだよね?だったら私の出番かな?」

「支援致しますわ」


 鷹揚とした態度で日傘を揺らす。


(わたくし)の持つ攻撃スキルは【漆黒の才・神】。闇属性の魔法を使うのでしたら援護できますわよ?」

「えっと、何を使えばいいんだろ?」

「……貴女、それでも本当にLSランクの魔法使い(マジシャン)ですの?【マジックマスター】の名が泣きますわよ。……それでは『イラプトサークル』にしましょうか」


 昼型吸血鬼が溜息を吐く。


(わたくし)が闇属性の魔法を担当しますから、貴女には火属性と土属性の同時詠唱をお願いしますわ。貴女が本当に【マジックマスター】を持っているならの話ですけど」


 どうやらメイアの持つ傘はパーツを外せばレイピアになるらしく、開いたままの傘を地面に突き刺して闇属性の準備魔法を詠唱する。


「ねえセレン。『イラプトサークル』ってどんな魔法?」

「使ってからのお楽しみ、っていうのはどうでしょう?ささ、絵理華さん。準備魔法を唱えてください!あんまりレディを待たせるとイライラさせてしまいますよ!」


 あれこれ迷っていても仕方がない。メイアに指示されるがままに火属性と土属性の準備魔法を唱える。


「終わったかしら?では、(わたくし)に続けて詠唱して頂戴。山の怒りをこの場に再現し、大地に変化を(もたら)せ!イラプトサークル!」


 何だか、初めてルナティと『メテオシャワー=ストライク』を使った時のことを思い出す。右手の周囲に火の精霊サラマンダー、左手の周囲に土の精霊ノームを浮遊させながら息を整えると、


「「山の怒りをこの場に再現し、大地に変化を齎せ!イラプトサークル!」」


 息を合わせて詠唱する。

 直後。


「ぐがるっ?!」


 鳴動と共に地面が割れ、ネメアの獅子の真下にある地面が隆起する。


「わわっ!!」


 地鳴りの正体は突如出現した火山によるものだった。円形のフィールドを中心として雨後の(たけのこ)のように火山が隆起し、爆音を轟かせながら火山口からマグマや火砕流、火山岩を一気に噴出させる。

「なろう」にてブックマークが2件、いいねが2件くらい増えました!ブックマーク&いいねしてくださった方ありがとうございます!!



 藤井が書く作品には、「ここの説明こんなに必要?!」と思うほどに詳しく説明している部分があります。(極端な例だとマヨネーズ回でしょうか)


 と、いうのも、折角読者様が貴重な時間を割いて藤井の作品を読んでくださっているのだから、読者の皆様には本稿を読んだことで「勉強になった」と満足していただけるような作品にしたい、という思いでいろいろなものを調べて丁寧に説明を行っております。


 小さな親切大きなお世話、なら申し訳ありません。


 昨今インターネット掲示板などの書き込みを観ていると、「「なろう」は内容がスカスカ」とか「似たようなものばかりで内容が同じだから、簡単に楽しんで乗り捨てられる即席めんみたいな存在」というような心無い意見を度々見掛けることがありまして、そのような悪いイメージを少しでも払拭できるような作品を目指したい、というのも藤井の根底にあったりします。


 本稿を通して少しでもイメージを変えていきたいのですが、それがなかなか上手くいかないのも現実。コンテストとかでは微塵も掠らないので、わたし自身の知名度も全然上がりませんしね。



 ではまた!これからもよろしくお願いします!!

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